第19話 公爵令息の独り言 平民女は絶対に許さないと決めました
俺はこのノルトハイム王国で王家に次いで地位の高いヨーク公爵家の嫡男フランツ・ヨークだ。
我が家は王国建国の時の王弟が建てた公爵家で以来一貫してこの国を守り支えてきた。
しかし、最近は我が家も少し凋落気味だ。
今の王妃は平民出身だが、本来は我が家から王妃が輩出されるはずだった。
そう、王太子の婚約者だった我が伯母が王太子から婚約破棄されたのだ。
なんでも平民に入れあげた王太子に対して我が伯母はその平民の女を虐めて虐待していたらしい。果ては殺そうとしてそれが露見して婚約破棄された上に王都追放されたのだとか。
激怒した我が祖父は伯母を勘当して、以来伯母の行方は不明らしい。
それから我が家の凋落は始まり、今は側妃を出したハウゼン侯爵家の方が力を持っているのが現状だった。
我が国には王子が二人いる。ハウゼン侯爵家の側妃エミーリアの息子の第一王子のディートリヒと平民出の王妃の息子の第二王子のヘンドリックだ。我が家はどちらにつくかはまだ決まっていなかった。
父としてはハウゼン侯爵家には頭を下げたくない。だから王妃側の第二王子につきたいが、王妃は伯母との因縁の間柄だ。だから第二王子派にもなりたくない。だからヨーク公爵家は中立を保っていた。
今年、王立魔術学園に入るに当たって父からは適当に距離を取るようにと言われていた。
その二人の王子は五年生と三年生にいた。
「魔術学園に入いって貴族の子弟と仲良くしてなんとしても我が公爵家の力を高めるのだ」
父からの名を受けて俺は日夜努力してきた。
この一年生には一番地位が高いのは俺だった。
一年A組には他には侯爵家の子弟もいず、伯爵家の者と子爵家の者がいるだけだった。
俺の婚約者のカサンドラも俺には協力的で早くも自分の派閥のグループを作り出していたし、クラスの過半は我が傘下となった。伯爵家六家に子爵家二十家と早々に我が公爵家の勢力の拡大に貢献したと俺は自画自賛していた。
そんな時だ。俺は不吉な噂を聞いたのだ。
何でも一年の平民の女が不届きにも貴族達に決闘を挑んで倒していると。
そして、急速に学園内での勢力を拡大しているとのことだった。
これは聞き捨てならない問題だ。
一年生の代表としては捨て置いて良い問題ではない。
しかし、我が家にとっては平民は鬼門だ。
伯母の二の舞になるわけには行かない。
ここは慎重に行動せねば。
そう俺が思っているときだ。
その平民女に男爵家のライナーがまず生け贄になり、次いで魔術自慢の子爵家のバッヘムまで犠牲になったと聞くと何か手を打たねばと俺が真剣に考え出したときだ。
俺の婚約者のカサンドラが平民女には釘を刺してくれたというのだ。さすが俺の婚約者だ。
「これでしばらくあの女も静かになりますわ」
「そうか、よくやってくれた」
さすが、今事業が乗りに乗っているボーゲン伯爵の娘だ。打つ手が早くて助かる。
俺は良いな事をしなくて良くてほっとした。
しかし、そんな時だ。
俺は側近のブルクハイトから聞き捨てならない報告を受けたのだ。
何でもその平民女がいる最下層の一年C組が打倒A組と書いたスローガンを学園の一般食堂にデカデカと掲げているというのだ。いくら何でも一般食堂に掲げるのはまずいだろう。
俺は側近共を引き連れて平民共に注意する為に赴いたのだ。
まさか平民共が逆らってくるなど思いもしなかった。
そして、なんの因果か俺様とその平民女が決闘する事になってしまったのだ。
こんなの父に知れたらまたなんと言って怒られるか知れた者では無かった。
やむを得ず、俺はその平民女の資料を集めた。
何でも平民女はアンハームとかいう辺境の地で熊や魔物と戦って生活していたらしい。
だから世間の常識が通用しないのだ。俺はそんな奴と戦うのか?
俺がうんざりした時だ。
「何をおっしゃっているのですか。若。そのような下賤の女は魔術師に任せなされ。丁度我が家に売り込んできた魔導公国出真のデニスにやらせればよろしいでしょう」
俺についてきた俺付きの侍従のハンスが提案してくれた。
それはそうだ。皆に聞くとわざわざ公爵家の人間が子爵家や男爵家の者のように自ら戦うなどあり得ないそうだ。俺は当然のごとくそのデニスにやらせることにしたのだ。
なのにだ。その平民女は代理人を立てた俺を腰抜けとけなしてくれたのだ。
俺がヨーナスやバッヘムよりも弱いと決めつけてくれた。俺は土魔術のフランツとして有名なのにヨーナスやバッヘムなどの輩と一緒くたにしてくれるな!
俺は完全に切れた。
「まあ、フランツ様、ここは抑えて」
「平民女には勝手に言わせておけば良いでしょう。デニスが確実に勝ちますから」
側近達はそう言ってくれたが、俺は腰抜けなんかじゃないぞ!
「フランツ様。大丈夫ですわ。デニス様は下手したらこの国随一の魔術師です。かの魔導公国の中でも指折りの魔術師だそうですから」
カサンドラが俺を落ち着かせようとして話してくれた。
カサンドラと話すと落ち着く。
生意気な平民女などとは偉い違いだ。
そのままカサンドラは王都に出来た新しい甘味処の話等をし出した。
そうだ。決闘のことなどデニスに任せて、俺はカサンドラと二人で別のことでも考えよう。
俺は生意気な平民女のことなど意識の外に追い出して俺はカサンドラと話し込んでしまったのだ。
カサンドラはあの生意気な平民女と比べて何て可愛いんだろう!
俺がそう思ったときだ。
「ギャーーーー!」
目の前が一瞬で真っ白になった。
体を凄まじい衝撃が走る。
俺は凄まじい量の電撃が体を貫いたのを知った。
俺は何が起こったのか判らぬまま気絶していた。
何があったのか理解したのは翌日だった。
あろうことか俺は平民女の雷撃の攻撃の余波に巻き込まれて、気絶していたのだ。
俺は第二訓練場の外にいたにもかかわらず、訓練場の防壁が平民女の攻撃に耐えられなかったらしい。
第二訓練場が倒壊したと聞いて、俺は目が点になった。
「それと第二訓練場の修復費用が公爵家に請求されて公爵様がお怒りです」
「な、なんだと、何故そのようなことになる! 攻撃したのは平民女だろうが」
「学園長がおっしゃるには元々決闘を申し込んだのがフランツ様で責任はヨーク公爵家にもあると」
「なんだと! そうなるのか」
「恒例ではそうなるそうでございます。何でも相手のアマーリアなる生徒は既に第一訓練場を授業中に破壊しているのだとか。学園長からはアマーリア嬢には2度と問題を起すなと2度も釘を刺したのに、今回の事態となったそうで、学園長も相当お怒りでした」
「それは俺とは関係ないだろう」
「まあそうなのですが、アマーリア嬢は高位貴族から申し込まれた決闘なので断り切れなかったと言い訳されたそうで、我が方から申し込んだのは皆さん見ていらっしゃったそうで、全責任は我が方にあるとなったそうです」
「な、なんだと、それは理不尽では無いか、せめて按分すべきだろう」
俺が言うと
「基本的に学園での按分は親族の身分や四散で決まります。我が公爵家の方がアマーリア嬢の実家よりも圧倒的に大きいので按分したところで払う金額はほとんど変りません」
ハンスの言うとおりだった。
俺はアマーリアに気絶させられるわ、その後父に延々と怒られるわ、決闘中によそ見して雷撃された間抜け公爵令息と一部生徒に噂されるわで本当に最悪だった。
それもこれも全てはあの平民女のせいだ。
俺は絶対に平民女を許さないと心に決めたのだ。
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ここまで読んで頂いて有難うございました
散々な目に逢った公爵令息ですが、彼の苦労はこれだけでは終わりません。
続きをご期待下さい
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