農家の次男坊が農地に家を建てたらダンジョンだったがやたらめったら何かの卵が孵化して面倒ながらもプチプチ潰してたらレベルマックスになっていた
火猫
第1話 農地ダンジョンとベーコンの行方
「とォォォォりゃァァァァァァァ!」
ブモッ…
断末魔を残して牛の化け物が盛大に倒れ伏した。
「よしっ!今日はベーコンだなっ!…じゃねーわっ!」
ダンっと地面を殴りつけた。
バキリと地面がひび割れて、すぐに元に戻った。
「はぁ…」
思わず漏れたため息は、仕方ないと思う。
「俺…普通に結婚出来んのかな」
これは、とある農家の話である。
地元で結構有名な農場を営む家の次男坊、名は直人という。
彼は自分の家を建てるべく両親にお願いをした。
農地を転用して家を建てたい、と。
両親は難色を示したが、俺も引くわけにはいかなかった。
すでに20を超え、いまだに彼女もいない。
だが結婚願望はある。
結婚するのに持ち家あった方が有利だ、急にそう思い立ちました。(急な丁寧語)
お金を借りる際に自宅を担保しない、と言う条件を引き出して交渉成立した。
んで現在。
地下にあるボス部屋の中央で、今日もため息をついていた。
「……まさか、畑の下が異世界に繋がってるとはなあ」
家を建てる時、地震大国日本だからと地盤の処理にも気を配った。
今のところ独り身なので平屋にし、親には内緒で地下室を作った。
趣味の音楽や映画を鑑賞する為だった。
だが工事をする際の地質調査からおかしかった。
なんでも祠みたいなものが発見されたらしく、両親が相談を受けたのか出張って来て「処理したから大丈夫」と宣った。
何が大丈夫か知らないが、ゴーサインが出たので俺も手伝い、数日が過ぎた。
すると今度は地下室用の支柱を埋める際に、一本だけが何故かスルスルと吸い込まれるように無くなると言う事故が発生。
だが友人が経営する施工会社のひらめきで少しズラしたら問題無く工事が進んだ。
とまあ、他にも色々あったが無事に終わり、見た目はコンテナが並ぶ我が城が完成した。
で入居日、機材を入れる為に地下室を開けると扉が開かない。
無理矢理ひっぺがすと…白い泡状のようなもの塊が扉の隙間にびっしり付いていた。
なるほど、これのせいか…と幼少期に窓に張り付き孵化したカマキリを思い出しバーナーで焼く事にした。(こっちの地元では常識)
焼き終わった時になんか違和感があったが、気にせずに機材を入れた。
手始めに巨大なモニターを設置。
次にそれなり大きなPA機器を置くために床に補強用の台を置いた。
「ふう、とりあえず今日はここまでだな」
設置した台は30キロほどある金属製で、低音を響かせる為のものだ。
で翌日、扉は問題無く開き、スピーカーを設置しようと場所を確認する。
「ん?なんで斜めになってんだ?」
昨日置いた台の端あたりが盛り上がり斜めに傾斜していた。
「白い繭?カビのわけないしな。仕方ない」
バーナーで焼こうと思ったが場所が無理っぽいので台をズラし、スクレイパーで削る。
あらかじめ敷いてあったブルーシートの上に置くと、繭から何か出て来た。
「なんだこりゃ?」
見た目は扉の時と同じような白いものだったが、出て来たのはムカデのような生き物だった。
「うわっ、なんだよ」
こっちの地方ではハナヂと呼ばれる噛まれると腫れる虫に似ていたので慌てて待っていた配線を切るニッパで切った。
業務用ニッパは切れ味最高でスパスパ切れた。
だが切れたそばから黒ずんで行き消えた。
「えっ?何何?」
心配になり畑で野良仕事をしていた父親を捕まえて相談した。
「畑に家建てりゃ虫も湧くだろ。しかもウチの畑は変わってるからな。そんな事もある」
気にすんな、と言い放ちすぐに鍬を持って作業を続け始める。
「そんなもんか?」
納得はしていないが虫が出るのは事実なので受け入れるしかない。
そしてしばらくの間、やたら湧く、潰す、を繰り返した。
気持ち悪いが放置できない。
だがある日を境に虫は出なくなった。
すると脳内に響く声が聞こえてきた。
《レベル達成確認。通常モードに移行します》
「なんだって?」
疑問符しか浮かばないが、なんだかムズムズして虫が主に湧いて来ていた台を持ち上げた。
「軽っ?!」
以上に軽い台の下を見ると、穴が開いており目を凝らすと階段があった。
「なんだこりゃ?」
と言いながら階段を誘われるが如く降りて行った。
何故か明るい、洞窟のような場所に降りた。
その延長線上に、石造りの部屋と紫色に揺らめくゲートがある。
『グァォォォォ!』
突然現れたのは、つのが生えた二足歩行の牛の化け物だった。
「うわぁぁァァァァァァァ?!」
俺はあまりの驚きに、手にしていたニッパを投げつけてしまった。
『ギャボっ』
ドサリ。
「あ、あれ?」
眉間に刺さったニッパがボトリと落ちると、黒い霧になって化け物は消えた。
落ちたニッパの横には何故か肉の塊が残っていた。
《レベルマックスになりました》
直後にゲートが輝いて、ガバリと開いた。
ゲートの向こうは異世界だった。
あれから二か月が過ぎた。
たびたび階段を降りては牛の化け物と対峙し、退治する日々を送っている。
そして今日もそこから、背筋が寒くなるほど魔力の濃い視線がこちらを見ていた。
「来たわね、直人」
館の主、最強の魔女アウレリア。
かつて勇者と聖女――つまり直人の両親と共に魔王討伐を成し遂げた存在だ。
化け物を倒した日にその話と肉を両親に渡すと、そんな話を聞かされた。
そして肉は換金出来るが、宝石にした方が良いとアウレリアの家を教えてもらった。
ちなみに肉はベーコンにした…めちゃくちゃ美味かった。
両親も兄も絶賛していた。
アウレリアは魔女であり、同時に錬金術師でもあった。
直人が持ち込んだ魔物肉を、宝石へと変えてくれて本当に助かった。
なんせ家を建てた借金が数日で完済出来たからだ。
「今日は“黒角オーガ”の肉よね?あの条件で倒せば骨も残してあるでしょう?」
「はい。燻製用に切り分ける前のやつです」
「素晴らしいわ。今、王都ではその肉が幻の肉として競売にかけられているの」
異世界では魔物肉はすでに完全なブランド品だった。
味は言うまでもなく、魔力を帯びた肉は調理すると旨味が爆発する。
また思い出す。
直人が最初に作ったベーコン。
父は「懐かしい味だな」と言い、
母は「……これ、魔王軍幹部級ね」と呟いた。
兄は何も知らずに「うまっ」と言い、体の疲れも取れると喜んだ。
その兄が育てる野菜は、道の駅で飛ぶように売れている。
食べた老人がやたら元気で若々しくなるが、誰も魔力の存在に気づかない。
そう、俺が家を建ててから野菜が以上に早く生育し、しかも美味いと評判だ。
両親が言うには魔力と言うものが畑にばら撒かれているらしい。
普通は魔法が使えたりするそうだが。
現代日本では、魔力はただの栄養がいい食材でしかないのだ。
一方、ダンジョン内は魔力が濃すぎて野菜は一切まともに育たない。
試したが無理だった。(二本足で居なくなってしまう)
育つのは魔物だけ。
そしてそれは、すべて食材になる。
「やっぱり宝石だけか。現金は使えないもんね」
直人が受け取った袋の中には、拳大の宝石がごろごろ入っていた。
「ええ。現金は不可。貴方の世界でも、こちらの世界でも意味がないから」
そう言ってから、アウレリアはふと直人の魔力を見つめた。
「……あなた、本当に気づいていないのね」
「何がです?」
「そのゲート。あなたの魔力で維持されている。しかも――」
魔女の瞳が細くなる。
「勇者と聖女の魔力痕跡が、はっきり残っているわ」
直人は一瞬、言葉を失った。
「……両親、ですか」
「ええ。王都では戦死扱い。二人の英雄は死んだことになっている」
静かな怒りが、館の空気を揺らす。
「私は、王を信じていた。でも――」
アウレリアは直人を見る。
「英雄が生きているなら、なぜ隠したのか。
なぜ死者にしたのか」
それは、農地ダンジョンとは比較にならないほどの重い疑問だった。
だが直人は肩をすくめる。
「たぶんウチの親、畑仕事したかっただけですよ」
「……は?」
「野良仕事が一番平和だって。だから帰ってきたんじゃないかな」
魔女は数秒沈黙し、そして小さく笑った。
「だとしたら…本当に、あの二人らしいわ」
微笑む魔女は妖艶さ全開であった。
ゲートの向こうとこちら。
畑とダンジョン。
野菜と魔物肉。
直人の農地は、今日も静かに世界を繋いでいる。
兄は道の駅で野菜を売り、
両親は畑を耕し、
次男坊はダンジョンを管理しながら、異世界とベーコンを取引する。
誰も気づかない。
この農家が――
二つの世界の生命線だということを。
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