神様、あの子の仕様書が分厚すぎます

あかり(天界管理番号A-29)

第1話 神様、あの子の仕様書が分厚すぎます

神様、最初に言っておきます。

私は悪気があって仕様を盛ったわけではありません。

ただ、確認を怠らなかっただけです。




「この人、ちょっと仕様書と一致しすぎじゃないですか?」

天使がそう言った時、神様は静かに分厚いファイルを閉じた。


「……“ちょっと”ではないな」


血液型、星座、干支。

誕生石、誕生花、誕生色。

性質、味覚、音、楽器、数字。

──全部、揃っている。


「神様……この人、本当に人間界に降ろして大丈夫ですか?」


神様は遠い目をして言った。

「正直に言おう。

我々も……ここまでとは思っていなかった。」



人が人間界に降りる時、皆それぞれ「仕様書」というものが存在する。

その仕様書がある事によって、その人の性格や生きる道が大体決まるのだ。

仕様書というものは、基本的には簡素だ。

性格の傾向、得意なこと、苦手なこと。

多くても数ページで収まる。

だが――。



天使は、恐る恐るファイルを開いた。

一枚、また一枚。

そして、途中で手が止まった。


「……神様」


「なんだ」


「これ、“補足資料”って書いてあります」


神様は目を閉じた。

「……何枚だ」


「……まず第一補足が三十枚ほどで、その後に付録が……」


「付録?」


「はい。“人生途中で照合予定の可能性一覧”と、“変更不可項目一覧”と……」



神様は、ゆっくりと机に額を預けた。

「……誰だ。

ここまで確認したのは。

ワシはそんなに作成した覚えはないぞ!」



天使は小さく答えた。

「本人です……。

どうしても追加して欲しいと頼まれたもので……」



「あれ?ダメでしたか?

念のためです。

後から「聞いてません」は、お互い困ると思ったので。」

そう足元から可愛らしい声が響いた。



「いやぁ、ダメではない。

ただ……」

そう神様が言いかけたその時



「私の人生、絶対ブレず貫きます!!」

甲高い声が鳴り響いた。



「うむ……。

その志は素晴らしい。

だがな……、人間界は天界と違って試練が多すぎる。

何が起こるか分からないのだよ……?

だからこそ簡素にまとめる必要がある。

どんな事があってもあとから修正出来るようにね。」



「ふーんそうですか。私は私なんで。

そんな事よりこれもお願いしますね!」

大量の資料がドサッと置かれた



「まっ、まだあるのか!?量が多すぎるっ!」

ちらっと視線を横にやると今にも泣き出しそうな女の子の姿があり焦る神様


「分かった分かった!大丈夫だ!

仕様書を書くのはワシの仕事だからな。」


女の子はキラキラな笑顔で返事をした

「ありがとうございます!」



そして神様は聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で独り言を呟いた

「はぁ……。

ツラすぎる、キツすぎる、こんなはずでは………」


「ん?神様何か言いましたかぁ?」


神様はドキッとするも笑顔でこう返した

「いや!大丈夫、何も言っとらんよ。」




しばらく資料に目を通した神様は深く息を吐いた。

「……よし。

この子は――


「天界管理番号A-29」とする。


天使たちよ!

何人か天界管理番号A-29専任の天使になってもらう。

もうワシ1人では追いつかん!!」


「えっ!?」

天使達がざわめき、天界に神様と天使達の慌ただしい音が鳴り響く。

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