【アルディスフィーネ】―魔術至上主義の王国で、魔力無しの俺が欠陥王女と共に腐った国家に幕を引くまで― カクヨムコンテスト11【短編】
遠藤 肇
第一話 幕開け
王国の北方、辺境に位置する要塞。
そこを守るのは、
王国軍選りすぐりの精鋭魔術師たち。
その要塞は、通常の軍隊であれば
一歩も近づくことさえできない。
「――報告、侵入者一名。
魔力反応……、なし」
「反応がないだと? 機械の故障か、
……それとも
高台から監視していた魔術師が目を疑う。
要塞の正門を、一人の青年が悠然と歩いていた。
纏った黒い外套をなびかせ、
腰には漆黒の剣を下げている。
青年の名は、――アルディス。
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――要塞の正門をくぐると、
一人の魔術師が警告をしてくる。
「止まれ、貴様何者だ!
侵入者は殺して構わないと命じられている!
二度は言わんぞ!」
だが、無視をして進む。
「二度は言わんと、言ったからな!」
そう言って巨大な火球を放つ。
それは鉄も一瞬で溶かしてしまいそうな超高温。
だが、足を止める必要はない。
避けることも。
迫りくる巨大な火球に対し、
俺は右拳を振るった。
ドォォォォォン!
「ば、馬鹿な……。魔力の無い
驚愕した様子の魔術師。
たしかにこの体に、魔力は一切ない。
それでも、この体は魔術と対等に戦える。
さっきの魔術師が増援を呼んだようで、
次々に氷塊や、風の刃が放たれる。
だが、それらすべてを同じようにねじ伏せ、一歩ずつ敵陣の中心部へと歩みを進める。
「化け物め! 総員、最大火力で魔術を放て!」
恐怖に駆られたのであろう総勢ニ十人の
魔術師が、周囲を囲み一斉に魔術を放つ。
「死ね、魔術も使えぬ
その直後。その場で高く跳び上がり、
こちらに向って放たれた魔術を全て避ける。
次の瞬間。避けられた魔術同士が衝突し、
凄まじい爆発を起こす。
――ドォッ!!
爆風が止んで、着地する。
周りには、倒れた魔術師たちがいる。
魔術師たちは、目の前の俺を
信じられないという様子で見てくる。
そのうちの一人が問う。
「……ッこれだけ暴れて、一体何が目的だ」
その問いに対して、ただ一言だけ答える。
「…………復讐だ」
魔術師たちを制圧し、
静寂が訪れようとしたその時――。
「まったく。魔術師ともあろうものが、
背後から、そう男の声が聞こえる。
振り返ると、豪華な装飾に。
立派な白い軍用ローブを着た男が立っていた。
「私はこの要塞の指揮官――。
第一級魔術師、ハイル・フロストリッチ」
「貴様、何者だ?」
ハイルは泰然とした態度で言う。
「魔術を使えないはずの
「ストック式の
「……だがまぁ、貴様が何者であろうと関係ない。ここまで暴れたツケは払ってもらう」
「『圧倒的な力の差』を見せてやる、死ね」
そう言ってハイルは、
極めて鋭く成形した巨大な氷の魔術を放つ。
それを、さっきと同じように
避けようとするが、足が動かない。
足元に視線を向けると、
既に魔術で凍らされている。
氷を破壊してからでは避けきれない。
かといって、そのまま受ければ
ただでは済まないだろう。
面倒な真似を……。
「
ハイルは勝利を確信した様子で、
そう言い放った。
――その瞬間、
あの日の記憶がフラッシュバックする。
故郷は燃えていた。
すべてが『塵』となって崩れ落ちる光景。
その光景を目にしながら瓦礫の中で、
まだ幼かった俺は息を潜めていた。
目の前には、
故郷を滅ぼした張本人の『あの男』。
男は、俺が生き残っていることに気づき、ふと視線を向けてきた。
殺される。
そう覚悟して、男の目を睨んだ。
――だが。
男の目には、
殺意なんて宿っていなかった。
男は、『ただ、そこに
俺が生きていることも、目に宿る憎悪も。男にとっては何の影響も価値もないことなのだろう。
そして男は、そこに何も存在しなかったか
のように、静かに去っていった。
すぐ側まで迫った冷気で、
現実に引き戻される。
「……っ!」
――その瞬間、腰から剣を抜く。
パキャァァン!!
その剣を振るうと、
巨大な氷の魔術は粉々に砕け散る。
「あり得ない。
ハイルは、その事実を受け入れられないのか、驚愕した様子。
その隙に、凍らされた足元を力強く踏み氷を砕き、一瞬で距離を詰め、ハイルを前にして言う。
「たしかに。『圧倒的な力の差』は見せてもらった」
「ま……待ッ」
ハイルの言葉をかき消し。剣を振る。
「――
その漆黒の剣から光が溢れ、
その光が周囲を震わせる。
その一撃は、
もはや斬撃ではなく光の照射、
あるいは爆発の光そのものだった。
ドゴォォォン!!
要塞は崩れ、周囲の地形が荒れ果てた。
その光景を見て、完全に戦意を喪失した様子のハイルに歩み寄る。
「……三年前、王国軍が大規模侵攻を
行った村、プライスゼーレについて
知ってる事を答えろ」
俺は故郷の村について、一つだけ問う。
「知らない……、私が軍に入隊したのは
一年ほど前だ。侵攻があったことも、
そんな名前も聞いたことがない」
ハイルは放心した様子で、そう答えた。
要塞とハイルのプライドは
一撃で粉砕され、すべては一夜にして
崩れ去った。
剣を鞘に納めようとしたところ、
何の気なしに、刃に反射した自分に目が行く。
ふと自分の前髪を指でなぞった。
黒髪の中に一本、雪のように白い白髪が混じっていた。
「……ふん」
短く鼻を鳴らし、 後ろを振り返ることなく、あの男の待つ王都の方角へと歩き出した。
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