第一章 二つの神話、二つの運命
世界の神話は、大きく二つの系統に分けられる。
一つは「ローラシア型」と呼ばれる。創世から終末へと向かう時間軸を持ち、物語として語られる。北半球の先進的な地域で発達した。多くの場合、テキスト化されている。だから記録され、残りやすい。代表格はアブラハムの宗教——ユダヤ教、キリスト教、イスラム教だ。創世記で世界が始まり、最後の審判で歴史が閉じる。断定的に世界を終わらせられる存在があるため、終末論までセットで語られることが多い。
もう一つは「ゴンドワナ型」と呼ばれる。小さなお話の集合体として語られる。原始的な民族で語られることが多い。口から口へ伝えられ、祭りや儀式を通し、身体感覚や暦で伝わる。テキスト化されていることが少ないため、消えやすい。オーストラリア先住民のドリームタイム、アフリカ各地の祖霊信仰、アイヌのカムイ。終末論を持たない場合が多い。世界は「いつからか、ずっとある」。終わりもない。神々は物語の登場人物というより、山や川や動物に宿る力として感じられる。
この二つの系統が出会うとき、何が起きる? 実は、ローラシア型がゴンドワナ型を「乗っ取る」のだ。
ローラシア型は「物語」を武器にする。人は物語に引き付けられる。子供が素朴に「なぜ?」と問うとき、求められているのは物語だ。どんな存在が、どういうつもりで、こういう世界を作ったのか。または失敗して、こういう風になってしまったのか。答えると、子供はさらに「それはなぜ?」と続けて問うだろう。ローラシア型の神話は、それにも答えることができる。創造主がいて、創造主には意志があり、その意志には理由がある。芋づる式に、世界観全体が引き出されてくる。
たとえば、ケルトの人々がキリスト教と出会ったとき。「なぜ冬至に祭りをするのか」と問われて、「太陽が戻ってくるから」「昔からそうしているから」としか答えられない。「では、なぜ太陽は戻ってくるのか」と問われると、それ以上の答えがない。キリスト教は違う。「救い主が生まれた日だから」「なぜ救い主が必要なのか」「人間が罪を犯したから」「その罪とは何か」「創世記に書いてある」。どこまでも答えが続く。
ゴンドワナ型は「生活」で伝わる。祭りの手順、季節の感覚、身体の動き。言葉にしなくても伝わる——生活が続く限りは。しかし生活が変われば、消える。「なぜ?」と問われたとき、「昔からそうしている」としか答えられない。言葉にしにくいから、答えに窮する。子供は、納得しないだろう。また、ローラシア型神話にたやすく論破される親を見て、頼りなく思うかもしれない。
ここで一つの事実を確認しよう。
ゴンドワナ型神話を国家の正統神話として保持する先進国は、ほとんど存在しない。
オーストラリアにはアボリジニのドリームタイムがある。しかしこれは先住民の神話であり、国家の主流ではない。ニュージーランドのマオリ神話も同様だ。北米、南米、アフリカ——どこを見ても、ゴンドワナ型が国家の中心に座っている先進国は見当たらない。
なぜか。
文明は孤立していない地域で発展する。ジャレド・ダイアモンドが『銃・病原菌・鉄』で論じた通りだ。技術と知識の交流が、文明を育てる。東西に長いユーラシア大陸で農耕技術が広まり、都市が生まれ、文字が発明された。
しかし、交流は征服も呼び込む。
ゴンドワナ型神話は、ローラシア型を持つ文明と接触すると、乗っ取られやすい。物語を持たない側が、物語を持つ側に飲み込まれる。文明化の過程そのものが、ゴンドワナ型を駆逐する。
だから、「ゴンドワナ型を守りながら先進国になる」という道は、原理的に難しい。文明の恩恵を受けようとすれば交流が必要になり、交流すれば征服のリスクが高まる。
ヨーロッパを見てみよう。
ケルトの女神ブリギッドは、聖ブリジットになった。火と詩と鍛冶の女神は、キリスト教の聖人に名前を置き換えられた。祝日は残った。しかし「なぜこの日を祝うのか」と問われたとき、答えはキリスト教のものになっている。
ゲルマンの冬至祭は、クリスマスになった。家族が集まり、贈り物をし、常緑樹を飾る。中身は残っている。しかし、それを「なぜするのか」と問われたとき、答えはイエス・キリストの誕生になっている。
スラヴの神話は、ほぼ完全に消えた。記録すら乏しい。わずかに残った神名と断片的な祭祀から、かつて豊かな神話体系があったことが推測されるだけだ。
共通するのは、ローラシア型の器——キリスト教——にゴンドワナ型の中身が入れられたことだ。
器を持つ者が、名前を決める。
名前を決める者が、「なぜ?」に答える権利を持つ。そこに聖典があるから。
元の神話は、名前を失った。
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