第18話 公爵家の代理人と戦いました

「まあ、良いわ。ヨーク公爵令息の代わりにそこの魔術師でも。

 でも、これでフランツ・ヨーク公爵令息はライナーやバッヘムより弱いのが確定したけれど、それで良いのね?」

 私はフランツの方を残念そうに見た。


「平民女、何を言ってくれるのよ。フランツ様はライナーやバッヘムよりも強いわよ!」

 婚約者のカサンドラがフランツを擁護してくれたけれど、私もこればかりは譲れない。

「そうだ。俺も子爵家や男爵家の令息には負けないぞ!」

 横からフランツも出てきたけれど……

「何を言っているのよ。男らしくないわよ。ライナーもバッヘムも勝てないと判っていても男らしく私と正々堂々と対戦したのよ」

 まあ、ライナーは駆け足で10歩歩いて攻撃してきたけれど……

「私に対して自ら決闘を申し込んでおきながら、勝てないと判ると私と対戦しないで代理の男を出してくるなんて、私の基準では最低の男だわ。

 というか、そう思うのは私だけじゃないわよ。それが平民の冒険者の常識よ。決闘を申し込みながら代理人なんて出してきたら、2度と冒険者界隈ででかい顔して歩けないわよ。本当に腰抜けよね」

 私はフランツを軽蔑した視線で見下してやったのだ。


「そうだ、そうだ!」

「アマーリアちゃんの言うとおりだ!」

「フランツは最低の腰抜け男だ!」

 平民の男軍団が私の味方をしてくれた。


「平民女、何を言うんだ。大貴族の俺等は代理を出すのが当然だろう」

「高位貴族が、自ら手を汚すことなんかあり得ないぞ!」

「そんなのお貴族様の論理でしょ。平民の論理は違うわよ。自ら出てこないなんてへっぴり腰の弱虫貴族以外の何物でもないわ」

 取り巻きの反論に私が言い放つと、


「そこの平民女。我が主をけなすのはやめてもらおう」

 デニスとか言う魔術師が前に出てきた。


「まあ、その、でかい面をしていられるのも我が輩と戦うまでだがな。負けて命乞いをするが良い」

 中年男は自信満々に私を見下してくれた。


「相当な自信があるのね。じゃあ、私も本気出して良いという事よね。お貴族様相手だと手加減するのが大変だったと思ったけれど、これで楽になったわ」

「ふんっ、そう言っていつまで余裕ぶっていられるかな。じきに実力差を実感して恐怖に打ち震えるが良い」

 私が笑うと魔術師も笑い返してくれた。


「さあて、お互いの視線がぶつかりました。ついに決闘開始です」

 ブックメーカー先輩がアナウンスしてくれる。


「位置について」

 審判の声に合わせて私達は背中合わせになった。

「小娘。私と対戦することになったことを後悔するが良い」

 しつこく中年男が言い出してくれたけれど、そういう事は私に勝ってから言ってほしい。

 まあ、本当の実力はいやが応にもすぐに判るだろう。


「一歩、二歩、三歩」

 審判がかけ声をかける。私達はそれに合わせて歩いた。

 今回はお母様以来の久々の大人との対戦だ。お母様には散々ボロボロにされたけれど、帝都の凄い魔術師はお母様くらいの力があるんだろうか? 私は対戦する前の高揚感にまみれていた。


「十歩!」

 そして、私は振り返った。

 また、仰々しい詠唱が始まるのか?

 私が構えたときだ。


「平民女、死ね!」

 デニスが叫んでくれた。

 それと同時に凄まじい量のウィンドカッターがデニスの手から私に向けて放たれたのだった。


「無詠唱魔術だ!」

「あの男無詠唱で魔術を放ったぞ」

 皆が目を見開いていた。



 ドカーーーーン!

 凄まじい攻撃が私を襲う。

 私は瞬時に障壁を前に展開して攻撃を耐えた。

「少しはやるのね」

 私はまだこの時は余裕だった。

 無詠唱で私を攻撃してきたのは最近では母以来だ。

 久しぶりに私はワクワクした。


「ま、まさか、我が輩の無詠唱魔術をあの一瞬で防ぐとは」

 デニスは目を見開いて驚いていた。


「じゃあ、次は私も無詠唱で行くわよ」

 私は久々に骨のある相手と戦えて嬉しかった。


 でも、何か足下が少し涼しかった。


「うん?」

 足下を見ると障壁で全て防いだはずが、学園の指定の体操着のスラックスの太ももの部分に切れ目が入っているんだけど……

 学園の指定の体操着は私の愛用の安いジャージに比べて20倍くらいの値段がする。それがスパッと切れていた……

 学園指定の体操着に切れ目が入っていたのだ!


「ギャーーーー!」

 私が悲鳴を上げた。


「ふんっ、平民女め。余裕の顔をしていたが、やはり我が輩の攻撃が効いたようじゃな」

 デニスはにやりと笑ってくれた。


 でも、私はそれどころではなかった。

 この体操着はやたら高かったのだ。

 それと私は昔からあまりお金に興味がなかったというかあんな辺境の地にいても使い道がなかったから執着していなかった。魔物を倒しても魔石を必死に集めたりしていなかったのだ。だから倒した魔物の量に比べて私が持っている魔石の量は極端に少なかった。

 そんな時にこの消費文化の中心の王都にやってきたのだ。

 いくら私が魔石を沢山持って来たと言っても限度があった。

 学園の学費は高かったし、制服や体操着もやたら高かった。魔石が大量に消費されてそろそろストックがなくなりつつあった。

 それなのに、今また体操着を買わないといけないなんて何てこと!

 このデニス何てことをしてくれたのよ!


「よくも私の体操着を傷つけてくれたわね」

「ふんっ、直に我が輩の魔術で貴様を全て素っ裸に剥いてやるわ」

 ニタリといやらしい笑みを浮かべた変態が何か言ってくれた。

 それでなくてもいらぬ出費に私は切れていたのだ。

 それに対して変態の一言が引導を渡してくれた。


「良くも良くもやってくれたわね!」

 私はその後ろで楽しそうに2人で他人ごと宜しく見ているフランツとカサンドラも視界に入れた。

 こうなったら私をこんな目に逢わせた主人もろとも責任は取らせてやる。

「くたばれ!」

 次の瞬間だ。私の怒りが雷に変わったのだ。


「ギャーーーー」

 電撃の直撃を受けた変態魔術師が次の瞬間絶叫した。

 その雷撃は変態魔術師を通り抜けてフランツを直撃した。

「「ギャーーーー」」

 フランツとカサンドラとその周りの取り巻き共も雷撃は巻き込んでいた。

 ふんっ、いちゃいちゃ訓練場でしているからよ。

 天罰が下ったのね!

 私は自分の行いを正当化した。


 周りの皆は唖然とそれを見ていた。


 しかし、次の瞬間だ。

 防御魔術で守られていた第二訓練場が大きく揺れたのだ。


「えっ?」

 私は嫌な予感がした。

 ひょっとしてやり過ぎた?


 ぐらりと第二訓練場が傾いた。

 そして大音響と共に第二訓練場が崩壊したのだった。

****************************************************

怒りのアマーリアの直撃をもろに受けてしまった第二訓練場まで壊れてしまいました。

果たしてアマーリアの運命は如何に?

フォロー、評価☆☆☆を★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾

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