1本目 白いカラー
あの日、私たちは思い知った。
当たり前の儚さを―――
―――
ピコンッ
チャットアプリの着信音が鳴る。
一つの通知がロック画面に表示される。
送り主を確認して手が止まる。
嫌な胸騒ぎがする。
最悪な内容が頭をよぎる。
まだ、そうだと決まった訳ではないのに。
でも、そうなのだと頭が勝手に決定づける。
そんなわけない。そんなわけ......。
「......うぶ、......だいじょうぶ、......大丈夫」
震える手で通知を押し、ロックを解除する。
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…………
「......あぁ。そっか」
似てる。あの時と、
頭が考えることをやめる。
言葉がでてこなくなる。
悲しいとか、辛いとか、寂しいとかあるはずなのに。
感情を追い越して、頬に涙が
なんで泣いているのか分からない。
目に映るのは書き起こされた単純な文章。
でも、これを言葉にするには脳が処理するのを拒む。
いや、これは感情が拒んでいる。
とっくに処理は出来ている。理解できている。
なら、どうして、そんなわけないと思う?
目の前にある文字の固まりが全てであるというのに、
音が止まった。
温もりが消えゆく。
空気の流れが変わる。
見てない。聞いてない。触れてない。感じてない。
ただの文字が、ただの言葉が、実体を真似る。
ならばそれは、事実であって事実でない。
「あの子は?」
現実が手を伸ばしてきて気づく。後ろを振り向く。
私じゃない。私じゃなかった。
ドアノブに手をかけて止まる。
でも、私だって。ううん、違う。でも、でも、でも、
動かしたのは理性か、感情か、その両方の結び目か、
行かないと。あの子の元へ、
「会いたい」
会わなきゃ。
泣いてるんじゃないか、
うずくまってるんじゃないか、
支えを必要としてるんじゃないか、
「お願い。まだ、私たちのままでいさせて」
あの子だけ?
みんなは?
みんなに知らされているの?
どうなっちゃうの?
まだ、一緒にいたい。
まだ、強くなれない。
まだ、側にいてほしい。
まだ、ひとりにしないで。
「嘘だよ。って言ってよ、誰か、ねえ誰か、お願い」
本当は、あなたに言ってほしいのに―――
『―――ねーねー、ひとリ?ワタシ、ひとりナノ』
『……うん。』
『トナリに、座ってもいいデス、か?』
『……いいよ。』
『Yay! ワタシ、の名前は***、あなたの―――』
2023年1月23日(月)
―――ピピッ、ピピッ、ピピピピピッ「プツッ」
「んんー……?」
朝の5:30か。起きるのだるい。寒い。無理。あぁ、起きないと、起きたくない、けど、起きないと。目を覚ませ自分。目を開けろぉぉぉ......。うん......。......。
―――ピピッ!ピピッ!ピピピピ「ブツッ」
「......はい。はいはい。起きますよぉー」
起き上がって伸びをする。起きたばかりの冴えない頭で周りを見回す。これ、なぜか毎日やる。見回したって代わり映えのない、いつも通りの自分の部屋なのに。それにしても、
「懐かしい夢を見た気がする......?」
目が覚める直前まで見ていた夢へと、記憶を巻き戻そうと頑張る。ダメだ、思い出せない。なんだっけな……。そう思いながら、まだ起きたばかりでもたつく足でリビングまで向かう。テレビの前のソファに積まれた洗濯物の山の中からごそごそとタオルを取り出して洗面所まで向かう。朝はまず、歯磨きからと決めている。目の前の鏡に映る自分を見て「目開いてないなー」と思いながら歯磨きをする。夢の中に出てきたあの子どもは男の子、ではなかったな。女の子だった気がする。確か......。
「......よしっ、いくぞぉ」
歯磨きを終えたら顔を洗う。家の中とはいえ、蛇口から出てくる水は冷たい。それを顔全体に浴びせるのだ。目は覚めるが、マジで冷たい。一呼吸必要なほどに。
「あ、思い出した」
冷たい水で顔を洗えば頭も冴える。夢の内容も何となく思い出す。それにしても何年前だろう......、8年前か。あの子と最初に出会ったのは、
「ふふ、懐かしい」
夢の内容を思い出して、顔を綻ばせる。自分の部屋に戻って制服に着替えてから、また洗面所へ行って髪型を整える。思い切ってショートヘアにした自分の髪にも見慣れてきた。しかし、左耳の後ろの髪が毎回はねるのは、やめていただきたい。と切に願う。人より少し毛量のある自分の髪をこれでもかと撫でつけ、ヘアクリームでごまかしを効かせ、最後に外はねをしている部分にアイロンを当てて内巻きに直す。「今日はこれでいいや」と思えるところでヘアセットは完了。お手洗いを済ませたら、今日の朝食をどうするか考える。正月に家族で食べた餅がまだ残ってはいるが、6時25分には家を出たい。只今の時刻は6時ちょうど。うん、諦めよう。いつも通りに学校で朝食としよう。
いつから始めたかは覚えていない、7時登校。誰一人いない教室にトップバッターで入れる、あの優越感がたまらない。扉の向こうのやや暗い世界が私を招き入れ、その暗がりに日の出を呼んでいるのが私のような感覚も好きだ。ただ、その代わりに毎朝5時半に起きるのはそれなりに辛い。そして、冬場はとくに辛い。日の出を浴びていないアスファルト、布の隙間という隙間に入り込む無遠慮な冬の風、極めつけの白い息は生気が冬場に吸われていってるのではないかと思うほどだ。
今日の時間割を確認して学校の準備をする。今日提出しなければならない課題はふたつ。冬休み明けテストの解き直しノート。……いつも思う、もう少し時間をくれ。と、まぁ、これでいいかという程度の出来栄えの解き直しノートを2冊カバンに入れる。
家を出るまで少し時間がある。ティーポットでお湯を沸かしてインスタントのコーンスープをマグカップに入れる。テレビをつけて今朝のニュースと一緒に天気の確認をする。
「うそ、雨じゃん今日。しかも、さっむい!」
すかさず、棚からカイロを取り出して背中に貼り、左右のポケットには1個ずつ手持ち用のカイロを入れる。ブレザーを着て、その上にコートを重ね着する。これで良し。
家を出る時間になったが、まだ家族は寝ていた。マスクをして、こそっと「行ってきまーす」と言って玄関に向かう。ローファーを履き、傘掛けから「ちぃ」と書いたマステを貼った傘を取り出す。ついでに靴箱の上にあるカレンダーで今日の家族の予定を確認する。特別なことは何もない、いつも通りの1日だ。自分の鍵を取る。ふと、飾ってある写真の中のひとりと目が合う。
「............よし。行ってくる!」
その人に向かって笑顔で挨拶をしたら、ドアを開ける。入り込む冬の風に思ったほど寒さを感じなかったのは、カイロのおかげか、さっきまで飲んでいたコーンスープのおかげか。ガチャガチャと鍵を閉めて歩き出せば、今日がはじまる。
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