第5話 時は過ぎ行く

 思えば、あの鬼屋としきが初めて向き合い闘う初日です。


昨日まで会ったこともなかった小学生とホテルに居るのです。


不思議と違和感はありません、あたりまえのような気さえしていましたが

よく考えると、やっぱり不思議な気分になってきました。

私には彼女を守る義務があり保護者なのです。


 ホテルの部屋で仮眠しようとしましたが、すぐに起きなければならいというプレッシャーか環境の違いか疲れているのに、なかなか眠りにつけず

ようやくウトウトしだした時に私の携帯が音を立てました。


 電話は土井良憲君からでした時刻は21時、少しでも・・・

眠りたかった。


「カレーできたよ」


私は御礼を述べて

「今ホテルに居て動けないので持ってきてくれ」と

無理に頼みました。

頼みついでに、そうめんも頼みました。


気を利かした良憲君は、ご飯も持ってきてくれました。


彼は嫌な態度一つせずホテルの部屋まで、わざわざ料理を運んでくれました。


「朝が早いから」と押し問答の末、彼は代金を受け取ると早々に帰って行きました。


私は自分の身勝手が恥ずかしくなりました。

『あとでもっと御礼しないとだめだな』


カレーが入った温缶、ポットには濃いそうめん出汁、豆腐ハンバーグ10個コロッケ10個

きんぴら、切干大根、枝豆、それに豆腐とレンコンをミキサーにかけて片栗粉を加え炒めた擬似そぼろもありました。


これでキーマカレーにしてくださいとのこと、そうめん用のしょうが、生本わさび、味付刻み海苔にネギ、オリーブオイル一瓶が、ありました。


『まったく気を利かしてくれるなぁ・・』


21時45分、和華さんを起こしましたが声を掛けようが布団を剥ごうが

イビキをかいて寝ています、起こすのが、かわいそうになりました。


眠らず過ごし今に至っているのが見て取れます。


豆腐ハンバーグをキッチンで焼きカレーを温めているので台所に戻ると

和華さんが目をコスリながら起きてきました。


「いい匂い、食べたいですぅー・・・」


起きて、いきなりカレーを食べだすと早食いではないもののTVを見ながら

和華さん、結構、食べました。


「このカレー、ルウも手作りなんですよ」


「めっちゃ、おいしい・・・」


まだ寝ぼけているのか会話がまったくありません。


私もどさくさに豆腐ハンバーグやコロッケ、カレーを食べました。

『カワイイな、この娘は、いつもこんな事してるのかな・・・』


「してへんよ」


「ハイ」

あっ、やっぱり不思議な気分です。


 時間がないので冷蔵庫に食材をしまいながら尾形君を電話で呼びました。


もう22時30分です。


彼女はざっとシャワーを浴びてキャリーケースから取り出した小さなバックに入っていた着替えを取り出し寝室に向かいました。

 

 尾形君が到着して、まず彼の会社に空港から到着している荷物を取りに行き現場へ向かうことになりました。

移動の間、私はいくつか和華さんに疑問をぶつけました。


「和華さん、あの現場は危険な場所ですが尾形君のお父さんや作業員さんたちは大丈夫なんでしょうか」


「え?なに」


「ハイ、警戒心の薄い警備員や作業員たちの事が心配になりまして」


「あーソレね、大丈夫、みんなに御守り身につけてもらえば、

うちの父上が守護の法を使って守ってくださるの。

今、父上は熊野で祭壇の前にいて遠隔リモートでこっちに来る準備をしているわ、だから大丈夫。


現場で神楽を舞う時に下準備をして下さる作業員たちは善兵ぜんぺいとか

善神ぜんじんと呼ばれる神の下僕のような存在になるの。


私たちの意志が、みんなに乗り移って作業に集中することによって

悪魔たちからは作業員が光に見えて攻撃することはできなくなるわ」


「はー、そうなんですか・・・あのー今日、政一郎さんもいらっしゃるのですか」


「はい、肉体は置いてきますけど」


「はい・・・なるほど」


はじまった・・・


「善神さんたちは作業が終わると、ほとんど記憶が残らないようになっているの半分神様に操られているようなものね」


「俺、そういうの聞いたことあります」突然、尾形君が口を開いた。


「俺のかあさん、懇意にしてる神社があって何か祭りの時なんか作業してる人たちが、

みんなスゴイ働いて急ぎの作業が終わったあと

翌日、手伝いに来てた作業員、氏子衆も含めて

前の日の事、あんまり憶えてなかったって、きっと神様が乗り移ってたんじゃないかって話かあさんから聞いたことあります」


「そう・・そういうことなんですマルダおじさん」


「なるほど、ハイお見逸みそれいたしました」


「おみそ?なぁにソレ」


話すうちに車が会社に到着して空港から到着した荷物を確認することになりました。


時刻はもう23時を回っておりました。

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