Eternal Legend ソードクエスト
かわうそ?
第1話 決断
リクニア王国。大きな森林が存在する緑豊かな国である。しかし、邪悪なる闇エルフと人型生物との戦争が起こり、勝利したものの第一王子はその時に戦死した。その後、権力欲の強い支配者が、この国の覇権をめぐって反乱を起こした。かつての英雄神カインが愛用した【大剣】があり、それはこの国を支配できる「権利」を得ることが出来ると言われていた。其の剣を持っていたレイガース侯爵が其れを所有して支配しようとし、戦乱で負傷していた国王を倒す。たが、その【大剣】は偽物と知られ、内部崩壊が起こり、最も信頼していた騎士に殺害される。その後は、各地の支配者は、戦力上の問題から争いは止め、かりそめの平和を維持する事にした。しかし、いつ争いが起こるかはわからない状態であった。
冬のある日。年老いた野伏は、雪の積もった森の中を歩いていた。冬なのでそう獲物がいないのだが、近くに罠を仕掛けている。その確認をするため歩いていた。雪がちらついて、毛皮をコートのように着ても凍えそうな寒さだった。
彼は、小枝を拾いながらある異変を感じた。人の気配である。こんな森の中に人が入ってくるなどある訳無い。ここから一番近い村までも1日かかる。何かおかしい。彼は、狩用の短剣を握り締め気配がする方へ向かっていった。
その先には、二人の若い男女がいた。野伏は見える範囲で様子を見ることにした。男は、跪き息が荒そうで動けないようだ。一方女性の方も彼を励まそうとするが、自分も限界に近いようだ。何故こんな辺鄙な所に居るのか、冒険者だろうか?野伏は疑問に思った。しかし、見捨てるわけにはいかない。
「そこの、お前たち!何をしておる!」
女性が其の声に気付き、疲れ果てた男を庇うようにして短剣を握り締め身構えた。この二人は冬の森を歩くには相応しくない格好である。チュニックにズボン、ブーツと短剣。防寒服を一切着ていない。そして、女の方はハーフエルフのようだ。何か事故にでも遭ったのだろうか?
「近寄らないで!!」
「そう、警戒するな。ワシはこの近辺を守っている野伏だ。お前たちは何か、危険な目にあった様だな?ここは寒い」
野伏は短剣を捨て、危害を加えるつもりはないと主張した。
「ティクス、……あの人……は……大丈夫だ」
疲れ果てている若い男が女を制した。ティクスと呼ばれた女は、渋々それに従った。
「……訳はワシの家で聞こう。さぁこれを」
野伏は女に毛皮を被せ、男を背負って自分の丸太小屋へ連れていった。
丸太小屋は暖かかった。暖炉には火が燈り、野伏が暖かいミルクを椅子に座っている二人に差し出した。
「ワシは、トルンク。お前サンの名前は?そこの半エルフの娘サンはさっき知ったから」
「ありがとう。僕は、……ユーリルといいます」
「さて、ワシには聞きたいことが2つある。お前サンたちが何故あそこにいたのか。そして何をしていたのかだ」
トルンクは、自分愛用の椅子に腰掛け、彼らの口が開くのを待った。
春。
温泉町であるクローズでは、やたら元気なドワーフが短い足を使って走っていた。それに遅れて歩いて付いて来ている人間が2人いる。
「やっと、外に出られるというのに、何ぐうたらしてるのじゃ。早く北のカダールにいかんと、依頼人にどやされるぞ」
「ドルマ。貴方はいいとして、私たちは昨夜、貴方の付き合いで飲んでました。でも貴方と体の作りが違うんですよ。勘弁してください」
体の細い男が、ドワーフに言った。
「あれぐらいの酒で、二日酔になるんじゃない!」
「エール1樽ね…自分のレベルで考えないでよ!…私はそんなに飲んでないけどフィロッグが倒れそうになっているのよ。あんたも手伝いなさいよ!」
体格の良い、剣を携えた女が細いフィロッグを支えている。
「わしがこいつを背負ったら、こいつの靴の先が擦り減ってしまうぞ,レオノア。こいつをワシの頭でささえろというのか?」
「…あんた僧侶でしょ?解毒してよ」
「其の程度で神の御力を使うことはできん!こいつは気合が足らんだけじゃ!」
ドルマはごつい指で、フィロッグを指差した。
