Log. 13 ――第三フェーズ、狂気のパレード。
けたたましく鳴り響く警報が、庁舎内の緊張を極限まで引き上げた。
『緊急入電。千代田区永田町一丁目、テーマパークにてD.D事件と思しき事案が発生。捜査員は直ちに現場へ急行してください。繰り返します――』
「蒼さん!」
「空、もう出られるか。……行くぞ」
二人が廊下へ飛び出すと、そこには嘲笑を浮かべた渡峯が立っていた。
「おや、お揃いで」
「……っ!」
葛城が刺すような視線を向けるが、伊勢はその腕を掴んで制する。
「空、行こう。時間の無駄だ」
「……はい」
「ふふふ。敵意剥き出しですね。では、また後ほど」
二人が去った後、背後から辻宮真琴が近づいた。
「現場に向かわなくていいんですか、渡峯さん」
「今から行きますよ、辻宮先生」
「そうですか。あ、その前にコーヒーでもいかがですか? 西館の自販機のやつですけど……ブラックがお好きでしたよね」
辻宮に差し出された紙コップを一瞥し、渡峯は冷たく突き放した。
「お気持ちだけ。私は缶コーヒーしか飲まないのでね」
「じゃあ、先生! これ僕が頂いてもいいですか?」
いつの間にか背後にいた花谷が、ひょいとコーヒーを受け取った。
渡峯は眉を潜め、「いつからそこにいたんだ」と問うが、花谷は「ついさっきですよ」と笑って受け流す。
渡峯は花谷に対して得体のしれないものを感じたが、表情に出さないよう花谷に「行くぞ」と告げた。
- - - - -
煌びやかな夢の国は、理性を失った人々の怒号が渦巻く地獄へと変貌していた。
「パーク内の人間を外に出すな! 出入り口を封鎖しろ!」
「主電源は落とした。日が沈む前にエリアを隔離するぞ!」
伊勢と花谷が連携し、パニックの封じ込めを開始する。
「花谷、スタッフにも手伝ってもらえ! 赤い帽子をかぶってるやつらだ」
「えっと……」
「チェック柄のズボンを履いて赤いベレー帽をかぶってる」
「は、はい!」
伊勢は花谷にレストランスタッフへの協力を仰ぐよう命じ、葛城を呼び寄せた。
「空、お前は『あいつ』と連絡を取って、外部干渉を阻止しろ」
「わかりました」
「あいつ……?」
花谷が不審げに問うが、伊勢は「後だ!」と一蹴して現場へ散った。
- - - - -
葛城は遮蔽物に身を隠し、暗号化通信を繋いだ。
「大至急――」
『さっきの会話、全部聞いてました。外は任せてください』
比与森の声には、かつての軽薄さはなく、並々ならぬ覚悟が宿っていた。
「わかった。危なくなったらすぐ手を引いて。何かあれば連絡を」
『了解』
- - - - -
一方、花谷は辻宮と合流し、声を潜めて状況を共有した。
「映画館に比べて約四倍の規模……間違いなく、これが『第三フェーズ』だ」
「完成目前なのね……。夜宵くんも協力してくれるわ。頼みたいことがあればいつもの所へ」
「了解。俺は渡峯を追う。おそらく二人も地下へ動くはずだ。理由をつけて合流する」
二人の会話は、周囲の混乱に紛れて消えていく。
主電源を切った園内は、熱中症の危険と狂気が隣り合わせの限界状態にあった。
- - - - -
地下通路へと続く重い鉄扉の前。
伊勢はそこに「見覚えのある顔」が教団の腕章を巻いて立っているのを見つけた。
「……あいつらまで加担してたか。悲しいねぇ」
「思ってもないことを」
「いいや、本気だ。警察という正義に属しながら、絶望した奴らを救えなかった。……導いたのは、俺たちの責任でもあるんだから」
葛城は冷徹に言い放った。
「感傷に浸って判断が鈍れば、また一年前の繰り返しです。……蒼さん、銃を握ったら余計なことは考えないで」
「ああ。……動いたな。やはり地下か」
渡峯の背中が闇に消える。
伊勢は「来なくてもいいんだぞ」と葛城に背を向けたが、彼女は迷わず一歩踏み出した。
「馬鹿言わないで」
「おお、怖い。……行くか」
その背後で、花谷が通信機を叩く。
「ターゲットが動いた。追跡を開始する」
救護班として残る辻宮は、三人の顔をそれぞれ思い浮かべ、祈るように呟いた。
「……みんな、どうか無事で」
次の更新予定
Ruler of Sail - 電子ドラッグ『D.D』特別捜査班 - Rilla. @rilla_kthb
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Ruler of Sail - 電子ドラッグ『D.D』特別捜査班 -の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます