第13話 影歴史1
ためらいがちに西条先生は語りだしました。
「あなた方、戊辰戦争はご存知ですな。民谷くんは私に調べた結果を教えてくれました。
実は、あの時代ひどい混乱と残虐非道な行為が横行してましてな、
お城があって周辺は城下町として繁栄してましたが
一本道を奥に入れば
野盗に、かどわかし、非人扱いの者たちの住む裏町が当然ありました」
「ハイ」
「あのアパートのある川沿い周辺は、元々はただの原野で、ゴミ捨て場のような状態だったのですが城下町が繁栄するにつれてポツリポツリと貧しい者たちが日々の食い
少しずつ集まってバラック小屋を建てて今で言うホームレス集団のように、
いつの間にか部落が出来て勝手に原野を整地したり畑を作ったりして暮らしておりました」
「・・・」
「そのうち城下町で死人が出ると幕府も、いくばくかの金をやり
部落の者達に火葬場の管理を任せようという事になって、
その代わり周辺地域での生活と原野開拓も役人に
火葬場といっても粗末な台座に石を敷き詰め処理するものでしたが
当時は、ふいの
行き倒れや謎の病気で亡くなる人も多かったので
特に葬式代を支払う者が誰も居ない死体の処理に重宝されていたと
無乗庵に残る古文書に記録が残っております。
要は厄介な死体を運び込んで最低な焼却料で済ますことのできる
町人たちにとっては罪悪感もなく呪いや祟りの心配もない
安く済む死体処分場が出来たのです。
しかし部落の者たちにしてみれば住む場所や畑が確保でき
死体が身につけていた小物や刀など
独特な苦労は、あったものの粛々と役目をこなしておったそうです。
しかし段々と戦争が進むにつれ社会不安に伴った事件が頻発して
末端の人々は毎日いつどこで事件が起こってもおかしくない
危険と隣り合わせの生活。
やがて破れかぶれになった侍や浪人たちとのいざこざや
盗賊に成り下がる者たちが切り捨てた者、ひどい目に遭って
絶望し自害する者など様々
毎日のように死体が街に転がるようになり
困った町人たちが連日、昼夜問わず部落の火葬場周辺に勝手に死体を捨てるようになり
部落では、ずっと火葬の火が消えることが、なくなるほどになっておりました。
そのうち毎月、火葬代を決まった額、支払っていた幕府や町も戦争のどさくさに巻き込まれ
部落の管理も曖昧となり顔見知りだった役人達まで逃げたり殺されたりして
本格的に政府軍が乗り込んでくると死体の量は何倍にも増え
困った町人たちは次々、部落に死体を捨てていき、
しまいには大きな馬、犬、猫の
生ゴミなども捨てられるようになり
あの川沿いに死体の山がいくつも、いくつも連なり、
焼却も間に合わなくなって
火葬場の者たちも部落をすてて近隣の山に逃げ出す者たちが続出。
やがて腐りだした死体の匂いが風で運ばれ周辺のみならず隣町まで臭くて住めなくなる程のひどい有様だったそうです。
そして部落を中心に伝染病が流行りだし、当時の政府軍が事態を重く見て
軍隊も動員し街の豪商たちが集められ燃えるゴミや油、材木などをあつめさせ
人も畜生もまぜこぜに積み上げられた死体の山をそのまま焼却はじめましてな
そこで、ようやく部落に残った者たちにも政府軍から幾ばくかの賃金が支払われ
遅ればせながら病気や怪我、煙と闘い、火事を起こさぬよう
幾日もかけて人と畜生たちを
ただ、そこまでの間は手がまわらなかった遺体は、ただ穴に埋められているらしいのですが
川沿いに大きな穴を何個も掘り、ごちゃまぜになった死体をまとめて
埋め周辺を消毒したのだそうです。
ですから、あのアパート周辺の土地には
恐らく、その死体の遺骨が大量に何箇所にも渡って埋められたままになっているのです・・・
そうして私を訪ねてきた民谷くんは、そこまで話すと
『詳しいことは、このカバンの中に入ってるよ』
そう言ってカバンを残し、帰って行ったのです、わかりますかな、
おふたり・・・・」
聞く所によるとカバンの中にはノートが一冊と写真が30枚程度入っていたそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます