あの日鍵をかけなかった理由
りりり
私のこと
小さい頃から厳しい両親のもとで育ってきた。
友達と遊ぶよりも勉強をさせられた。
良い学校にはいれば、良い友達に出会える。
良い会社にはいれれば、良い人と結婚できる。
そんな両親の言葉に抗う勇気もない私は同世代の子達が青春を送る中必死で勉強をしていた。
両親の望む大学へ行き、両親が満足する会社へ就職することも出来た。満足気な両親の顔を見てホッとする一方で私はどこか自分の人生を第三者の目線でみているような、自分のやりたい事をやったり両親に反抗したりしている人達が羨ましかった。
そんな中で私にも出会いがあったいつもは真っ直ぐ自宅へ帰るのに両親が待つ家になんだか帰る気分になれなくて一人で外食なんてする柄じゃないのに、ふらっと駅前のお店に入っていた。
そこで声をかけてくれたのが彼だった。今まで男性と話すなんてこと職場以外でなかった私にはとても刺激的な出来事で平然を装っているつもりだが心が浮かれていた。彼の魅力にどんどん惹かれ自然とお付き合いしていた。人生で初めての経験だった。
緊張しながら両親に彼を紹介した。世間体を気にする両親には私に見合う男ではなかったらしい。今まで両親の言う事を聞いて生きてきた私。もちろん反論する勇気なんてなかった。彼と駆け落ちをして2人で生きていく。そんなドラマのような世界に私は飛び込む勇気もなく、両親に反論出来ない私に理解が出来ないと去っていく彼だったがそんな彼の背中もどこか他人事のように眺める私がいた。
またいつもの家と職場の往復の日常に戻っていた。代わり映えのない日々の中で父が亡くなった。突然の連絡で脳梗塞だった。
あんなに厳しかった父が呆気なく逝ってしまった。
父が亡くなり母との2人暮らしが始まり今までなかった母娘の時間が出来た。私も母も父の機嫌を伺いながら過ごした家庭に突然といなくなった父。私は少し母と打ち解けられるかもしれないと淡い期待を抱いていた。だが、さすがの母も突然の父の死に憔悴していたのだろう。コンロの火を消しわすれたり突然昔話をしたり曜日を勘違いしたり今までしっかりしていた母がおかしくなっていくのを日に日に感じていた。
夜中にふらっと出ていくことが増えた。帰り道がわからなくなり警察に保護される事もあった。私は家の内鍵もきちんとして母が簡単に出れないように対策をして眠りについていた。
ある日の帰り道ふと自分の人生を振り返ると両親の選択のままに生きてきた人生だった。
私のやりたい事好きな人なにも自分で選択しない人生だった。厳格な両親を言い訳に私自身も人生の選択の責任から逃げていたのだろう。
そんな私も30半ばになろうとしている。自分の人生を生きたいと初めて思った。
そんな事を考えていてももちろん変わる勇気もなく明日から日常をこなしていくだろう。と眠りにつく。
朝起きると母がいなかった。
きちんと戸締まりをして内鍵を忘れなかった私なのに、きっと疲れていたのだろう。
自分の犯した失態に気付いた時に震える手とは裏腹にどこか心が躍る自分がいる事を私は気付いた。
あの日鍵をかけなかった理由 りりり @riko_chako_
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