ヌエオニ~Let's go home~

こうけん

第一章:熊地蔵

第1話 写真ーカコー

<ご注意! WARNING!>

 この作品は<フィクション>です。

 実在の人物・団体・事件・事故・怪談などには一切関係がありません。

 作中に登場する人物や地域の名称に類似性があろうと、現実とは一切関係ありません。

 あくまでホラーにカテゴライズされるフィクションとして割り切ってお楽しみください。

 この作品には、残酷模写・暴力模写・性模写が含まれています。

 共感性の高い人によっては義憤及び気分を害する恐れがあります。

 暴力行為が含まれていますが、現実での暴力を推奨するものではありません。

 危険物・銃器・違法薬物の模写があります。

 現実での犯罪行為に賛同及び推奨しているものではありません。

 動物愛護に反する多大な表現が含まれています。

 現実の動物に一切の危害は加えられておりません。

 実在の動物をモデルとした動物が登場します。

 ですが、国内シーンにおいて一〇〇%の熊は登場しません。

 この作品はあくまで<フィクション>故、現実と相反するシーンが多数ありますが、動物虐待を推奨しているわけではありません。

 建造物破壊及び人体欠損・臓器損壊の表現が多数含まれています。

 気分を害される恐れがありますが、如何なる悪影響を与えたとしても、作者及び掲載サイトに一切の責任はありません。


             *


龍太りゅうたはともかく美鶴みつるちゃん、元気にしているかしら?)

 城島虎真じょうじまとらみはファインダー越しに思う。

 アラスカの海岸にて二頭の雄々しき熊が争っている。

 打ち付ける波に負けることなく荒々しい声を上げている。

 足下にあるアザラシの死体を己の糧にせんと譲らない。

 どちらが先かの権利を訴えるなど、自然界で唱えるのは無意味。

 強いか、弱いか。

 強い者だけが糧にありつける普遍の掟。

 体躯は揃って同じ、爪も牙も互いに負けていない。

 人間がたった一つのパンを巡って争うように、熊もまたひとつの餌を巡って争っている。

 その様子を望遠レンズ越しに写真を撮り続ける。

 ショートヘアに切れ長の瞳、稟とした顔立ち。

 二〇代女性の名は城島虎真じょうじまとらみ

 動物や風景、自然の姿をファインダーに収める写真家であった。

 極寒用の衣服、その上から茂みに擬態するギリースーツをまとい、冷静な目でシャッターを切り続けている。

「あ~もう、もうちょっとキバリなさいよ!」

 一頭の熊が尻尾を巻いて離脱する。

 荒々しい顔立ちはどこに行ったのか、なんとも哀愁漂う顔である。

 勝利した熊は、追撃をしない。

 アザラシの死体の尾を掴めば、近くにある岩場まで引きずり運んでいく。

 岩場から二つの影が動く。

 現れたのは二匹の小熊だ。

「親子だったか、道理で強いわけだ」

 シャッターチャンスは逃さない。

 親子で仲良くアザラシの肉を貪る瞬間を写真に収めていく。

 骨のない腹から牙をたてては、肉を引き裂いた。

 腹に口を突き入れたため口周りは真っ赤になっている。

 貪られるアザラシが、一瞬だけ人間に重なった。

 ――過ぎ去った幻覚だ。

「そうね、そろそろ車に戻りましょう。餌にあぶれた個体がこっちに来るかもしれないしね」

 同行するガイドの忠告には素直に従うものだ。

 大丈夫と思った瞬間こそ、死に直結する。

 周囲を警戒して、別なる動物がいないのを確認すれば、ゆっくりと茂みから離れていく。

 無事、車まで戻れば、すぐさま撤収準備に入った。

「ふ~う」

 ガイドが運転する車が発進する。

 悪路であるが、その程度で酔う胆力はない。

 ギリースーツのせいで汗ばむも、肌に触れるエアコンが心地よかった。

「なかなかの実りね」

 撮影した写真をディスプレイ越しに確認する。

 アラスカに来て一ヶ月。

 撮影したい野生動物は粗方撮れた。

 北の次は南、チリの最南端に行くのも悪くないだろう。

「ん? ああ、この写真?」

 運転するガイドが流し目で聞いてきた。

 ディスプレイには、アラスカで撮影していない写真が映っている。

 廃屋にたむろする園児ほどの体躯を持つ小熊の群であった。

「日本、それも西の九州で撮影した熊の写真よ」

 当然、ガイドがありえないと驚いている。

 流石はガイド、国内だけでなく国外の生態をしっかり把握しているようだ。

「ええ、北の北海道にヒグマ、本州にはツキノワグマといるわ。けど九州にはどっちも本物のクマはいないの」

 本来ならね、声を冷たく落として返す。

「確かに日本、熊本って土地にクマはいるけど、あくまで観光マスコット。あれは熊の恐ろしさを知らないのが作った創作物よ」

 野生の熊の恐ろしさを知っているが故に。

 同じ熊のマスコットである夕張のマスコットの顔立ちを比較すればなおのこと。

 生活圏に野生の熊が出現する恐ろしさを知る者と知らない者の差が、はっきりと現れている。

 恐ろしさを知らないからこそ、熊がかわいそうだと言い切れる。

 ニュースで必ず出る常套句。

 ――熊に襲われた人間に命の別状はない。

 命は助かっているだろう。

 顔面粉砕骨折、指や足の欠損、片側眼球損失、などニュースで語られぬだけだ。

 抗議する側は、ただのエンターテイナー気取りの自己陶酔の無自覚倒錯者でしかない。

「ならどうして熊のいない土地に熊がいるのかって? そうね」

 カメラを操作すれば、病室の写真がディスプレイに写る。

 ベッドに身体を横にしながら、嬉しそうにはにかむ一〇代後半の少年と、片腕や頭部に包帯を巻いた一〇代少女の写真。

 少女は脇に松葉杖を携えていた。

「あ、男の方は弟、女の方は山で拾った子よ。ええ、ふたりとも熊(?)に襲われたのよ。それで命辛々どうにか助かったの」

 半年経とうと、記憶に焼き付いて離れない。

 ただ遠くから見ているだけしかできなかった。

 助けるために奔走した。

 手を伸ばそうと星を掴むようで掴めない。

 負傷しても生き残った姿にらしくもない涙を流してしまった。

「どうして熊のいない地方に熊がいたのか? そうね。自分が体験したこと、ふたりのことをまとめると長くなるけど、いいかしら?」

 街まで相応の距離がある。

 退屈しのぎとして格好の時間潰しだろう。

 ガイドは流し目だが頷いてくれた。

「発端は一枚の写真よ。私の師匠であり祖父が生前撮った一枚の写真なの」


    ――――――――――――――――


 はい、始まりました!

 前々から予告した通り、一〇〇%の熊は出ません!

 え? 冒頭の熊はなんだと?

 ん~む、ちょっと説明に齟齬があったようです。

 今回の九州が舞台。

 なので、野生の熊は元からいません。

 先に登場した熊は国外ですのでノーカンです!

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 しばしの間、お付き合いくださいませ。

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