結美がくれたもの~どん底の美結が起こす下剋上~
葛西末武
第1話 プロローグ
私の人生には色がない。華の中学校生活も煌びやかさはない。
日々の生活が淡々と続く。朝起きて、学校に行く。勉強して、給食を食べて、放課後には家に帰る。他の人との違いは、
「?」
頭にプリントを丸めたものが後ろから投げられた。振り返るとニタニタした笑いをしているのが、同じクラスの小川莉緒とその取り巻き達。
そう、クラスメイトからいじめを受けている。
きっかけはある男子からの告白だった。
「髙山美結さんのことが好きです。つ、付き合ってください。」
顔を真っ赤にして、告白したのは同級生の柴崎慧。
柴崎は顔もイケメンだし、勉強もトップレベル、運動もかなりできる。要するに女子からの人気が高い。そんな柴崎からの告白を、
「ごめんなさい。」
と断ったのだ。柴崎が嫌とか、そういう訳ではない。ただ、まだ誰かと恋愛関係になるつもりはなかったのだ。
ここで少しでも悩むような素振りでも見せれば多少は変わったのだろうが、余りにも即決しすぎた。
二人の誤算としては、このシーンを物陰から小川に見られていたこと。そして小川が柴崎 のことを憎からず思っていたということだろう。
その次の日には、「髙山美結は柴崎慧を酷い振り方をした悪女」としてクラスどころか学校中の噂になっていた。
終いには、
「美結って最近、調子乗ってない?ちょっと身の丈ってのを分からせてやらない?」
小川の一言で髙山へのいじめが決定した。
それからの生活は悲惨だった。男子のようなあからさまなものではない。陰湿なものばかりで、もしかしたら気のせいかもと思えるようなものである。
例えば、新しく買ったばかりの消しゴムがなくなったり、履いていた靴がいつもより汚れていたりするようなもの。気づけば、背後にはニヤニヤ笑う小川と取り巻きの姿があった。点と点が不気味に、そして真っ直ぐに繋がっていった。
「ただいまー。」
美結は家のドアを開け、帰宅する。鍵をポケットに戻し、二階に上がる。
帰宅を告げる言葉に返事はない。髙山家は母子家庭である。母は毎日夜遅くまで仕事と称して男と会っているので、面と向かって話す日はほとんどない。重い体を無理矢理に動かし、自室のベットに倒れ込む。
そんな境遇でも美結は負けない。
夢の中には、誰よりも味方になってくれる人がいるのだから。ゆっくりと瞼を閉じると、自分と瓜二つの人物が現れる。体型や身に付ける物は同じなのに、着こなし方が違うのか、雰囲気が大人っぽくてドキドキしてしまう。
「ねえ、結美。聞いてよーー。」
結美と名付けた相手に思いっきりダイブする。
「どうしたの?教えて。私は貴方だから全部知っているけど、美結の口から聞きたいな。」
「うん。」
優しく髪を撫で、抱きしめる結美。心の棘を取るように、「うん、うん。辛かったね。」と共感してくれる。
ゆっくりと、そして確実に結美に体重を預けていく。夢の中だと言うのに、眠りにつきたい欲望に駆られる。
「ねえ。結美。あと少し、あと少しだから、このまま――。」
既に手放したはずの意識を夢の中で再度失っていく。
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