離脱率って何ぞや?
辰巳しずく
第1話
あ、ここ、絶対ラブコメ世界だ。じゃなきゃ薄い本。全然知らないけど。
突然の高熱から回復した私がそう思ったのは三つある。一つは前世の記憶を思い出したこと、詳細は省くが平々凡々な人生だった。
さて、もしもそれだけなら高熱のあまり脳がおかしくなったか? と疑っていたかもしれない。
けれど世の女性たちに注目してみよう。
やたら体にフィットした服。欲望の赴くままに触りたくなる爆乳と巨尻。歩くたびに胸はむちむちと動き、お尻はゆっさゆっさと揺れていく。
薄っぺらな体つきだったとしてもスカートは短く、開いた胸元をもって慎ましいふくらみをアピールしているのだ。
さすがに高齢なマダムたちは年相応だが、どうかこう叫ばせてほしい。
――作者さん、正直すぎるだろ!?
閑話休題。
とにかく二つ目の理由は以上の通りだが、三つ目の理由は今までと比べたらかなり異質だ。何故なら――
「おはよー」
冬休みが終わり、気だるい三学期。
暖房が効いていても隙間風で寒い教室に入ると、ざわりと動く気配を肌で感じる。
それは自然と集まる視線ではなく――
「おはよー、アンアン」
【注目度:70】
【好感度:初期値+5】
「はよー、Yeah?」
【注目度:78】
【好感度:初期値+3】
――頭上に浮かぶ数字のせいもあった。
声をかけてきた友人たちが足や腕を組んだとたん、数字はゲームのステータスのように変動していく。
【注目度:+3】
【好感度:+1】
ああ、はいはい。太ももがまぶしいのね。腕を組んだ結果、重く実った胸がぎゅうっと寄せられたのがいいのね。はぁ~、ほんとクソ。私の友達をオカズにすんなや。
そう、私にしか見えない頭上に浮かぶ数値こそが三つ目の理由、好感度メーター(仮)だ。
「Yeah。てか、今日も寒くてやばくない?」
「それな~」
「つーか、アン、厚着すぎじゃね?」
「うっせ、ほっとけ。私は“可愛い”よりも“楽”したいの」
やれやれ、と苦笑いしながら顔を見合わせる友人たち。
たしかにこの世界においては私の服装は可愛くない。ブレザーの下は裏起毛がバッチリなパーカーで、足は同じく裏起毛であたたかい黒タイツ。さらにマフラーで首元も冷やさないようにしている。
学校にもよるだろうが、前世であればオーケーだったコーデ。
けれど友人たちの反応が物語っているようにウケはよろしくないの。地味。女の自信を奪っている。健康的じゃない。ちょっと隠しすぎじゃない?
私の制服コーデを世間にさらしたら、きっとこんな声が相次ぐだろう。
理解はできる、できるよ? でも中指をおっ立てて言わせてほしい――うるせぇバーカ! 無理なものは無理なんだよ!女がみんなみんな、好んで股開くと思ったら大間違いだ!!
「あ、セリ様だー」
「おー、今日もばっちり決まってんじゃーん」
ふと友人たちが首を伸ばす。私もマフラーを外しながら振り返れば、スマホを片手に笑顔を振りまく同級生・久次米セリが教室に入ってきたところだった。
歩きながら脱ぐダッフルコートからあらわれるのはたわわな胸。引き締まったウエスト。スカート下からスラリと伸びる肉付きのいい美脚。男心をそそる体つきですね、分かります。
もちろん顔もパーフェクト。
黒いボブカットはさらりと若々しい白い肌をくすぐり、ほんのりと赤く染まった頬は愛らしい。だというのに唇はセクシーで、優し気な垂れ目もどこか甘く蠱惑的だ。
【注目度:92】
【好感度:+18】
頭上に浮かぶ数字も桁違い。はっきり言って性格だっていい。
誰にでも気さくに声をかけ、気がつけば皆の中心にいる。
だが私はクラスのマドンナ・久次米セリについて、一つ気がかりなことがある。それは――
【離脱率:89】
離脱率って何ぞや?
そうそう、今更だが私が頭上の数値を好感度メーター(仮)と呼ぶのはこの謎のパラメータのせいである。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます