密度極 The Pole of Density
ピト太郎
第1話|プロローグ
幼い頃、
俺は一度、死にかけたらしい。
らしい、というのは――
その時のことを、俺が何一つ覚えていないからだ。
家では、時々その話が出る。
高熱が続いただとか、
医者も首を傾げていただとか。
けれど、
話は決まって途中で打ち切られる。
「もう治ったんだからいいだろ」
「今は元気なんだから」
次の日、
俺は何事もなかったみたいに回復したらしい。
検査をしても異常は出ず、
それから体調を崩すこともなかった。
普通に育って、
普通に学校に通って、
普通に、今ここにいる。
……はずだった。
問題は、
覚えていないはずのその時のことを、
時々、思い出しそうになることだ。
夢とも違う。
記憶とも言い切れない。
白く滲んだ視界の奥で、
誰かが俺を覗き込んでいる。
同じくらいの歳の、
見知らぬ女の子。
顔も、声も、思い出せない。
それなのに、
その存在だけは、はっきりとそこにあった。
目が合った瞬間、
――ああ、大丈夫だ。
理由もなく、そう思った。
次に気づいた時、
俺はベッドの上で息をしていた。
それだけは、覚えている。
それ以来、
自分の中に、
言葉にしづらい感覚が残っている。
重さでも、痛みでもない。
ただ、
そこにあるのが当たり前みたいに、
ずっと一緒にいる感じだ。
理由は分からない。
ただ、
あの時――
俺は一人じゃなかった。
そして、
その“何か”は、
今も、俺の中にいる気がしている。
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