星葬の二重奏(ミッドナイト・デュオ)〜無能と蔑まれた俺の双剣が、夜の終わりに世界を加速させる〜
@SsRei
第1話 絶望に降る青き星
「おい、カイ!また遅れてるぞ!これじゃザコ狩りですら足手まといだ!」
リーダーのライオスが苛立ちを露わにする。
昼日中の薄暗い森。冒険者パーティ『太陽の牙』は、ゴブリンの群れと交戦中だった。
俺――カイは、必死に双剣を振るうが、身体が思うように動かない。まるで泥の中にいるように、一歩踏み出すにも全身の力を要する。剣を振るえば、敵の攻撃に間に合わず、仲間のメイジが放った魔法の巻き添えを食らいそうになる始末。
「本当に使えないな……。カイ、お前はもう『太陽の牙』には必要ない」
戦闘後、ライオスは冷たく言い放った。
「お前が鈍足なのは、昼間だからか?はっ、馬鹿馬鹿しい。そんな言い訳、信じるやつがいるかよ」
嘲笑の視線が突き刺さる。
俺は『太陽の牙』を追放された。
夕暮れ時、街の門をくぐる。追放を言い渡されてから、街まで歩く足取りは鉛のように重かった。
昔から、なぜか昼間は人一倍身体が重く、どんな訓練をしても敏捷値だけは上がらなかった。
「才能がない」「無能」――そんな言葉ばかりが、俺の周りには飛び交っていた。
夜になると、ほんの少しだけ身体が軽くなるような気がしていたが、それはただの気のせいだと、誰もが笑った。
その日の夜。
俺は街外れの丘にいた。
満月が煌々と輝き、無数の星々が漆黒のキャンバスに散りばめられている。
追放された俺に、もう行く場所はない。冒険者ギルドに日払いバイトでも探しに行くか、いや、こんな鈍足じゃそれすらも無理だろう。
「……俺は、このまま終わるのか」
握りしめた双剣を、ぽつりと地面に突き刺す。
その時だった。
空から一筋の青白い星の光が、俺の双剣へと吸い込まれていく。
剣が、吸い込まれるように鈍色の輝きを失い、代わりに深い紺青の煌めきを放ち始めた。
まるで夜空そのものを切り取ったような、神秘的な色。
「な、なんだこれは……!?」
恐る恐る、俺はその双剣を手に取る。
ひんやりと、それでいて、脈打つような不思議な感触。刀身からは、微かな青い燐光が立ち上っている。
その瞬間、俺の脳内に、どこか無機質でありながらも確かな声が響いた。
【条件:夜星の祝福を受けました】
【隠し固有スキル:『星天の裁定者』が覚醒】
【極技:ミッドナイト・ステラ・クライシスを解放】
「……ミッドナイト・ステラ・クライシス?」
自身のスキル?
俺は、自分のスキルを把握するどころか、これまでただの「敏捷値ゼロの双剣使い」としか認識されてこなかった。それが今、突如として固有スキルと極技を解放したというのか?
信じられない思いで、俺は双剣を構えた。
昼間のあの重苦しさが嘘のように、身体が軽い。
まるで、空気のように。
ふと、丘の向こうから、奇妙な唸り声が聞こえてきた。
それは、この街を脅かしていると噂される、はぐれ魔獣「ダークウルフ」の気配。
昼間なら、身を隠すか、街へ逃げ帰るしかなかっただろう。
だが――
「……行ける」
身体が、勝手に動いた。
昼間とは比べ物にならないほど軽快に動く。
そして、闇夜に紛れて現れた魔獣へと、蒼い双剣を振り抜いた。
――カキン、と澄んだ音。
浅く、魔獣の分厚い毛皮を切り裂いただけだった。
だが、その瞬間、俺の身体に電流のような衝撃が走る。
そして、信じられない現象が起こった。
「な、なんだ……この速さは!?」
一撃、二撃と、剣を重ねるごとに、俺の身体は信じられないほど加速していく。
昼間の鈍重さが嘘のように、視界が鮮明になり、魔獣の動きが止まって見える。
まるで、世界が自分に合わせて遅くなっているかのようだった。
斬るたびに、体力が回復し、疲労も癒える。
この極技の真の力なのか!?
『ミッドナイト・ステラ・クライシス』
三撃目。俺が振り抜いた双剣は、もはや青い光の筋となって闇を駆け抜ける。
そして、切り裂かれたダークウルフは、自分が斬られたことすら理解できないまま、静かにその場に倒れ伏した。
月明かりの下、俺は青く輝く双剣を見つめていた。
それは、昼間の俺を知る者からは想像もつかない、圧倒的な力。
この剣と、この力は一体何なのか。
なぜ夜の自分だけが、こんなにも「速く」なれるのか。
そして、「星天の裁定者」というスキルは何を意味するのか。
俺はまだ何も知らない。
ただ、彼の「夜」は、今、始まったばかりだった。
夜星の青い光を放ち、切るたびに剣速と自身のスピードを無限に上昇させ、自信を回復させる。
双剣のチート技。
俺は、この力で、自分を追放した奴らを見返すことができるだろうか?
俺の冒険は、今、この夜から始まる。
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