「そんなぁ」 フィロッグは弱々しい声をあげた。
レオノアは、あきらめた様子でため息をつき、
「冬になったから足止めを食らったけど、前の戦乱で生き別れになった人を探すのって苦労するよね」 と話題を変えた。
「すでに亡くなっていた時、家族の悲しい顔は見たくありませんね」
「幸い、今回は依頼人が探している人物と確認出来そうだ。何せ、同じペンダントを所有していたからな。あとは彼女を依頼人にあわすだけじゃ。早くルナの家に行くぞ」
「待ってくださいよぅ」
「大丈夫よ、彼が走っても私たちが歩く時の速さと一緒だから、見失うことはないわ」
1週間後、彼らは先ほどの用事を済ませ、またクローズに戻って来た。彼らはこの町が気に入ったようで、此所での冒険をしようとしている。其の理由は、王国の南北に位置する主要な交易路であり、人の行き来が多い。また、仮に戦争が起こっても、傭兵として此所の軍に志願できるからだ。皮肉ながら、彼らの仕事はこうゆう国の危機があるときに多いのである。
ドルマは、行き付けの酒場で酒を飲んでいた。夕方頃の酒場には、一日の疲れを癒すために人々がやってくる。
「おう!ビヤダルのドルマ!生きていたか!」
「勝手に人を殺すな!久しぶりじゃな。座れ座れ」
彼は、冬に親しくなった酒場の常連と久しぶりに飲み交わしていた。その後、他の2人もやって来て夕食を済ませる。
さらに酒場は、盛り上がりを見せると喧騒の中に、噂や冒険者の仕事の話がそこらに聞くことが出来る。人探し、護衛、遺跡探索。ドルマやレオノア、フィロッグもいい仕事は無いかと、聞きまわる。しかし、運悪く、仕事にはありつけなかった。落胆する3人。
「今日はひとまず寝ましょう」
フィロッグが提案した。ドルマは自棄酒するといって残り、2人は宿屋に戻っていった。
しばらくして後、酒場は閉められ、追い帰されるようにドルマは宿に向かった、其の途中、酔いながらも彼は隣にある公園にて物音がするのを気がついた。野良猫の鳴声ではない!剣戟の音!喧嘩か!?
ドワーフは、その方へ走っていった。向こう側も気付いたらしく、逃げて行く足音が聞こえた。彼が付いたときには、一人のハーフエルフの女性が鬱むせになって倒れているだけであった。
「おい!しっかりしろ!」
ドルマは彼女を抱え起こす。腹に短剣で刺された傷が生々しい。そこから大量の血か吹き出している。
「待ってろ。今治癒する。……大いなる神よ、この傷付きたるものに癒しの力を!」
ドワーフは聖印を掲げ、傷口に手を当てる。すると見る見るうちに傷口が塞がっていく。その後、彼は彼女の息を確かめた。息があるが、意識はない。
「間に合った様だな。さて…。引きずるのはいかんしな」
彼は、彼女を抱えた。多少靴のかかとは引きずるものの頭は大丈夫。すまんなと一言いってから、よたよたと仲間のいる宿に向かった。
「きゃぁ!!」
ティクスは目を覚ました。目の前が夜の公園と違う。何処かの部屋にいる。そして、自分はベットで寝ているし、傷の手当てもされている。
「気がついた?良かった。2日も意識が無かったのよ。一先ず安心ね」
レオノアが、半ば驚きながらタオルを持って来て彼女の汗を拭いてあげた。
「此所は何処ですか?」
「宿屋よ、私の連れが貴方を引き摺って帰って来たの。あのビヤダル、人が良いのだか悪いんだか。公園で何があったか教えてくれるかな?名前とね?」
「誰が引き摺ってじゃぁ! ふげっ!」
ドルマがドアを開けて抗議して来たが、レオノアの投げた桶が顔面に直撃した。
「ノックはするの!…話の続きね」
「私はティクス…。見ての通り半エルフよ。公園で強盗に襲われて…」
「抵抗して、怪我を負ったと?」
「はい…。助けてくれてありがとうございます。」
「困ったときはお互い様よ。そのまま放って置くことなんてできないしね。お礼を言うなら、あそこで苦しんでいるドワーフよ」
レオノアは、顔を手で覆ってもがいているドワーフを指差した。
