二廻目 人魚軍団があらわれた!

 騎士団の勧誘を断ったユイと僕は人魚のドーリス率いるネレイス達が暴れているとの噂を聞いた。


 「こんなのおかしい!」


 「人魚が港を破壊しに来るなんて......」


 普段温厚な種族が立て続けに狂暴化しているとなれば裏に何者かがいるのは確実だろう。


 「見て! あれがドーリスよ。完全に正気を失っているわね。」


 人魚は相互に防御魔法を張り合いながら回復する耐久戦型だ。弱いネレイスを一体ずつ倒しても数の不利で完全に消耗し切ってしまうだろう。


 「《サンクタ・ネガジオン》これは相手の回復魔法を封印する技だ。」


 「おおっ!凄い魔法ですね。」


 ん......?今誰がしゃべった?ここには僕とユイしかいないはずだが?


 「これは魔法では無いぞ。封印だ。ここら一帯で回復魔法を封印する。」


 「......え、おま」


 「グラちゃん、あなた喋れるのね。」


 知らなかったのかよ。しかしこのイノシシが戦力になるとは。予想外だ。


 「ポン」


 「グッ」


 グッジョブじゃねえよ。僕回復術師なんですけど?僕もなんもできないんですけど!

 なんかこのイノシシ人型になったし。こいつの存在は謎だが今はドーリス達を止めるのが先だ。


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 波が砕ける入り江で、ドーリスは歌を止めた。銀の鱗に覆われた尾が水面を叩き、蒼い瞳がユイを射抜く。


 「陸の者よ、引き返せ」


 ユイは答えず、剣を低く構えた。足元は濡れた岩、剣の重みが手に馴染む。ドーリスの歌に惑わされぬよう、彼女は耳栓代わりに布を巻いている。準備は万全だった。


 ドーリスが先に動いた。水を割って跳躍し、鋭い爪が風を切る。ユイは半歩退き、刃で受け流した。金属と鱗が擦れ、火花が散る。ドーリスは水へ戻り、次の瞬間には別の角度から尾で薙ぎ払ってくる。


 ユイは追わない。水中では分が悪い。彼女は岩陰に誘い、潮の引き際を待った。波が一瞬引いた隙、ユイは投げ縄を放つ。縄はドーリスの尾に絡み、動きを止めた。


 怒号とともにドーリスが暴れる。だが乾いた岩の上では力が削がれる。ユイは間合いを詰め、刃を振るった。致命ではない、鱗の継ぎ目を正確に狙った一閃。ドーリスは呻き、歌は完全に途切れた。


 最後にユイは剣先を喉元に向け、静かに告げる。


 「ここまでよ」


 ドーリスは力尽き、波間に崩れ落ちる。ユイは縄を解き、海へ戻した。命までは奪わない

--それが彼女の流儀だった。


 潮騒だけが残る入り江で、ユイは剣を収め、勝者として背を向けた。


 

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この異世界がタイムリープしていることを知らない僕は天使様にチートを一つあげると言われたので天使様をもらいました 桃里 陽向 @ksesbauwbvffrs164ja

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