第4話 劇 相川芳生(あいかわよしお)

 いい年したおじさんが混じってすいませんね。怪談のいいところは、古い話も多いから年の差がハンデにならないことですね。

 さて。もう何十年も前の話になるんですが、学校で、劇をやったんですよ。その後日談ね。

 クラスごとに発表したから、学年ごとの発表会だったのかなあ。中学だったか高校だったかもよく覚えてないけど、中学かな。

 私のクラスは、その年だったかその前の年だったかに自殺したとある有名人の一生っていうのを劇にしたんです。今思えば、ちょっと悪趣味だよね。まあ、昔のことだからね。当時は許されちゃったんでしょう。

 で、主役をやったのが、クラスで一番人気の男でね。

 他のクラスにもファンがいたし、そいつを出しておけば評価確実ってことで主役はすぐに決まって。主役が決まってからなんの劇をやるか決めたんだったよ、たしかね。ほかの配役は題材決めてから決めたのに。関係ないけど、私はいじめっ子の役でした。

 そうそう思い出した。自分のクラス以外のクラスを投票して、一位は全校発表会の学年代表になるんでしたよ。

 それで、その主役の男が、霊感あるって噂の奴で。そんなそぶり見せないけど、ホントらしくて。その劇は結局、題材が悪かったのか二位で一回しか発表しなかったんですけどね、学年発表会のあと、そいつが三日くらい休んだんです。

 あとで本人から聞いた奴によると、発表会のあと、夜、寝ようとしたら部屋の押し入れから物音が聞こえて、開けてみたら下の段に人が座っていたんだと。

 それが、劇をやった自殺した有名人で、開けた途端に目が合って、そしたら、にまあっと、笑ったって。

 実際のところ、いろいろ物を入れてあるから人がいられるスペースなんかないんだそうです。それがいつまで居座っていたのかとか、どう消えたのかとか、そういう細かいとこまでは伝わってこなかったんですけどね、そいつはそれから熱をだして、二晩高熱が続いたんだそうですよ。

 本人はそれらしいこと一切言わないんだが、まあ、よく知っている奴には話すんだろうね。それがどうにかして伝わってくるんだろうなあ。

 これまで、そういう噂の奴が何人かいたけど、そういう奴らって普段それらしいこと一切言わないんですよね。

 逆にあそこには何がいるあっちにはあんなのがいるとか時々口走る奴は、かえって嘘っぽかったりする。

 死亡事故があったばかりの場所とか、死人が出たばかりの家とかの話を出して、そこにいるかー? とか訊くと、いるって絶対言うんですよね、そういうのは。

 けど、なんとなくそれっぽい噂のある奴ってのは、話ふっても、いるともいないとも言わないんです。かえって、本当っぽいよね。

 死んだからって必ずこの世に残るもんじゃないんだろうし。あそこの家の死人はまだ家に残っているらしいなんて噂流されてうれしい家族もいないだろうし。

 本当に見えていたら、そういう配慮が必要だってこともよくわかっているんじゃないかと思うんだな。そのフォローもできないくせにいるいる言う奴の言うことが、どれだけ当てになるんだ? てよく思うんですよ。

 いや、羽生さんは本物だと思っていますよ。私も一人だけ、周りもそいつが本当に視えると思っていて、本人も否定しなくて、私でもこいつは視えるなって思える奴を直接知っています。今の話の奴じゃなくて。いろいろ家の相談とかも聞いていて、その流れで視える苦労も聞くようになったんですけどね。

まあ、でも、いい話は聞かなかったですね。

 とりあえず、本人が視えるって言っている奴から聞いた話じゃなくて、本当にうっかり視ちゃったとか巻き込まれちゃったと思える話をしていくつもりです。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


『百物語が終わるまで』

https://kakuyomu.jp/works/822139841307342761

の作中話は800字程度に縮小させました。よろしければ本作もお読みいただけますと幸いです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る