「公園にいたことと、強盗に襲われた理由を聞きたいんじゃがのう?普通は夜にうろつくもんじゃない。それに、あの腹の傷は急所スレスレだった。強盗にしては手だれの者のようだ。本当のことを話して欲しい」
ドルマは、ティクスに尋ねた。
「私は、単に…」
「嘘はいけない。神は告げておられた。御主を助けろと。そして、この人間の国に大きく関わっている事も知っておいでだ。詳しくは御主に聞くしかないんじゃがのう」
ドルマは、近くの椅子に腰掛けた。
「…私の…、私の大事な人が熱病にかかってしまったのです。今、住んでいるところでは、其の病気を治せる薬草がないので、この町に来ました。早くしないとあの人が…」
「そして、あの人は命を狙われています。…どうか、助けていただけませんでしょうか?」
レオノアとドルマはしばらく黙っていた。それは彼女はそれ以上言いたくはないらしい。2人とも考えた。神は重要な事を告げている。恐らく彼女一人では危険だ。彼女が正直に話すまで待とうではないか…。
「助けてあげましょう。其の熱病に効く薬草はなかったとしても、ドルマが治癒できるかもしれない。貴女の護衛をするわ」
「あ…ありがとうございます」
「どんな薬草が必要か、そして今その大事な人の場所を教えてちょうだい。急ぎましょう」
暗闇の中に素早く走る影がいる。何者なのか、何人居るのか分からない。
「本当に必要なかったのか?」
「取り押さえたときに、すでにあの女の心を読んだ。その時に場所を読むことが出来た。それ以上は用なしだ」
「此所から近い。仕事は敏速に」
暗闇の中に消えていった。
レオノアとフィロッグ、ドルマはティクスを守り、森の中に入っていった。春の木漏れ日が気持ちよい日である。
鳥が鳴き、兎がこちらを見ている。のどかな雰囲気である。しかし、彼らは急いでいた。数日のロスがある、下手をすると、ティクスの大事な人が危機にあっている可能性がある。病気も心配だ。ティクスが森の中をガイドしてくれる。
そして、もうすぐ目的地に就く頃だった。あたりは夜になっている。
途中、そこかしこに人型の足跡を発見した。この森には、殆ど冒険者がくる必要の無い所だ。何者かが入っている証拠だ。
「すでに、あそこにっ!」
焦る、ティクス。
「焦っちゃだめよ。只の狩人かも知れないわ」
「……」
「……!?見てください!あの方向に火の手が!」
フィロッグが指差した先の森の奥に、赤赤と光る物が見えた。それは煙を立ち昇らせているようだ。
「あの先は!?ユーリル!」
ハーフエルフは駆け出した。レオノアは制止しようとするが、とめられない。ドワーフは、一緒に走っていった。
丸太小屋は燃えていた。
年老いた野伏は、病に苦しんでいる男を庇っている。手には、使い慣れている長剣を握り締め、周りを警戒している。何処から敵は来るのだ?周り一帯に殺気が立ち込めている。
瞬間。自分の周りが爆炎に包まれた!熱さに耐える2人。これは後ろの火事ではない。魔法の炎だ。
「ほう、これを耐えれるとは。なかなか骨のあるものだな。老いぼれ」
森の中から姿をあらわした者は、褐色の肌に灰色の髪、そして真紅の瞳のエルフであった。
闇エルフは、黒色の鎖帷子を着込み、漆黒のマントと羽織っている。
「闇エルフ!何故?わしらが何をした?何故襲う!?」
トルンクが、火傷の激痛に苦しみながら耐える。
「事情を知る必要はない。我らは、そこの男に恨みがある!そいつを殺せば、この地上の国はさらに混乱し、復讐は成就できるのだ。其の男を差し出せ!そうすれば特別に見逃してやる」
「断る!」
「ならば、死ね!」
闇エルフは、黒い長剣を鞘から引き抜き、上に掲げた。そのまま振り下ろす。しかしそれは、病人が握っていた剣で受け止められる。
「死に損ないが!」
闇エルフは、再度剣で斬ろうとすると、後ろから気配がするのを感じた。
「間に合ったようじゃな。もう止めろ。地下深く這いずる愚かなエルフよ!」
ドルマが、戦槌を握り締め叫んだ。
「闇エルフと人間の戦いを再び起こすつもりですか?」
フィロッグが後に続く。
「貴方の目的は大体検討はついたわ。それは絶対にさせない!!」
レオノアが、剣を引き抜き、身構えた。
闇エルフは、この状況に不敵な笑いを表わした。
「賎種な者共に、高貴な我らを倒せると思っているのか?死体を増やすだけだ?王子もろとも死んでしまえ!!」
「王子!?」
3人は驚いた。しかし、不意を討たれるわけにはいかない。直に体勢を立てる。
レオノアは目の前にいる闇エルフに向かって近づく。ドワーフは、木々の物陰に殺気を感じたので、警戒した。それは正解で、横から別の闇エルフが、襲い掛かって来た。ドルマは、丸い肉体を使って転がって敵の後ろに周り、得意の戦槌をエルフの足にぶち当てた。苦痛でもがくエルフ。其の隙を逃さず、脳天に叩き付ける。
ティクスは、迂回してトルンクとユーリルの所に向かう。そこを正面の闇エルフがはばむ。
「弱いものをいたぶるのが御好きなの?」
レオノアが挑発する。
「どっちにしても同じだ」
レオノアは、素早く剣で切り付けた。闇エルフは紙一重でこれを躱すが、マントが斬られていた。彼は、にやりと笑い
「腕に免じて先に相手してやろう」
女剣士と対峙する。
レオノアがもう一度、闇エルフを斬ろうと身構える。相手は、剣を下に向けている。隙だらけだ。
「ふざけているのか!」
「いいや、楽しませてもらっているよ」
「其れをふざけているというんだ!!」
彼女の一撃!彼女は、敵の肩から腹まで、剣が斬っていくと思っていた。しかし、現実は違っていた。肩のところで、傷一つなく止まっている。
「!?」
「第四階位の呪文、皮膚石化。防御用さ。君の剣術は涼風に等しい」
闇エルフはそのまま、下から剣を振り上げる。しかし、この剣撃も、彼女の剣が当たらなかったように止まる。
「此れぐらいの事でほんとに驚くと思う?」
レオノアは、にこりと笑った。
「仲間に魔技がいるのか!?」
闇エルフは憎悪の表情を見せた。
フィロッグは、ドルマと共に周りを囲んで来た敵、闇エルフと対峙していた。過去数回彼らと戦ったことがある。彼らは、闇の地下に生きて、其の危険の中で人や人と友好を持っている地上エルフ以上の力を持っており、危険な闇の中で強力な魔法と其の抵抗力を身につけている。普通に戦う事は無謀である。知恵を使わなければならない。彼らの最大の弱点は、戦いの中で知っている。
「ドルマ、引き付けておいてください」
「解っておる。魔法は解せぬが、御主は信頼しておる」
ドワーフは、このやせた男を守りながら、次々に襲ってくる敵の攻撃を受け止める。傷は負うものの、強靭な肉体が、耐えてくれる。
「我が知力のエナジーよ、太陽の光の如く此所を照らせ!!」
彼の腕から、日光と同じような閃光が飛び出した。其れを見た闇に生きるものは、苦しみ、もがきあえいでいる。彼らは、闇の中で生き続けていた故に、日光に極端に弱く、忌み嫌われるものであった。此れに耐えられるのは、其の地獄を長い年月をかけて克服した者のみだ。
「最後は貴方よ!覚悟!」
女剣士の強力な剣の一撃が、残った闇エルフの胸を貫く。
「ば…馬鹿…な」
彼は息絶えた。
燃え尽きた丸太小屋から少し離れた広場に、6人は集まった。ドワーフは、治癒呪文を唱え、病床の男の熱を取り除いてあげた。彼は安定した寝息をたてている。
「本当にこの人が、このリクニアの王子様なの?」
レオノアがティクスに問い掛ける。
「……」
「今まで何をして来たか、何が起こったかを聞きたいわ」
「数年前に、ユーリルに出会って一緒に暮らしてたの。でも、ユーリルの命を狙って幾度も暗殺者が襲って来たわ。理由は、ただ彼が王子といううだけで。それからずっと2人で逃げて来たの。彼はもう王家としてのしがらみを棄てたいといっているの」
「かといって、いまの動乱から平和にするには王子の彼が必要じゃない?」
「しかし……」
ティクスは、黙った。
「それは、彼自身が決めることです。彼が、元気になってからでも遅くはないでしょう。兎に角、此所は危険です。クローズに戻ってそこから、彼と話し合いましょう」
フィロッグが提案した。
誰も反対する事はなかった。只、トルンクだけは小屋の後始末をすると言い残し、立ち去った。
クローズの宿屋についてしばらく後、ユーリルとの話合いをしたが、物別れになった。しばらく考えさせてくれと、彼は自分の部屋に戻っていった。レオノアは落胆した。
「あんな意気地なしとはねぇ」
「貴方は、支配者になれる自信はお有りなのですか?」
魔技が問い掛ける。
「そりゃ、私には無理よ。でも最善を尽くそうとはするわ」
「彼には、其の責任が重過ぎるんですよ。其れを克服できれば、彼は立ち上がってくれます。それまで待ちましょう」
「時間が無いと思うんじゃがなぁ」
ドルマは、ため息をついた。
ユーリルは悩んでいた。苦しんでいた。王家の血筋というだけで、人の上に立たなければならない、民を導かねばならないということが。これらが彼の心に重くのしかかっているのである。彼は、リクニア王国第二王子 ユーリアス=ロウル=リクニアなのだ。
今まで彼の旅の理由とは、父王ローレンスから「民の声を聞きと届け、善き統治者になれ」と言われたのだった。民の身分になり、民の苦しみを知り、身分を隠して旅を続けた。しばらくは、姉アリスと共に旅をしていたが、一人のハーフエルフに出会い恋に落ちる。それが、ティクスである。其の間、旅を続けていくうちに、民の苦しさと支配者の腹黒さ、そして、結局は自分は政治の駒であるということに気付き、統治者の立場を嫌うようになっていった。そして、姉と別れ、愛するティクスと隠れ住むようになっていたのだが、
そんな中、自分の正体を知った暗殺者や、貴族につけ狙われる。それらから逃げ続けていたのである。
「ユーリ…、前にも言ったよね?もう、王子として、統治者としては立ち上がらないって」
彼の背中で尋ねるのは、愛するティクスであった。
「あぁ、言ったとも」
「なら、レオノアさん達にそのことをはっきりと言って!また昔みたいに静かに暮らそうよ。ねぇ?」
「……」
ユーリルは黙っていた。そして、
「レオノアの言った言葉 ”恋人と一緒に、平凡な生活を過ごすというのなら別によろしいです。しかし、亡くなられた父上と兄上の意志を無駄にするおつもりですか?民を導くのは、貴方しか居ないのです!” …心に効いたよ。…僕は王家としての誇りと使命をを棄てた。しかも、仮に王になっても、僕には民をまとめる力など無い。姉さんを見つけ出してから考えることにしよう」
「でも、ユーリ…、もし姉さんがいなかったら?」
ティクスは、ユーリルに尋ねた。
「再び、王家としての勤めを果たさなければならないだろう。僕がやらなきゃ、再びレイガースのような、権力を欲する者達によって、争いが起こり、民が苦しむ。それだけはさせてはいけない。…君の約束を破ることになって申し訳ないけど」
「ユーリ」
「でも、そう悲観するんじゃないよ。姉さんは必ず生きている。そして、必ず会えるさ。姉さんがいれば、うまくいくはずさ。心配しなくてもいい」
ユーリルは、ティクスの肩に両手を回しながら言った。
「ちょっと、買い物にいってくれない?」
「どうして?」
「こんな格好だと、これから大事な仕事には差し支えるしね。僕も男だ。正当な統治者候補として、相応しい振る舞いをしたい」
「分かったわ」
ハーフエルフは、必要な品を確認してから財布を持ち、ちらりと彼を見てから、扉を閉めた。
「やはり、僕は支配者として生きていく必要があるのかい?…姉さん」
小1時間後、待っていた3人は、ユーリルの姿をみて驚いた。 小奇麗ながらも、後継者としての威厳のある顔つきになっていたのである。まるで別人をみているようだ。
「君たちに助けてもらっていなかったら、僕はあの場所で死んでいただろう。ありがとう。
今の時代は本当に平和ではない。僕も旅を続けている間に、どれだけ人々が苦しんでいるのかが理解している。先ほどは、気弱な発言をしたのは恥ずかしい限りだが…。どうか、僕に力を貸してくれないか?」
ドルマやレオノア、フィロッグはうなずいた。「手伝いましょう」
4人は握手した。
そして、彼らの本当の冒険が始まる。
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