第12話 相棒という名前の居場所

相棒という名前の居場所


卒業が近づくにつれて、

夜は減った。


呼び出しも、

噂も、

いつの間にか遠ざかっていた。


我捨楽は、

解散したわけじゃない。


ただ、

必要なくなった。



それぞれ、

進路が決まり始める。


部活。

仕事。

彼女。


悠矢も、

例外じゃなかった。



ある放課後、

久しぶりに二人きりになった。


屋上。

風が強い。


フェンス越しに、

街が見える。



「もう、

 前に出ることも減るな」


悠矢が言う。


愁也は、

頷いた。


「十分だろ」



しばらく沈黙。


高校に入った頃と、

同じ距離感。


だが、

中身は全然違う。



悠矢が、

ぽつりと言う。


「俺さ」


「お前いなかったら、

 多分、どっかで終わってた」



愁也は、

すぐには答えなかった。


フェンスを掴み、

遠くを見る。


「……俺もだ」



それだけ。


でも、

それで全部だった。



相棒って、

何なんだろう。


毎日会うことじゃない。

同じ道を歩くことでもない。



戻れる場所があること。


それだけでいい。



愁也は、

これからも静かだろう。


悠矢は、

これからも前に出るだろう。


でも、

背中の感覚は、

一生消えない。



この章を、

未来の彼女は、

静かに閉じる。


そして思う。


「友情って、

 恋よりも深いことがあるんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る