『元:インキャで現:陽キャ』の元カノと『元:陽キャで現:インキャ』な後輩
田中又雄
第1話 出会いと別れと出会い
教室の喧騒が、いつものように耳に届く。
女子一軍のグループが前方の席に固まり、軽やかな笑い声を上げている。
彼女たちの声は、明るく弾むような響きで、教室全体を活気づける。
「でさ、その人がね〜w」 「マジ!?超ウケるんだけど!w」
その輪の中心に、彼女がいた。
俺の元カノ、名前は篠崎 桜。
黒髪を軽くウェーブさせたセミロングヘアが肩にかかり、細い眉の下に大きな瞳が輝いている。
化粧はナチュラルだが、ピンクのチークが頰を優しく染め、唇にはグロスが薄く塗られて、全体的に柔らかく華やかな印象を与える。
身長は160cmほどで、スレンダーな体型に、学校指定のブレザーがぴったりとフィットし、スカートは膝上5cmくらいの絶妙な丈で、脚のラインを美しく強調している。
明るい笑顔が周囲を引きつけ、声は高めで可愛らしく、彼女は自然と会話の中心になる。
「何の話してたん?まさか俺の話?」
「違うからw勘違いも甚だしいわ〜」
そんなやり取りを横目に見ながら、俺はため息をつく。
金本秋、17歳。
高校生になってからますます内向的になり、髪は伸ばし放題で前髪が目にかかるほど。
黒縁のメガネをかけて、肩幅の狭い体型に制服がだらしなく着崩れている。
クラスメートからは「ボッチの金本」と陰で呼ばれている。
中学時代の俺たちはどちらもインキャの典型で、彼女は当時、髪をストレートに下ろしたボブカットで、化粧っ気ゼロ。
肌は少し荒れ気味で、大きなメガネが顔の半分を覆い、声は小さく控えめ。
クラスでは後ろの席で本を読んでいるタイプだった。
そんなとある中二の夏祭りでの出来事をきっかけに、急接近した俺たちは数回のひっそりとデートを重ね——時に公園のベンチで話したり、または図書館で特に喋るわけでもなく2人の時間を重ね、そして11月1日に付き合った。
付き合い方は、インキャらしく慎ましいものだった。
誰にもバレないよう、手を繋ぐのも人目のない場所だけ。
それからかなりゆっくりとした速度で関係を深めた。
初めてのキスも3ヶ月後かかってようやくした。
お互いの消極性が、関係をゆっくりと温めていた。
それから半年後、変化が訪れた。
彼女が初めて化粧を試みた日、俺の前に立った姿は少し照れくさそうだった。
薄いファンデーションで肌が滑らかになり、アイラインが瞳を少し強調し、唇に淡いピンクのリップを塗っていた。
髪は少し巻いて、ボブがふんわりと揺れる。
「化粧したんだけど…どうかな?」
「え?あ、可愛いと思う」
「本当!?嬉しい…//」
それがきっかけだった。
それから彼女の性格が徐々に明るくなり、笑顔が増え、友達が自然と寄ってくるようになった。
思春期の成長も手伝い、肌はツヤツヤに、身長が少し伸びてスタイルが良くなり、服装も少しずつおしゃれに。
友達はインキャグループから陽キャ寄りにシフトし、それから次第に俺との時間は減っていった。
LINEの返信が1時間遅れ、2時間遅れ、ついには1日空くようになり、自然消滅した。
別れの言葉すらなかった。
中学を卒業し、高校も同じ高校に行くことになり、1、2年と同じクラスが続いたが、目が合ってもお互いに何も見ていないかのように目を逸らすようになった。
そして、今では完全に住む世界が変わってしまい、噂ではクラス1のイケメン、大畑翔と付き合っているらしい。
彼はバスケ部のエースで、身長185cmの筋肉質な体型、短髪で爽やかな笑顔。
桜とはお似合いだ。
可愛くて、明るくて、頭も良くて、スタイルが良くて、コミュ力が高くて…。
そんな彼女が、かつてのインキャの俺と付き合っていたなんて、夢物語だ。
まぁ、当時の彼女は今の彼女は別人なのだが。
