届かなったLINE

てつ

第1話 奪われたもの

大学生・佐伯優斗は、幼馴染の清原凛と高校1年の終わりから付き合っていた。

凛は清楚、控えめ、笑うと少し困ったように目を伏せる

――誰が見ても「大切にされる側」の女の子だった。


だが、大学入学と同時にすべてが変わった。


髪色は明るくなり、服は身体のラインを意識したものに。

SNSには知らない男たちとの写真。

そして何より、優斗からの連絡を避けるようになった。


理由を聞いても

「忙しい」

「今はムリ」

「だるい」

それだけ。


限界だった。


ある日の夕方、キャンパス裏のベンチ。

優斗は凛を呼び止めた。


「凛、逃げんな。ちゃんと話してくれ!」


凛は一瞬だけ視線を揺らした。

その横に、いつの間にか立っていた男――


蓮。


派手な髪、軽い笑み。

学内で「女を取っ替え引っ替えするチャラ男」として知られている存在。


「おー、彼氏くんかな?」

優斗の胸が冷えた。


「・・・なんで、こいつと一緒なんだ」


凛は唇を噛み、しばらく黙ってから、静かに言った。

「優斗、マジうざいんだけど・・・」


「意味わかんねえよ。俺、何かしたか?」


その瞬間、凛の表情が変わった。

泣きそうでも、怒ってもいない。

諦めきった顔だった。

「優斗はさ、私を“昔の凛”のままにしておきたかっただけっしょ」


「・・・は?」


凛は優斗になかば怒りをにじませながら言った。

「清楚で、何も知らなくて、幼馴染で、安心できる存在。

 でも大学に入って、世界が広がって・・・私、気づいたんだよねぇ」と言いつつ

凛は蓮の顔を、うっとりした目つきで見上げ、腕に触れた。


「優斗の隣にいる私は、息が詰まってたんよね」

「大学生なのに優斗って・・・ダサい・・・」と言いながらフフフと笑った。


その仕草に、優斗の中で何かが音を立てて崩れた。


蓮は肩をすくめ、悪びれもせず言う。

「奪ったとかじゃないよ。凛が”俺を選んだ”だけなんだよね」


優斗は凛を見た。

もう、そこに幼馴染の面影はほとんど残っていなかった。


「・・・それが答えか」


凛は小さくうなずいた。

「そういうこと。じゃあね」

清原凛は蓮の腕に自分の手を絡ませ、うきうきとした表情で去って行った。


優斗は何も言わず、背を向けた。

胸の奥が焼けるように痛んだが、足は止めなかった。


この瞬間、優斗の“恋”は終わり、そして別の物語が始まるのだった。

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