俺が世界を救ったとき、そこにはもう誰一人として生きてはいなかった
@SsRei
第1話
虚空を埋めるのは仲間の骸と、絶望的な静寂。最強の魔王を前に、残されたのは無能と蔑まれた俺一人。だが、この男にはたった一つ、命と引き換えの秘奥義があった。
――絆の
俺は魔王の胸に拳を叩き込む。その衝撃で魔王の体に、仲間と焚き火を囲んだ夜の光景が「剣」として生成された。俺はその思い出の剣を抜き放ち、一閃。魔王の肉体を裂く。
反対側には、皆で馬鹿笑いした祭りの記憶が新たな剣として浮かび上がる。間髪入れずそれを掴み、再び一撃。三本、十本、五十本。斬るたびに、失われたはずの『楽しかったプラスの思い出』が、残酷なほど鮮やかな銀河の輝きを放つ剣となって魔王を侵食していく。
九十九の絆を刻み、百本目の剣――俺自身の魂を象徴する光の剣を魔王の心臓へ突き立てた。百の記憶が奔流となり、愛する者たちの笑顔が魔王を飲み込み、その存在を完全に消滅させた。
光が収束し、静寂が戻る。全身から力が抜け、俺は膝をついた。心臓の鼓動が、幕を閉じるようにゆっくりと止まっていく。視界の端で、動かなくなった仲間たちの姿が見えた。俺一人が救ったところで、もう誰も笑ってくれない。
薄れゆく意識の中、俺は皮肉を込めて、独り言をこぼした。
「これで世界を救えたか。……けどよ、俺が死んじまったら、世界も終わりじゃねぇか」
――――
あとがき
このスキルの本質は、かつての仲間たちとの「楽しかったプラスの思い出」を、敵の肉体に直接「剣」として具現化させることにあります。魔王の体に浮かび上がる輝かしい記憶の剣を一本ずつ引き抜き、再び叩き込む。斬撃のたびに溢れ出す幸福な光景が、逆説的に魔王を滅ぼす力へと変わっていきます。
しかし、百の思い出を使い果たし、世界を救った先に待っているのは、スキルの代償である「使用者の死」のみ。誰もいない世界で独り言として「俺が死んじまったら、世界も終わりじゃねぇか」という最期の台詞は、自己犠牲の英雄譚に対する痛烈な皮肉と、仲間への執着が混ざり合った、切なくも虚しい幕切れを象徴しています。
彼は救われたのでしょうか……
俺が世界を救ったとき、そこにはもう誰一人として生きてはいなかった @SsRei
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