Porter's Journey
嵯峨もみじ
The woman journeys on today
木々が生い茂る森の中、二ツ頭を持った大型の四脚動物の群れ10数頭が首を下げ何かを舐めていた。よくよく見てみるとそれは地面に設けられた2本の鉄の塊、草食動物が植物で補えない鉄分をなめて補給しているようだが、しばらくすると1頭が何かを感じ取ったのか顔を上げる。耳をたて、周囲の音へ耳を澄ます。
木々の擦れる音……様々な動物の鳴き声……自然音そのものの中に混じって聞き慣れない音、いわゆる人工的な甲高い音が響き、それが近づいて着ていることに1頭が気がつくと鉄の塊から急いで離れる。それが連鎖的に群れへと伝わり鉄の塊の周りでたむろしていた四脚動物たちは一斉に森の中へと消えていく。
四脚動物がいなくなった後も甲高い音は近づき続けようやくその正体が見えてきた。
二本の鋼鉄の塊はどこまでも続き、その上を眩しいほどに光る前照灯で照らしながら
その先頭を突っ走る機関車の運転台には人影がひとつ見え、まだあどけなさの残っている青年のような女性が視線をラジオと車窓、そして時計に目をやりながらどこか焦っているような表情をしていた。
「弱ったなぁ……周波数は合ってるはずなんだけどラジオが全く入らない。門限までクボタにたどり着きたいんだけどちょーっとキビシイかなぁ」
運転台で少しほつれ、着こなされた作業着と使い古したゴーグルを身につけた彼女はアキといい、
余裕で到着できるだろうと余裕をこいていたのだが道中で食事の後にうたた寝をかました上、接触事故の煽りで少々立ち往生したりと予想よりも時間がかかり今に至っていた。
ようやく鬱蒼とした森を抜けて草原地帯に差し掛かったはいいものの、車窓は夕日に染められ薄ら橙色へと染まった草原へと姿を変えており、より一層アキを焦らせる原因となっていた。
「……ここら一体は夜になると奇妙な出来事が起こるって話もあるし……うぅ、早くつかないと」
同業者から聞いた話ではこの草原を夜間に走行していると突然機関車が急停止するらしい。その理由は様々でアキのような液体式の機関車であれば燃料が突然送られなくなって急停止したり、蒸気式であればシリンダーを動かすためにたくわえていた蒸気が一瞬にして無くなってしまい列車が停止していまうらしい。
列車が止まってしまえばどこからともなくヒトガタのバケモノたちが集まって来て中に乗っている乗組員ごと列車を食い散らかしていき、最後には何も残っておらずただただ線路だけが残されているのだそう。
そのバケモノはかつて人間だっただのやら、成仏できない人間が怨念となって形になった姿だの、暴走した防衛ロボットの成れの果てだのと様々な憶測や推測が飛んでいるが実際のところ正体を見たものはいない……らしい。
見るからに作り話と分かるような話であるが実際にこの線区内で緊急停車をしたとの話もあり、あながち噂話は間違いないのではあるが、バケモノのくだりは後付けで付け足された作り話であろう。
「さ、流石に人喰いバケモノがお、襲ってくるワケがないよね。うん……そう、きっとそう」
するとその時、なにかが破裂したような音を立てたと同時に急激に列車の速度が低下していく。
「嘘……嘘嘘嘘嘘っ!」
アキが慌ててエンジンの再起動を試みる……がエンジンはかからず、プスンと音を立てて再び沈黙する。その間にもどんどんと速度は落ちていった。
「お願い!かかってかかってよ!」
何度かエンジンの再始動をするとアキの願いが届いたのかエンジンが回りだして煙突からは濛々と黒煙が上がる。エンジンが回り出したので落ちていた速度はどんどんと回復していく。
「な、なんとかなったぁ……よかったぁ……」
ほっとすると同時に、さっきまで何も反応しなかったラジオが雑音から華やかな音楽へ切り替わった。
『……引き続きお送りしますこちらはクボタポーターズラジオ、支局パーソナリティのステイサーよ。クボタ周辺で配送をしているポーターの皆様に連絡よ~。今日のクボタの門限は少し早まるから注意してね~今日はあの日だから
「やっと入ってくれた……色々とあったけどなんとかこの調子だと今日中にクボタのコロニーまで辿り着けそう」
ようやくクボタからの定期ラジオが入りほっと一息を吐く。クボタのコロニーの門限までは後少し、このままの速度で走行していけばなんとか門限内にたどり着ける予定であった。
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