第8話「成長」
「ちょっと!起きて!」
ここはどこだ...
微かに聞こえる誰かの声。
俺は確か頑張って朝早くに起きてそれで、それでえーと
「かぬい。起きなさい」
体を揺さぶられてなんとか目を開けた。
ぼやけた視界の先にはなぜか母親と父親がいる。
「わっ!」
俺は目の前になぜか親がいたのでびっくりしてしまった。
「なんでいるんだよ」
素直に疑問になったことを聞いてみた。
「なんでって言われても..ね?」
母親が父親の方を向いて何かを確認したような顔をする。
「今から仕事に行こうってのに玄関に行ったらお前が倒れてたからびっくりしたんだぞ」
今から仕事...仕事...
俺は慌てて玄関から走り出して自分の部屋へ戻った。
「今何時だ?」
6時50分!?
電車の時刻は7時7分
そしてここから駅まで最速で5分だ。
だがそれよりも準備だ。
俺は学校の準備を朝早くやればいいと思っていたため全く進めてない。
「えーとえーと」
焦りすぎて思考が回らない。
今日必要なものは、これと、これと..
これで一通りの準備は終わったが、何か忘れているものはないだろうか。
よし。おっけー
現在の時刻は6時55分
普通に行っても間に合うぐらいの時刻だ。
俺はリュックを背負い、急いで階段を降りた。
「いってきまーす」
「いってらっしゃ....あんた制服間違ってるわよ」
母親が俺の服装を見て何か怪訝そうな顔をしている。
自分の目を下にやるとこれは間違いなく制服ではない。
走る時に着替えてそのままだったのだ。
「うわああああ」
俺は急いで部屋に戻り制服を手に取った。
『急がば回れ』
「知らねえよそんなこと」
俺はこいつのいうことを聞いている時間もなく急いで制服に着替えた。
現在時刻は7時。
頑張っていけばもしかしたら間に合うかもしれない。
でも頑張ってもし間に合わなかったら...
俺は考えた。
頑張っていってももし間に合わなかったらなんのために頑張ったのだとなりたくなかったからだ。
いっそのこと潔く遅刻して叱責を受ける方がいいのではないだろうか。
『いやそれは違う。お前がもし頑張って間に合わなかったとしても行くまでの頑張りが消えることはない。なぜ結果だけを見る。結果だけを見るからお前はうまくいかないのだ。過程に価値を見出せ』
過程に価値...
なるほど。参考になる考えだ。
俺は一旦冷静さを取り戻し自転車に乗った。
本気で頑張れば5分だ。俺ならできる。
おそらく現時点で7時は過ぎている。
俺はがむしゃらに自転車を漕いだ。
絶対に間に合ってやる。
その時の俺は間に合うことしか考えれなかった。
いつも通りの電車に乗り、俺は学校に登校する。
朝の頑張りもこの頑張りもどっちもきついが楽な方に逃げるよりかは絶対にマシだ!
駅まで残り200m、100mそして...
とうとう駅の駐輪場に着いた。
俺は急いで自転車を止め、電車が来るところへ向かった。
「ハァ、ハァ、ハァ……ッ!」
肺が焼ける。朝の5kmランニングと、今の全力疾走。今日だけで俺の心臓は一生分の仕事をさせられている気分だ。筋肉痛で悲鳴を上げている脚を無理やり動かし、階段を二段飛ばしで駆け上がる。
ホームに滑り込む。と同時に、冷たい電子音が響いた。
プシューッ。
俺の目の前を無情に通り過ぎる電車。
「あ...」
電車の窓に映る俺の情けない顔。
結局なにも変わらなかった。
あの時スマホに映った顔となんら変わりないではないか。
(やっぱり無駄だったんだ...)
『お前はよくやった。それにあの時のお前とは明確に違う部分があるだろう』
「あの時と違うこと?」
『あぁ。お前はあの時自分の意思を持っていなかった。だが今回はどうだ。自分の意思で頑張り、逃げずにここまできたじゃないか。それは前回とは違う。一段階アップグレードしたお前だ』
「でも結局間に合わなかった・・・」
『その思考こそゴミなのだ。私がさっき言っただろう。結果だけを見るなと。過程をなぜ見ようとしない?お前は十分頑張った。その結果がこれだ。もし今回がダメでも次失敗しなければいい。そうやって人間は成長するのだ』
俺は悔しくてまた涙がこぼれそうだった。でもこいつの言葉に励まされた。前とは絶対に違う自分。
それがここにいるなら俺はそれでいいのだろう。
『次の電車は10分後だ。遅刻は確定だろうが、ちゃんと謝れば許してもらえる。そうやって社会はできているのだ』
俺は拳を握り、次の電車を待った。
電車に乗ったもののどこか変な気持ちがした。
怒られるとわかっていてもなぜか清々しいいい気持ちだ。
電車から降り、学校へと向かうかぬいを見た人たちはあまりの姿勢正しさに目を奪われてしまった。
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