第25章「モビリティが繋ぐ未来」


それから五年が経過した。


大陸には、平和が訪れていた。


魔導鉄道網は、全ての主要都市を結び、活発な交易が行われていた。


魔導車も、さらに普及し、今や誰もが手に入れられる価格になっていた。


そして、新しい技術も生まれていた。


「魔導飛行船」


空を飛ぶ乗り物。カイトとタケシが共同で開発したものだ。


これにより、大陸間の移動も可能になった。


カイトは、今や「異世界モビリティ公社」の会長として、技術開発を統括していた。


そして、妻のエリシアは、王国の外交大臣として、各国との関係強化に努めていた。


二人の間には、三歳になる息子、アリオスがいた。


ある日、カイトは公社の研修センターを訪れた。


そこでは、若い技術者たちが、新しい魔導車の設計を学んでいた。


「皆さん、こんにちは」


カイトが入ってくると、研修生たちが一斉に立ち上がった。


「カイト会長!」


「座ってください」


カイトは、笑顔で手を振った。


「今日は、皆さんに話したいことがあります」


カイトは、教壇に立った。


「技術者とは、何でしょうか?」


若い技術者の一人が、手を挙げた。


「新しいものを作る人です」


「そうですね。他には?」


別の技術者が答えた。


「人々の生活を豊かにする人です」


「その通り。そして、もう一つ大切なことがあります」


カイトは、窓の外を見た。


そこには、魔導車が走り、魔導列車が通り、空には魔導飛行船が飛んでいる。


「技術者には、責任があります。自分の作ったものが、どう使われるかを見届ける責任が」


カイトは、研修生たちを見た。


「技術は、善にも悪にも使えます。だからこそ、作った者が、最後まで責任を持つ必要があります」


研修生たちが、真剣な顔で聞いている。


「もし、あなたの技術が悪用されたら、どうしますか?」


一人の研修生が、恐る恐る手を挙げた。


「諦めずに、対策を考えます」


「正解です」


カイトは、頷いた。


「技術者は、諦めてはいけません。失敗しても、学ぶ。悪用されても、対策する。それを繰り返すことが、技術者の使命です」


カイトは、黒板に大きく書いた。


「技術は、人を幸せにするためにある」


「この言葉を、忘れないでください」


研修生たちが、深く頷いた。


その日の夜、カイトは自宅の書斎にいた。


机の上には、新しいプロジェクトの設計図が広げられている。


「次世代魔導車、エコ・フリーダム号」


環境に優しい、完全再生可能エネルギーで動く車。カイトの新しい挑戦だ。


扉がノックされた。


「入って」


エリシアが、お茶を持って入ってきた。


「まだ、仕事ですか?」


「ああ、ちょっとアイデアが浮かんでね」


カイトは、エリシアを見て微笑んだ。


エリシアは、カイトの隣に座った。


「あなたは、本当に技術が好きなのですね」


「ああ。技術で、人を幸せにできるから」


カイトは、設計図を見た。


「前世で、僕は過労死した。仕事に追われて、自分を見失っていた」


「でも、この世界では違います。僕は、本当にやりたいことをやっている。そして、それが人々の役に立っている」


カイトは、エリシアの手を握った。


「エリシア、君と出会えて、本当に良かった」


「私も、です」


二人は、静かに微笑み合った。


翌朝、カイトは息子のアリオスと共に、庭で遊んでいた。


アリオスは、小さな木製の車を転がしている。


「父さん、これ、動くの?」


「いいや、それは魔法で動かないよ。手で押すんだ」


「つまらない」


アリオスは、頬を膨らませた。


カイトは笑った。


「なら、一緒に魔導車のおもちゃを作ろうか」


「本当!?」


アリオスの目が輝いた。


「ああ。魔法陣の描き方を教えてあげる」


カイトとアリオスは、工房に向かった。


そこで、二人は一緒に小さな魔導カートを作り始めた。


木を切り、車輪を作り、魔法陣を刻む。


アリオスは、不器用ながらも一生懸命に作業した。


「できた!」


数時間後、小さな魔導カートが完成した。


カイトが、魔力を注ぐ。


カートが、ゆっくりと動き出した。


「動いた! 父さん、動いたよ!」


アリオスは、大喜びだった。


カイトは、息子の頭を撫でた。


「アリオス、ものを作るのは楽しいだろう?」


「うん!」


「でも、作ったものには、責任が伴うんだ。それを、忘れないでね」


「責任?」


「ああ。作ったものを、大切に使うこと。そして、人を傷つけるために使わないこと」


アリオスは、真剣な顔で頷いた。


「わかった、父さん」


カイトは、息子を抱きしめた。


次の世代に、技術の心が受け継がれていく。


それが、カイトの何よりの喜びだった。


その夜、カイトは屋上に上がった。


星空が、美しく広がっている。


この世界の星座は、地球とは違う。だが、それもまた美しい。


「考え事かい?」


振り向くと、タケシが立っていた。


「タケシさん。どうしたんですか?」


「君と話したくてね」


タケシは、カイトの隣に立った。


「カイト、私は君に感謝している」


「なぜですか?」


「君が、私を救ってくれたからだ。絶望から、希望へと」


タケシは、星空を見上げた。


「私は、長い間、自分を責め続けた。だが、君が教えてくれた。技術者の責任とは、諦めないことだと」


「タケシさんは、もう十分償いました」


「いいや、まだ足りない。だが、君のおかげで、前を向けるようになった」


タケシは、カイトを見た。


「これからも、一緒に技術を作り続けよう。人を幸せにする技術を」


「はい」


カイトは、力強く頷いた。


二人は、しばらく静かに星を見上げていた。


数ヶ月後、エコ・フリーダム号が完成した。


発表会には、大陸中から人々が集まった。


カイトが、演台に立った。


「皆さん、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」


カイトは、新型車を指差した。


「これが、次世代魔導車、エコ・フリーダム号です」


美しい流線型のボディ。そして、車体には植物をモチーフにした装飾が施されている。


「この車は、完全に再生可能な魔力で動きます。環境を汚しません。そして、誰でも手に入れられる価格です」


拍手が起こった。


「私は、これからも技術を作り続けます。ですが、忘れません。技術は、人のためにあると」


カイトの言葉が、会場に響いた。


「皆さん、一緒に未来を作りましょう。技術と、希望で」


大きな拍手が、鳴り止まなかった。


その夜、カイトは家族と共に夕食を取っていた。


エリシア、アリオス、そして最近生まれた娘のリリアナ(リリアの名前をもらった)。


幸せな食卓だった。


「父さん、僕も大きくなったら、技術者になる!」


アリオスが言った。


「そうか。なら、たくさん勉強しないとね」


「うん!」


カイトは、家族の顔を見回した。


前世では、仕事に追われて、家族を持つことすら考えられなかった。


だが、この世界では、仕事も家族も、両方手に入れた。


そして、何より、自分の技術が人々を幸せにしているという実感がある。


これが、本当の成功だ。


カイトは、心からそう思った。


物語は、カイトが老年を迎えた頃のシーンで幕を閉じる。


白髪混じりになったカイトは、公社の名誉会長として、若い技術者たちを見守っていた。


大陸には、今や何百という都市が魔導鉄道で結ばれている。


空には、無数の魔導飛行船が飛んでいる。


そして、海を越えて、他の大陸とも交流が始まっていた。


技術は、世界を繋いだ。


そして、人々は、かつてないほど豊かで平和な時代を生きていた。


カイトは、研修センターの窓から、外を眺めた。


魔導車が走り、人々が笑っている。


「これが、僕の夢だった」


カイトは、静かに呟いた。


技術で、世界を変える。


人を、幸せにする。


それが、技術者の使命。


そして、カイトはその使命を、次の世代に託した。


物語は、ここで終わる。


だが、技術者たちの挑戦は、永遠に続く。


新しい技術を作り、新しい問題を解決し、新しい未来を切り開く。


それが、モノづくりの心。


そして、それは――


希望という名の、終わりなき旅。


(了)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自動車メーカー異世界転生_鋼鉄の転生者 ―異世界を駆ける自動車革命― もしもノベリスト @moshimo_novelist

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