第5章 ダークシンジケート

第1話 早朝の事件

 朝しつこく電話が鳴って起こされました。


表示を見ると銀行員の奥さんからでした。


 家の床下に井戸があって一度貼った御札を剥がして霊障がひどくなったと相談のあった人です。


眠い目をこすり電話に出ると、まるでスロー再生したような気味の悪い声で奥さんが呼びかけてきました。


「しーいきーーぃーすわぁんんんーたあーすけてうええーーーいーまぁーすううーぐううにぃーたあーすけてぅええー・・・ブツリ」


なんだと思いましたが急いで車に乗って家に行きました。


家の玄関は開けっ放しで恐る恐る中に入っていくと床が血でいっぱいです。


「えっ!」


居間の引き戸は開け放たれていて、そこに白目をむいた旦那さんと思われる男性が右手に包丁を持って立っていました。


旦那さんの衣服は返り血で真っ赤に染まっています。


応接テーブルの上には奥さんが寝ていて血を大量に流しており、首にはまだ別の包丁が突き刺さったままでした。


「あっ、奥さん!」


と叫んで、一歩前に足を出すとゴツンと何かを蹴飛ばしました。


足元には息子さんの胴体と切り離された頭が転がっていて白目を向いていました。


「うっわあ!」


驚いていると、その生首がゴロリと動いてこちらに向き直ると何かを言っています。


【あーざーじー・・・しゃく・・・・のーまんだぁー・・・】

お経でした。


前にも聞いたことのあるような・・・あっ、あのアパートだっ!


すると包丁を持った男性が怒鳴り出しました。


「しきーっ!みんなおまえのせいだぁーっ!」


旦那さんが、こちらに包丁を振り上げながら向かってきました。


「あっ・・・」


首のもげた息子さんの胴体から伸びる腕が私の足を掴んでいます。


『なんだ、どうなってる?・・・あ、殺られるうううっ』

そう思ったとき


―んぎゃぁあああああーーーっ!!


喉が痛いほどの叫び声を上げて私はベットの上で飛び跳ねました。


一瞬、訳がわかりません・・・

『えっ夢?だったか・・・なんだ、もう・・・』


事務所のベットの上でした時間は朝6時半。

ふと見ると先日、派手に割れた鏡にガッチリと貼ったはずの

『おふだ』が剥がれて床に落ちています・・・


 それを見たとき、どんよりと不安が胸の中で広がっていき

寒気とともに嫌な予感がしました。


『奥さんと、お子さんが本当に危ないかも知れない・・・』


 ざわざわと、ものすごい胸騒ぎがします。

『なんなんだ・・・胸がざわざわして・・・

なにか、すごく悪いことが起こる気がする・・・

何なんだコレは・・・こんなの初めてだ・・・』


 とにかく、じっとしていられなくなり

着替えもそこそこに

今度こそに急いで奥さんの家に向かいました。

途中で電話しました。

呼びますが、つながりません。


心の中で静華さんを呼びました。

『静華さん、この夢はなんですか、静華さん守ってください』


早朝で車も少なく無理に飛ばすと、そんなに時間かからずに

家に到着しました。


―ピンポーン


インターホンを鳴らすと、奥さんが出てきました。


「あ、シキさん・・・」


すると奥さんの脇から、お子さんが飛び出してきて走って外に出ました。


「大丈夫ですか?」

「・・・・・」

声をかけましたが奥さんは息子さんを追い掛け走り出しました。


玄関の中を見ると、包丁を持った旦那さんが奥から、

こっちに向かってきました。


「こらーぁー!てめぇシキーこらぁーっ!」


私は玄関を閉めて旦那さんが中から開けようとするのを

背中でドアを抑えながら通りを見てみると

奥さんとお子さんが怯えた様子でこちらを見ています。


「奥さん、この電話で、すぐに警察呼んでください」


―ドスンドスン!と旦那さんがドアを内側から開けようとしています。

私は奥さんに自分のスマホを渡しました。


すると背中の気配がなくなり裏口のドアが

―バンッと開く音がしました。


『裏口から来る』と思った私は、奥さんと息子さんを急いで車に乗せて移動しました。


バックミラー越しに見てみると家から出てきた旦那さんは包丁を振りかざして、こちらに何か叫んでいましたが、やがて目の前の歩道にある電柱に向かって斬りかかり

何度も、すねを打ち付けて電柱に蹴りを入れ出しました。


 もう気が狂ってるとしか思えませんでした。


 随分遅く感じましたが、やがてパトカーが何台も到着すると

四人がかりでサスマタなどを使い旦那さんを取り押さえて、それでも暴れるので、みんなで拘束帯を装着していました。


近隣の住人たちもパジャマ姿のまま遠巻きに事態を見守って大騒ぎになりました。


救急車が到着して警官とともに旦那さんは運ばれていきましたが明らかに大怪我していて電柱も地面も血だらけになっていました。


 夢は正夢になりました。

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