第10話
研究員なんて言葉を聞いたのはもちろん初めてじゃない。だけど、おれは技師組合に属している人と会うのは初めてだ。技師とは違うのかとおれが問いかけると、技師でもある、と答えが返る。
「広く技師組合は技師の仕事の斡旋や依頼の取り次ぎもしていますが、装備開発の企業的な側面も持っていまして……。わかりやすく言えば採掘師が使う一般的な装備がありますよね、専属技師の方々が作るものとは違う。あの原型を作っているのが我々のような学者を兼ねた技師なんです。それを、技師組合の者は研究員と呼んでいます」
「あ、あれってそういうところで作られてるんですか」
「そうなんですよ」
レクトルさんは少しほっとしたように笑みを見せた。
「でも、なんでそんな学者さん? に……、おれたちを?」
おれはノールと顔を見合わせる。
おれは疑問しかなかったけれど、ノールの方は思い当たる節でもあるのか怪訝な表情だ。小さな皺を眉間に刻んで、蒼い目の中に不安を揺らがせていた。
そのおれたちに、ナトアさんは告げた。
「昨日、ホールで君たち話してただろ、幽霊鉱脈の話。あれの調査を今彼らがやってるんだ。それで、調査に人手がいるっていうから、君たちが丁度良いんじゃないか、って推薦したんだよ。私が」
「あの話の、鉱脈の調査を、してる方……なんですか」
「はい」
「やっぱり」
驚くおれに対して、ノールは納得したと小さく呟いてため息を零す。
「気付いてたの、ノール」
「レクトルさんに見覚えがあったんだよ。前に見たのは本部だったと思うけど。貴方確か、調査部の人ですよね?」
「そうです! 覚えててくれたなんて、光栄だな」
「調査部……」
また知らない言葉が出てきたと頭を抱えて詰まりかけたおれに、ノールが短く補整をかけた。
「俺たちが所属してる組合以外も持ってる組織なんだけどさ。だいたいどこの技師組合でも調査部、って呼ばれてるかな。……
「ナルホド?」
それでもわかったようなわからないような。その脇で、ノールはナトアさんに声を向ける。
「その海域の調査、師匠も関わってたんですか」
問いかけに、ナトアさんはつかみ所の無い笑みで返した。
「関わってるもなにも、私は初期の調査に協力した技師のひとりだよ。鉱脈が見つかった頃お前たちは他の星に行っちゃってたから、ふたりとも知らないだろうけど」
「じゃあ、師匠もこの調査に?」
一瞬、ノールの目に期待が灯る。
仕事に推薦してもらえた、なんて言うなら、同じ仕事をしてほしいって意味で取っておかしくない。今でも尊敬している憧れの技師である師匠と一緒に仕事ができるなら、ノールにしてみれば何事にも変えられない嬉しい話だってことはおれにもわかる。
でも、ナトアさんはノールの言葉に首を横に振って返した。
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