第二話

♪キーンコーンカーンコーン♪


「はーい皆さん。今からホームルームを始めるから席に着いてー」


担任の声に大体の生徒が従う。

一部を除いては。


「キャハハハwマジでwww?お前の兄ちゃん琵琶湖

を背泳ぎで泳ぎきったのw?すげぇwww」


教室のロッカー前で騒いでいる、いかにもなギャルたち。その中心となっているのは実葉 粋(みのは すい)だ。

だいたいはグループとなって行動していて一人でいる所を見た事はない。

良くない噂を耳にするけど本当のところは誰も知らないらしい。


「ウチのばあちゃんも昔ヤンチャしてたらしくて、不良仲間たちと熊狩りに行ってたらしいんだよw」


ちょっと待て、さっきから話の内容が気になりすぎる...!


「こら!みんな待ってるよ!さっさと席に着いて!」


「んだよセンセー...ウチら抜きで始めちゃってくださいよ」


実葉はすかさず言い返す。


「じゃあ始めちゃうわね。今日はー......」


切り替え早すぎんだろ!


早逃は背もたれにぐったりと体重をかけた。


「本当に困っちゃう人たちですね...」


..........?


早逃はゆっくりと隣の席を見る。

そこには困り顔で頬に手を当てた新条が席に座って傍観していた。


..........?


「なんでここにいんの!?」


おかしい。昨日まではたかしが隣だったはず!

いったいどうなって......


早逃は担任の方に視線を向かわせた。

早逃は見てしまった。なんと担任の胸ポケットには札束が収まっていたのだった。


「何やってんの!?」


早逃は新条に視線を戻した。

すると彼女はテヘっとおちゃらけた顔をした。


「だろうな!」




――――

♪キーンコーンカーンコーン♪


「はぁ...やっと一限終わったよ...」


「どうしたんだよwそんなに疲れちゃってさー」


こいつは漢否 葵(あやび あおい)だ。

俺の幼なじみで幼稚園から高校までずっと同じだった。まぁ、親友だな。

親以外に唯一信頼できる男だ。


「いやー...ちょっとな...」


「んー...まぁこれでも食って元気出せよ!」


葵はポケットから可愛くラッピングされたクッキーを早逃に渡した。


「おっサンキューな。本当に女子力高いよなw」


「うっせー...ごめんちょっとトイレ行ってくるわ」


「おーけー」


葵は駆け足でトイレへと向かった。


「あっぶなーい...女子だってバレてないよね?」


漢否は胸を撫で下ろしひと息ついた。


ちゃんと食べてくれるかな?私の"愛"...

私が丹精込めて作った、私が早逃を思って作った...早逃だけのクッキー...


私は幼い頃から早逃といるからどんな人間かは分かる。だからこうして隠し続けている。

だってもし私が女だってバレたら早逃と一緒に入れなくなっちゃうから...

あーもうやめだ!こんな事は考えない!

早逃を待たせちゃってるから行かなきゃ!


漢否の後ろを新条が眺めていた。


「あんの女狐が...また私の早逃くんを...」


私には分かっている。葵、いや...あいつが女だって事を。

まな板だからバレないと思ったか。

私にはバレてるぞ!


「どうにかして"私"の早逃くんを取り返さなきゃ」


新条は歩みを進めた。その姿は女騎士と言ってもいいほどの勇敢さと華麗さが滲み出ていた。




――――

ふーん、早逃っちはあそこにいんのね...

いつメンのあの子もいるねぇ...

ちょっと仕掛けて来ようかな?


「ちょっとウチトイレ行ってくるわ」


「「おーけー」」



「ちょっとぶちかましちゃいますか!」


実葉はトイレ(早逃たちの方)へと向かいながらスマホの電源ボタンを押した。

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愛から逃げます 未熟者 @Kon11029

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