第七巡 出るだけ
第37話 駆ける子供 神谷冬季
叔父に聞いた話です。
叔父が高校生の時、友人の家に泊まりに行った時のことだそうです。
子供の頃から彼の家には時々遊びに行っていたんだそうですが、その家で霊を見たことはなかったそうです。けど、なんかいつも気配が少しだけただよっていて。残り
だから、その原因がわかるかなって、泊まるのを楽しみにしていたそうです。
泊まったのは友人の家の二階。二階は南向きに三部屋並んでいて、北側が階段と廊下とトイレになっていた。で、友人の部屋は南西の端。
もう一人の友人と一緒に泊まりに行って、ジャンケンの結果、家の友人はいつもどおりベッドに寝て、床に叔父ともう一人が寝ることになったんだそうです。
西向きの窓際から、叔父、友人A、ベッドのBって順でね。
結局、一時過ぎまでしゃべっていて、何かが出るかもなんてことはすっかり忘れて寝ちゃったんだそうです。
けど、忘れたままではいられませんでした。幸か不幸かね。
おや? と。なんか、夢うつつに子供のはしゃぐ声と足音がする。
隣の家かな? と思ったら、それがバタバタバタっとこっちに向かって走ってくるように聞こえたわけです。まあ、当然、隣の家の中を駆け回っていたって、こっちにこられるはずはありませんね。
あれ? と次に思った時にはすぐ足下で足音が聞こえて。もう、この時には手遅れ。
次の瞬間には、叔父は踏まれていました。
直後にすぐ隣りで「ぐえっ」て聞こえて。隣りに布団敷いて寝てた友人Aも踏まれたそうです。
二人の上を、バタバタバタキャーーーーって、四、五人の子供が駆け抜けて行った。
友人Aはみぞおちにモロに入って、二人はしばらくうめいて転がっていたそうです。一人二人じゃなかったわけですからね、踏んだの。
驚いたことに、二人して痛がってうめいているのに、ベッドのBはぐーすかと寝ている。
痛みが一段落したところで、二人がかりで叩き起こしたそうです。
そうしたら「たまに隣のガキが夜中に騒ぐけど、ちょっとの間だろ」とか言って寝ぼけてて。どうも、 南西から東北に向かって駆け抜けて行ったみたいで。ベッドも少しその道にかかるはずなんですけど、障害物として避けられたらしいんですね。自分は毎日ここに寝てるんだからと言って、二人の話を信じてくれない。
壁を抜けて駆けて行ってドアも開けずにいなくなったんですから、やけに実体じみていたけど、もちろん生身の人間なわけがない。そうやって駆け抜けていくだけだから、気配が残っているだけでいつもは見えなかったんだなって、叔父は納得したそうです。
で、そっちは納得しましたけど、痛い目に遭いたかったわけじゃないですからね。部屋の主が一度も被害に遭ったことがないのに、一晩泊まりに来ただけの自分たちがさんざん踏まれたあげく、部屋の主が信じないっていうことが納得できなかった。
なので、叔父たちは、Bに次の日は床で寝てみろって厳命して帰ったんだそうです。でも、一晩たって聞いてみても、何もなかったという。
叔父もAもアザはできるわ痛みが残るわでさんざんだったので、そんなわけないだろって追及したら床に寝なかったと白状したので、今晩こそは床に寝ろ、でないと絶交だとか言ってやって。そうしたら、観念して、ちゃんと床で寝たんですね。友人Bさん。
で、次の日、報告してくれたそうです。
本当に出た。踏まれた。と。
前々日に二人が寝た場所の真ん中に布団を敷いて。
叔父がすねと腿、友人Aが腹。
その間に寝たので、しっかり踏まれたそうですよ。
急所を。
語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。
『百物語が終わるまで』
https://kakuyomu.jp/works/822139841307342761
の作中話は800字程度に縮小させました。よろしければ本作もお読みいただけますと幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます