もうひとつの宇宙

てんてこマイスター

本編

それはあまりにも突然で珍妙な出来事だった。


「寿命の克服、永久機関の開発、時間移動技術の発展、これ以上ない技術進化を遂げた我々にとってさらなる進化を遂げるには、惑星エリュスティリア外生命体とのコンタクトが必要不可欠だったのです。」


目の前にはなんとも形容し難い、人間とは似ても似つかない生物が椅子に腰掛けている。


「つまり我々が生きるこの宇宙以外にも宇宙は複数存在しており、ひとつの宇宙に存在できる人間の数には限りがあると?」


「より正しく言い換えましたら、ひとつの宇宙に存在できる一定以上の知能を持つ知的生命体の数には限りがある。それが我々エリュスティリア人による研究結果です。」


さっきまで淹れたてだったコーヒーは口に合わなかったのか、一口啜ったきり手をつけていない。


「どうやって解明したのかね?」


「解明…というよりは無数にあった仮説の中の一つに当てはまったというだけです。いつまで経っても宇宙人と巡り会えないこと、些か疑問に思っていたでしょう?」


辺りを見渡して砂糖とミルクを探す。


「なぜ私のところへ?私は国のお偉いさんでも無ければ、今じゃNASAの研究員でもない。ただ一人で宇宙について調べ続けている、言ってしまえばただのオタクだ。」


「我々もまだあなた方の危険性を完全には理解できておりませんので、あなたが一番コンタクトを取るのに都合が良かったのです。」


「そもそも、人類の世界人口は戦後から爆発的に増え続けている。君たちの考えとは矛盾するのではないかね?」


「この宇宙に地球とよく似た惑星が一つだけ存在しておりましたが、ほんの数十年前に超新星爆発に巻き込まれて生物は死滅しております。おそらくその影響かと。」


ひと通り見渡したが、普段私一人で過ごしているこの研究所に私が使わないものがあるわけがない。


「とどのつまり、君たちが地球に来た目的は何なのかね?もう分かっているとは思うが、地球には君たちを進歩させるような技術も資源も存在しない。」


目の前の生物はコーヒーカップを手に取り、すっかり冷えたコーヒーを一気に飲み干す。


「ここ数年の研究とあなたとの会話で地球について大体のことがわかりました。最後に、我々の星では飲み物を提供する際は冷たい状態で出すのがマナーです。私たちは熱に弱いので。」

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