「あれは優しい魔女だった」
おむすび
第1話 静かな日常
朝起きて、嘘の笑顔を作る。身支度を終えたら登校する。
友達と会って、一緒に歩く。
「そういえばアミちゃん、オカルト系の話ってイケる?」
「うーん、あまり詳しくは無いけど割と好きだよ」
「まじで?ビビりだと思ってたのに」
「ちょっとやめてよー」
「なんか、この国に魔女がいるんだって」
「まさか」
興味無い。
「なんか写真とかはないんだけど、目を光らせて空を飛ぶ女の子を見たんだって!」
「見間違いだよきっと」
「信じてよー!」
「あっおはよう!」
友達が誰かに挨拶をしてるのを見て自分もしようとした。けどできなかった。
「お、おはよう。」
「あれ、ココノちゃんっていつも隣に誰がいようと話してくれるのに……先に行っちゃった。」
「用事があったんじゃない?」
私のせいだよ。そんな言葉が出そうになってうそで隠す。
ココノは皆と仲がいい。人柄もよくみんなから信頼がある。
でも私は、話すことができなかった。
「生活委員とかやってるし忙しいのかなあ」
クラスが違うから友達と別れて教室に入る。
この時間には大体のクラスメイトはいる。
授業を受けて、部活をやって、帰る
そんな日常。
明日も明後日も、それを繰り返す。
次の日の朝、私は用事で早く出た。そして最悪な事態にココノと思いっきり目が合った。
「おはよう」
「お、おはよう……。」
意図的にココノが距離を置こうとする。
私もそれに合わせる。
一緒に歩いているのに1人の気分。いや一人でもこんな気分が悪くなることはない。
「なぁアミ、」
その言葉が、騒がしい朝の中で静かに響く。
「なに?」
「自分で人を救いたかったりしないか?」
何を言ってるんだろうか。
「募金の勧誘の何かみたいに言うね。」
「ごめん。でもアミなら手伝ってくれると思って……。アミにしか頼めないんだ。」
アミにしか頼めない。この言葉を私は信頼できなかった。
「もしいいなら今日の放課後、私の家に寄ってくれないか?」
何が嫌で気まずいやつの家に行かなきゃ行けないんだろう。
「それまでに考えておくよ」
そう行って、それぞれの教室に入った。
昨日より静かな、でもそれなりの人の騒がしさのあるクラスなのに、とても静かに思えた。
部活が終わっても夏の暑さが残る9月はまだ明るい。
アミにしか頼めないんだ。
そう言ったココノの顔を思い出す。
「……嘘つき」
そう思いながらも足はココノの家に向かった。
行ったのは3年前だけど、足はしっかり覚えてる。
気まずい理由は私にある。
中学生の時、ココノとは同じクラスで仲良くなった。
母にその話をしてあの子はギフテッドなんだと知った。
でも友達でありたいと思って必死に勉強して話に追いついていた。
中二の夏、ココノの家で勉強会をした。
その時ココノが持っていた高校の内容のワーク。
奥に見えた友達と遊ぶ予定でほとんど埋まったカレンダー。
きっとそれが諦めた理由だった。
努力を全て無駄にされた気がした。
すごいねと言ったら
仕組みがわかっていれば簡単だ、と言っていた。
その言葉が私にはナイフのように刺さった。
私のことを見下してるわけでも、自慢してる訳でもなくて、アイツは実際そうなのだ。
それが嫌で、自分より努力しないで自分よりすごいのが許せなくて。
距離を取って逃げた。
謝るつもりで家に向かった。
ピンポーンとチャイムがなったのだろうけど心臓の音で聞こえなかった。
何を話せばいいのか分からない。
何を言うべきか分からない。
辞典で調べられたらいいのに。
「来てくれたんだな」
「…来てって言ったのに無視するなんて、流石にしないよ。」
謝れ、謝れ。脳がそう言っているのに謝れない。
「入ってくれ」
3年ぶりにしっかり聞いたその声は昔と変わらず身長が少し伸びていた。
「お邪魔します。」
前と変わらぬモダンな落ち着いた部屋。
昔流行った私と見た映画のポスターは友達との写真へ変わっていた。
「親はいないの?」
「帰るのがかなり遅くなるって言ってたのだ。」
昔と変わらない変な喋り方。真面目なのかふざけてるのか分からない。
そんなことを考えるほど会話が弾まない。
「お、お茶取ってくるのだ。そこら辺座っといてくれ。」
静かな部屋にぽつんと残される。
昔はベッドに一緒に寝転んでゲームしたっけ。
あのころは必死に努力したら追いつけるのだと思ってた。
そんなことはなくて、天才は生まれた時から勝ち組だ。
机付近の床に座ろうとすると何かあるのに気づいた。
「……これ、誕プレで私があげたメモ帳。」
こっそり中を見ようとすると扉が開いた。
「ありゃ?誰だこいつ」
扉を開けたのはココノではなかった。中学生ぐらいの少年、服装がここら辺の人ではない。不法侵入?それとも弟?いや似ても似つかない。
「あーステイステイ、俺、怪しくない。
OK?understand?」
「いやNoだよ!」
我ながら鋭いツッコミを入れる
「あっ!勝手に入らないでくれ!」
いつもの声でココノに気づく。
「ねぇココノなにこの人!?」
「えーと説明するから!」
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「あれは優しい魔女だった」 おむすび @Odangotabeta
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