そんなことを考えながら、窓の外の青空をぼんやり眺める。
◇昼休み
チャイムが鳴り、俺は素早く教室を出る。
弁当箱を持って旧校舎へ向かう。
教室で食べるのは嫌だった。
周りが話題に困ると、俺をネタに笑うことがあり、それがうざくて教室では食べないようにしていた。
そうして、俺が到着したのは旧校舎。
旧校舎は本来立ち入り禁止だが、それを無視して俺は使っている。
埃っぽい廊下を歩き、図書室の扉を開ける。ここはお気に入りの場所——古い木製の本棚が並び、陽光が差し込む窓辺の雰囲気は、静かで心地いい。
広い空間に隠れ場所も多く、1人飯に最適だった。
今日も弁当を広げようと扉を開けると、先客がいた。
椅子に座り、本に没頭する少女。
ネクタイの色から1年生であることはわかった。
髪は黒くストレートで、前髪が長く伸び、目元を完全に覆っている。
メガネは太い黒縁で、視力矯正専用の無骨なデザイン。
制服のブレザーはサイズが少し大きめで、肩が落ち気味。
スカートは規定より5cm長く、膝下まで届き、足元は黒いローファーが地味に収まっている。
全体から放たれるオーラは、典型的なインキャ——肩を少し丸め、存在を消すような佇まい。
俺は驚いて固まるが、彼女はこちらを予期していたかのように顔を上げる。
視線が交差し、俺は「お化けか…?」と心の中で呟く。
ゆっくり扉を閉めようとすると、彼女が立ち上がり、近づいてくる。
小走りで扉に手をかけて開き、俺の手を優しく引く。
細い指が温かく、意外に柔らかい感触に戸惑う。
図書室の中に招かれ、困惑していると、彼女が静かに言う。
「今日はいつもより11秒来るのが遅いですね」
「…えっと…」
俺が言葉を探すと、彼女は無言で椅子を指さす。
座るよう促す仕草に、「…あっ…はい」と従う。
彼女は対面に座り、弁当箱を広げる。
「…では、お弁当を食べましょう」
意味がわからない。
「いや…えっと…どちら様?」
彼女は面倒くさそうにため息をつき、前髪をゆっくりかき上げる。
現れた顔に、息を飲む。
大きなアーモンド型の瞳が、長いまつ毛に縁取られ、鼻筋は細く通って、唇は薄いピンクで自然なツヤ。
頰はほんのり丸みを帯び、肌は透き通るように白く、そばかす一つない。
黒髪が肩まで流れ、全体的に上品で洗練された美しさ。
想像の10倍可愛い——いや、見覚えがある。
奄美江 珠那。
中学時代、一学年下の超絶美少女。
友達に連れられて見に行った時、黒髪ロングヘアが風に揺れ、そのスレンダーな体型に、中1で既に発達した胸のラインが柔らかく強調され、全体のプロポーションが完璧だった。
見た目だけでなく、一挙手一投足が優雅で、人を自然と惹きつけるオーラがあった。
上品な笑顔、穏やかな話し方、周囲を包み込むような温かさ——学校のマドンナと呼ばれるにふさわしい存在。
男女問わずファンが多く、俺も一度見ただけで、生涯忘れられないほどのインパクトを受けた。
しかし、今の彼女はそんな華やかな面影を完全に隠し、地味さを無理やり纏っているように見えた。
前髪で覆われた目元、メガネの陰影、控えめな服装——すべてが意図的に目立たないように調整されている気がする。
それでも、髪をかき上げた瞬間の美しさが、過去の輝きを思い起こさせる。
「奄美江…さん」
「…流石に知っていてくれたみたいですね。安心しました。中学時代はそれなりに有名人だった自覚はあるので」
「…そう…なんですね」
いや、それでも現状の状況は全く理解できない。
なぜここに?
なぜ俺の来る時間を把握してる?
てか、なぜこんな姿に?
うちの高校に通っていたことすら知らなかった。
「さて、本題に移りましょうか。金本秋さん。私と付き合ってくれませんか?」
「…は?」
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