第4話 愚かなる

 私は動揺しておりました、昨夜の事件から24時間、静華さんからは何も連絡がありませんでした。


普通に考えれば、ここで静華さんが現れると思っていたのに和華さんが緊急でいらっしゃったのです。


 そして冗談とも取れないシチュエーションで『愛しています』などと伝えられれば

静華さんにも何か大変なことがあって、

それも命に関わるような大変なことが知らないところであったのではないかと思うと

和華さんを問い詰めずには、いられない気持ちになりました。


もちろん一度も、会ったことのない女性であります。

深い関係でもないです。

いや・・・それは嘘になるかな・・・


でも何か・・・何かが違い、しっくりとくる感がありました。


立場としては、ずっと上の世界の方です。


しかし物怖じしない性格の私は怖いもの知らずの馬鹿である反面

人間の価値は収入や階級では無いという信念があるので有名人だろうが

部長や社長や会長だろうと引け目感じるということは、ありません。


そんな自分は身の程知らずにも静華さんが身近に感じて

親しみと好感も多大に持っています。

もう少しで

『一体何があったっ!』と我を忘れて大きな声を上げるところでした。


でも心を読める和華さんには既に聞こえていたようなのです。

後部座席で二人並んで座っていたので間違いありません。


「ごめんなさいマルダおじさん、言えないんです」


私は、うつむいて涙をポトポト落とす和華さんを見てハッと我に返りました。

和華さんは、まだ小学生の女の子でした。


『しまった俺は何をやってるんだ・・・』


あんまりしっかりしているので勘違いしていました・・・

私の失敗です。


「和華さん、静華さんは元気なのかい」


「ぐすっ、ハイ大丈夫だと思います」


「それじゃ本人と話せないかな・・・」


「近いうちに・・ぐすっ・・・来ます、その時、本人に、くわしく聞いて下さい」


「そっか、わかった、ごめんね」


『俺が泣かせちゃった?いや違うよな、もう泣いてたはずだ、あれぇーやっぱり静華さん何か大変なことになってるっぽいな』


「あーあー先生何やってるんすかぁー女の子泣かしちゃって」

尾形君が呆れてます。


「ううん、違うの尾形兄ちゃん、私、今まで、あんまり褒められたことがないの。

いつもみんなに、お前は跡取りなんだからしっかりしろって言われてばかりで

静華お姉様が大変良く出来ました、がんばったわねって言ってくれたのが嬉しくて泣いてるの・・・」


『確かに日本人は人に厳しい、褒めるってこと知らないもんなぁ

それにしても昔も今もアメとムチが効果あるようです』


 それを聞いて少し安心しました。


こんな女の子が嬉しくて泣くなんて私の想像など及ばないような苦労が彼女にあることを初めて実感しました。


「あっそっかー、なんだ、あれ、そっかそっかぁー」


私は何と言えばいいのかわからなくなって、そっかを連発しました。


頭悪いです・・・


そしてホテルに到着、尾形君には一度、休憩時間を取ってもらい、

私も作業開始まで少し休もうかと思いましたが知らない地で

和華さんを一人にするのが、かわいそうになって

部屋で一緒に休憩することにしました。


和華さんも一人で大丈夫だ、などとは言いませんでした。


「マルダぁー、ちょっと眠ってもい?」


「あ、はい、何時に起こします?」


「10時ぃ」


「あーそれだと、みんな待たせちゃいますよ」


「うん、いいの待たせましょう、それじゃ起こしてね、おやすみなさーい」


「はい、おやすみなさい」


和華さんは遠い熊野からいらっしゃっていて緊張もあったはずです、眠らずにいらっしゃったに違いありません。


それと、おそらく現場には夜11時到着になるのは予想できたので

尾形君に、その事を伝え集合時間は、そのまま10時にしておいて、

時間に合わせ警備員さんや作業員さんたちの差し入れや軽い夜食のために、ハンバーガーセットなどを大量に現場に配達してもらうようにとも付け加えました。


現場には尾形君のお父さんも監督として入ります。


作業員や警備の方々にも御守りを渡して身につけてもらうように

指示が出ていました。


 目覚ましを掛けて部屋のソファーで私も少し仮眠を取ります。


こうして私が気が付かぬうちに仲間が増えて

榊原一族、官僚の方々、銀行、病院、警察、消防、建築会社、空港関係者などのシンジケート


事件に関係した協力者、ご家族や私の友人も含めて輪が、さらに大きくなり気が付けば

かけがいのない人々の繋がりの中に私も参加していたのです。

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