『死を願った13歳、二度目の命をくれた歌姫 ―心臓手術と観月ありさの奇跡―』
如月 愛咲(きさらぎ ありさ)
第1話:三度目の命を、掴み取りにいく覚悟
私の左胸には、縦に一本の白い線が走っている。
三歳の時、生きるために刻まれた心臓手術の痕だ。
四十年以上、私の鼓動を支え続けてきたこの傷痕を、今、私は鏡の前で静かになぞっている。
かつてはこの傷が嫌いだった。
拾ったはずの命なのに、成長するにつれて待っていたのは、家庭内での虐待、理不尽な冤罪、そして学校での執拗ないじめ。出口のない絶望の淵に立たされた十三歳の私は、この傷痕をなぞりながら、何度も暗い空を仰いだ。
「どうして、あの時助かったの。こんなに苦しいなら、いっそ……」
けれど、運命は三度、私を試練の場へと引き戻す。
今、私は人生最大とも言える、二度目の心臓手術を目前に控えている。
正直に言えば、怖い。
再びあの冷たいメスが、私の肌を、肉を、そして一度救われたはずの心臓を切り裂くのだと思うと、逃げ出したくなるような恐怖が足元から這い上がってくる。眠れない夜の静寂の中で、自分の鼓動が止まってしまう妄想に支配され、言いようのない不安に押し潰されそうになる。
それでも。
それでも今の私は、十三歳のあの頃とは違う。
「生きたい」
喉の奥から、絞り出すような願いが溢れる。
かつて絶望に震える私の「生命維持装置」となってくれた、観月ありささんの凛とした歌声。私が描いたデザイン画がカレンダーの衣装になった、あの奇跡。
あの光が、今も私の中に灯っている。
福祉の現場で、誰かの暗闇に寄り添ってきた今の私には、守りたい明日がある。
医学が一度目の生をくれ、ありさちゃんが二度目の命をくれた。
なら、三度目の今回は、自分の意思でその命を掴み取りに行こうと思う。
「生きていい。想いは届く」
鏡の中の傷痕を見つめ直し、私は深く息を吸い込む。
これは、死を願った少女が歌姫に救われ、誰かを支える大人になり、恐怖を抱えながら再び命の試練に挑むまでの、魂の記録である。
作者より
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今、私は再手術という大きな壁を前にしています。
この物語を書き切ることが、私の今の生きる糧です。
もし少しでも「続きが気になる」「頑張れ」と感じていただけたら、ページ下部にある 【★で称える】 や 【+フォロー】 を押して応援していただけると、本当に大きな力になります。
皆さんの応援が、私の心臓を動かすエネルギーになります。
よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます