最強スローライフを邪魔する者はたとえ美少女でも容赦はしない
上原 友里@男装メガネっ子元帥
第1話 追放されたいDIY男子は一国一城のあるじになりたい
俺の名前は匠。異世界転生してはや三年。
前世は普通のサラリーマンだったが、休日はホームセンターのポイントカードが財布を圧迫するほどのDIYジャンキーだった。転生時に神様(声だけだったけど)に「スキル一つ選べ」と言われて、即答で「無限DIY」。
だって、戦闘スキルとかいらないじゃん。家建てて、家具作って、のんびり暮らすのが夢なんだから。結果、このスキルは予想以上にぶっ壊れだった。
木に触れば「はい、完璧な角材二十本どうぞ」。
石に触れば「はい、大理石風タイル一千枚」。
設計図頭に浮かべるだけで、ネジ一本なくともピタッと組み上がる。
しかも完成品は耐久無限。
俺が作った椅子に座ったら、もう二度と立ちたくなくなるレベル。人呼んで冒険者をダメにする便利屋。
そんな俺、冒険者パーティーの「雑用係」として重宝されてたはずだった。
剣士のガレンには伝説級の剣を。
魔法使いのミリアには魔力増幅杖を。
回復役のシエラには底なし回復ポーション瓶をプレゼントしまくり。
移動用の馬車も、野営テントも、全部俺製。
おかげでパーティーは無双連勝。ランキング急上昇。なのに。
ついにこの日が。
来てしまった。
「匠、お前はもうクビだ」
ガレンが唐突に宣言。
「戦闘に向いてないし、荷物になる」
「そうだよ~。いつも後ろでコツコツ何か作ってるだけじゃん。地味~」
ミリアがあくびしながら。
シエラに至っては、俺の顔なんて見ずに「うん、そうだね」と相づち。
……お前ら、今持ってる装備全部俺が作ったんだぞ?
あの剣、俺が三日徹夜で研いだんだぞ?
その杖、俺が魔石埋め込んで魔力回路引いたんだぞ?
馬車だって、衝撃吸収サスペンション俺が自作したんだぞ?
でも誰も気づかない。
派手なエフェクトが出ないスキルって、ほんと損だよな。
「すいません。じゃあ俺、抜けます」
表向き、こいつらの顔を立ててやるためにショックなふりはしてみせたけど本心は違う。
未練? は? ゼロだし?
むしろ「やっと解放された!」って心の中でガッツポーズ。
といいつつやはり長年すごした仲間との別れは寂し……ハハハハ……ウッフッウッ……
俺は街中の雑踏をとぼとぼと歩いた。うつむいたままの顔がぴくぴくする。
やっぱりひとりはとてもわびし……わび……
詫び石10000個レベルでハイィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!
ハイハイハイハイ!
俺は!
イッツ!
自由!
往来のど真ん中で腕を突き上げる。真昼の太陽がめちゃくちゃまぶしかった。
その足でギルドの受付に向かった。赤髪の受付嬢がさっそく俺を見つけて憐みのまなざしで指さした。
「あーっ、匠だ! パーティをクビになった匠!」
ホール中に響く声で言いやがった。こいつの名前はリリア。悪い奴じゃあないとは思うがデリカシーのデの字もない。
「人を指さすなって。失礼でしょ。いいよギルドも脱退するから。あと職安に紹介状書いて。失業保険もらうんで」
「珍しいよね冒険者失業保険って。誰もそんなめんどくさいことしたことないって。毎月まじめにかけてたの、匠くんだけだよ」
「……前世で経験済みなんで」
「何? ゼンセ?」
「何でもない」
という感じでサクサクと脱退手続きを済ませた。即不動産屋へ直行。
「辺境の森の土地、安いのない?」
店主が目を丸くする。
「見たところパーティに所属してらっしゃらないようですが、失礼ですが、お金あります?」
「ほんと失礼だな。まあないけど」
「じゃあ帰って」
「退職金(という名の手切れ金)がままあります! はいこれ源泉徴収票。あと職安の《こんにちわ仕事》で失業保険を1か月分もらう予定です」
不動産屋はぺらぺらと台帳をめくった。いろいろ見せてはくれるが微妙に高い。最後にやたら黄ばんだ紙を出してきた。なんだか変な染みがついている。
「ここは……さすがにダメですよね?」
「どこ?」
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