第二部 中部地方編
第1話 宴会をしました。
美濃の国を統治することとなった信長様は、
稲葉山城を柴田勝家を城主として任せ、
尾張、信長様の御屋敷へと戻ってきた。
今宵は、大勝利の祝宴である。
宴会かぁ。
何か芸をしないといけない雰囲気だよなぁ。
僕はパソコンとゲームはできるけど宴会芸は……
あ、そうだ。あれをやるか。
着物を脱いで、久々に仕事着のワイシャツを着た。
「わはぁぁはははははぁ!!美濃の働き、見事じゃったぞ田中ぁ!!」
信長様は酒を片手に上機嫌だ。
「さすがじゃ!ようやったがや!!」
「はい、ありがたき幸せです」
(こんな感じでいいのかな)
「まあ固いこと言うなぁ!
さぁ飲めぇ!飲める口だでなぁ!?」
「えー、まあ少しは」
(完全に歓迎会だこれ)
信長様がじろりと僕を見る。
「ところで田中よぉ……」
(来た……宴会芸フラグ)
「名前、変えてみんか?」
「えっ?改名ですか?」
「田中じゃ、どうにも迫力が足らんがやぁ。
武将の名にゃ聞こえん」
「そうだがやぁ」
佐久間信盛が頷く。
「百姓の倅みたいな名だでなぁ」
(否定できない)
さらに信長様がにやりと笑う。
「それとよぉ……
側室は持たんのか?」
「そうですね。機会があれば」
「だぁかぁらぁ!」
信長様が酒を机に叩きつける。
「男も女も味わってこそ一人前の武将だでなぁ!!
どっちも知らんで戦ができるかぁ!」
「殿、さすがのお言葉だがや!」
木下藤吉郎(秀吉)がゲラゲラ笑う。
(この時代、両刀普通なんだよなぁ……)
両刀=男女どちらとも関係を持つこと
宴が本格的に始まる。
まずは信長様。
「舞うぞぉ……敦盛じゃ」
鼓が鳴り、
信長様が舞う。
「人間五十年~♪」
「おお……」
「さすが殿だで……」
場が静まり、
そして大喝采。
「殿ぉ!!しびれるがやぁ!!」
敦盛
【人間五十年 下天のうちを比ぶれば 夢幻のごとくなり
一度生を 滅せぬ者の 在るべきか】
人の世の50年など下天の1日しかあたらない。
あっけないものである。
次は木下藤吉郎。
「ほいじゃ、わしの番だでな!」
ひょっとこ面を被り、
腰をくねらせる。ひょっとこ踊り
「なんだそれぇ!!」
「ぎゃははははは!!」
「やめぇ藤吉郎ぉ!腹よじれるがや!!」
続いて前田犬千代。
「ほい、静かにせぇや」
槍を構え、
舞う。
鋭く、しなやかに。
「……ほぉ……」
「若いのに、見事だがや」
「惚れるでなぁ、あれは」
拍手が起きる。
柴田勝家が立ち上がる。
「芸だぁ?
わしはこれしかできんでな」
岩を掴み――
「おりゃあ!!」
バキィ!!
岩が砕けた。
「……」
「化けもんだがや……」
「拳が槍みたいだで……」
そして、
ついに僕の番。
田中、頑張れ。
一世一代の勝負だ。
「えーと……これから皆さんに
神隠しをお見せします」
「なんだなんだぁ?」
「怪しいでなぁ」
「ここにあるお金が、1・2・3」
僕はワイシャツの袖に金を入れる。
「はい、消えました」
……
…………
………………
しーーーーーーん
「……は?」
「どこ消えたんだで?」
「袖、丸見えだがや……」
「田中ぉ……
それで終わりかぁ……?」
藤吉郎が小声で言う。
「殿……
こやつ、戦は天才だが
芸は……」
前田犬千代が気まずそうに目を逸らす。
「まあ……
戦で働いたで、ええがや……」
勝家がフォローする。
(あ、これ完全に滑ったな)
そろそろ寝よう。
武将の笑いのツボ……
難しすぎる。
夜は、
静かに更けていった。
翌朝。
「田中ぉ!
名、決めたかぁ?」
「はい。
中田玄白と名乗ろうかと」
「ほぉ……」
「田中の逆かぁ?」
「玄白……
なんか賢そうだでな」
「悪くねぇがや!」
「よし!
今日からお前は――
中田玄白じゃ!!」
こうして僕は、
戦国の世で
新しい名を得た。
……次は、
宴会芸も、ちゃんと考えよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます