第2話

「今日は特にやることないし、配信がどんなのがあるか調べるか」


自慢じゃないが俺はつい先日までスマホすら持ってなかった。そのせいで最近流行りのダンジョン配信がどんな感じか詳しく知らない。



「……なんか地味じゃね」


いや、命の取り合いだから理屈は分かるけど。何もオーク一体にフル装備五人が囲ってボコボコにしなくてもいいじゃん。その後も色々調べて分かったことがある。まず配信活動してる中で一番強い探索者は驚いたことに椿さんパーティーだった。


「毎日自慢してくるだけあって強いな」


Bランククラスの魔物を魔法で一掃していた。ダンジョンと魔物にはランクが付いていてE~SSまである。E~Dは高校生でも簡単に倒せる、探索者だけで生活していくにはCからじゃないと無理だと言われてる。Bから上はベテランがパーティーを組んでも油断したらケガじゃ済まなくなる。


「やべっもう配信始まるじゃん」


ダンジョンのこと調べてたらいつの間にか配信開始の通知が流れてきた。




大人気ダンジョン配信者ツバキは配信の準備をしながらこれから観てくれてるであろう少年のことを思っていた。考え事してたら何時も一緒に探索してる仲間の一人に話しかけられた。


「ツバキも準備大丈夫そう?」

「もっちろん!」

「相変わらずツバキは元気…」


ツバキたちパーティーは基本三人で探索してる。剣で前衛を張る雨宮桜に後衛で回復やバフを掛けてくれる東城百合、そして私が魔法で攻撃して殲滅したりする。この二人とは探索者を始めた期間が同じだったこともあり、すぐに仲良くなれた。


「じゃあ配信開始ボタン押すからね」


:こんはなー

:こんはなー

:こんはなー

:こんはなー今日はどこ探索するの?


「今日は前回の続きからだよ!」

「新宿ダンジョンの30階層からね」


:30階層から運が悪ければA級の魔物に当たるんだろ?

:配信者でここまで来たのって居なくない

:Bランクの魔物倒せたんだし余裕でしょ

:↑バカだろ、BとAじゃ全く強さ違うぞ

:一年前の横浜事件忘れたのか?

:あー懐かしい

:あれは悲しい出来事だった


「まぁーそういうことだから油断したらダメってことだよ」


ダンジョンとは時に理不尽で何の予兆もなしに牙を剥くことがある。それは現在Bランクの魔物たちを簡単に葬ってるツバキたちも例外ではなかった。


前線で魔物を食い止めてた桜の地面がいきなり光りだし魔法陣が浮かび上がる。


「えっ?」

「トラップっ!?」


∶転移トラップだ!

:逃げて!


光がさらに輝き出しついに彼女たち三人の姿が消えた。


「まっまさか60階層じゃないよね」

「いえ、間違いなく60階層ね。あそこ見てみなさいよ…」


:ヤバい!!

:大丈夫っ!

:これは死んだな

:トレンドから来ました

:ここってほんとに60階なのか?

:60階ってヤバいのか?

:あそこに見える三つの頭を持ってる犬はケロベロスと呼ばれていてSランクだぞ?

:ランキング上位パーティーなら倒せるだろうけどツバキたちじゃ間違いなく殺される。


「何とか上に上げれる階段見つけないと…」

「下手に動いたらヤバくない…?」


:誰か助けに行けないのか!

:仮にあの魔物を倒せるとしても間に合わないだろ


最悪な状況はまだ続き、背後から悍ましい殺気感じ咄嗟に横に飛び込んだ、瞬間今まで立っていた場所に剣が突き刺さっていた。振り返ると、甲冑を身に纏い馬に乗ってる騎士がコチラを見ていた。


「そんな…」

「デュラハン……」


このダンジョンは未だに60階から先が攻略されてない。その理由の一つはこの魔物、デュラハンが強すぎるからだ。


:最初期の頃からファンだったから死んでほしくないけど、これは…もう無理だ

:ここに来てコイツかよ


しかもさっきの攻撃でケロベロスまで私たちに気づいてしまった。前にはデュラハン後ろにはケロベロスが向かって来ている。


「あーこれは無理…」

「……死体とか写したくないから配信終わるわね」


:うわぁぁぁぁ

:誰でもいいから助けてくれ

:いやだぁぁぁ


「まぁ、私にしては大分頑張ったし、天国に居るお父さんとお母さんに顔向けできるよね……」


配信ボタンを押そうとしたタイミングで再び地面が光り出した。光が収まり目を開けるとそこには狐の仮面をした黒い髪の男性?が立っていた。


「後が面倒くさいからこの力使いたくなかったのにふざけんなよ」


何かブツブツ呟いてる男性のことを明らかに警戒してるデュラハンは身体の底から震えるほどの魔力が込められてる闇魔法を男性に向けて放つ。


「お前たちはそれしかないのか?」


男性がつまらなそうに魔法を素手で掴み握り潰す。一歩踏み出すと姿が消え、いつの間にかデュラハンの背後にいた。右手には丸くて赤い水晶、魔物のコアを持っていた。


「こんなんじゃ腹の足しにもなりやしない」


自身の心臓を抜かれたデュラハンは慌てて振り返り反撃しようとするが間に合うわけもなく。男性がコア握りつぶした。これによりデュラハンは身体の端から崩れ去っていった。


続いて男性はその辺に転がってる小石を拾い上げ、ケロべロスに向かって物凄い速さで投擲した。真ん中のケロべロスの頭がはじけ飛び、ケロべロスがバランスを崩して転がる。


「石投げたりしたのなんて小学生ぶりだけど意外といけるもんだな」


そんなふざけたことを言いながらもう一度手ごろな石を拾い投げつける。今度は体の中心部分に直撃してコアを貫く。


「やっぱりこの辺の階層じゃ肩慣らしも出来ないな……おい怪我はないか?」

「………………」

「怪我無いならこのまま地上に向かうぞ」

「へぇ!?」


男性が気怠そうにこちらに話しかけてくる。あまりの現実味の無い光景に呆けてたら終わってた。


「あっあの助けてくれてありがとうございます!」

「「ありがとうございます」」

「あぁ、ただ今日見たことは秘密にしてくれると助かる」


もちろん命の恩人にそんな不義理を働くわけない。今日のことが広まるのが嫌なら言わないべきだろう。何故か目を離せない何かがこの人にはある気がする。ふと普段配信してるカメラに目をやると赤く光ってた。そこには目で追えないほどのコメントが大量に流れていて同接数は過去最多の十万。デュラハンに攻撃されたとき以上に嫌な汗が出てくる。取り合えず、終了ボタンを押して配信を閉じる。


「すぅーあの配信切れてなくて死ぬほどバズってます」

「…………もしかしてさっきの戦闘が全部流れたってことか?」

「はい……申し訳ないです」


男性は天を見上げてから仮面の上から両手で抑えて頭を激しく振る。


「やっちまったぁぁ、また新たに黒歴史が出来ちゃったよ!小学校でも通知表に詰めが甘いってさんざん書かれてたのに」


この日ネットでは仮面の男というワードがトレンド一位になった。


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