不老不死者の魔剣使い 〜所有者の寿命を喰らう伝説の魔剣を手に入れたので嬉々として振るいまくっていたらいつの間にか狂気の英雄と呼ばれ始めた〜
夜方宵@MF文庫J/講ラ文庫で書籍発売中
第1話 純白のパンティ
名前も知らない森の中で、俺──
何故そんな無意味なことをしているのかって?
それはそもそも、俺の人生から意味などとうに消え去っているからだ。
女神とやらにこの世界に召喚されてから、はや数百年以上が過ぎ去った。曖昧なのは途中から数えるのをやめたせいである。
ある日、当時高二だった俺を含めて六人の日本人男女をなんか神聖っぼい謎空間に呼び出した女神様はこう言った。
「あなた達に世界を救う勇者になってほしいのです」と。
なんでも剣と魔法のファンタジーな世界で魔王が暴れているらしい。このままだと世界が危ういので討伐してほしいとのことだった。まあ、よくある異世界ファンタジー展開だ。
「あなた達には優れた魔法の才能と、神の恩恵たる権能が与えられます。それらの力を駆使して、どうか魔王を討ち倒してください。あ、ちなみに転移先の世界で生を終えたあかつきには召喚時の姿のまま召喚された時間に戻れますのでご安心くださいね」
しかも死んだら元の世界に戻れる安心設計。
それならばと俺を含めた六人は女神の願いに応じることにした。
そうして異世界転移を果たした俺達だったのだが……ここでもまた一つあるあるな展開が俺を待ち構えていた。
「生人、お前は勇者パーティーには不要だ」
速攻でパーティーから追放されてしまったのだ。
理由は単純。女神の手違いかなんなのか、俺には魔法の才能が皆無だったのだ。さらには戦闘に使える権能すらも具わっていなかった。そんなわけで役立たずの雑魚は早々に放流されてしまったのである。
まあ正直俺には物語の主人公みたいになりたい的な欲求もなかったし、第一死んだら元の世界に帰れるとはいえ痛いのとか殺されるのとか嫌だったし、だったら魔王討伐はほかの転移者達に任せておけばいいやと素直に追放を受け入れた。
そして実際にその選択は正解だった。彼ら五人の
そうして世界は平和を取り戻し、彼ら五人は世界を救った『五聖の勇者』としてこれ以上ないほどの地位と名声を得る一方で、俺はそんな彼らに陰からささやかな拍手を送った。別に羨ましいとかはなかった。むしろ俺抜きで魔王をやっつけてくれてありがとうと感謝をしたほどだ。
ともかく女神の願いは果たされた。あとはつつがなくこの世界での人生を終えて元の世界に帰るだけだ。
そう考える俺だったのだが……やがて、俺は自分自身の異常に気づくに至った。
何年経っても、まったく身体が変わらないのである。
召喚当時の俺は十七歳だ。まだ身体的成長の余地はあるはずなのに、ちっとも身体つきに変化がなかった。それどころか、十年以上経っても老いすら始まらなかったのだ。
加えて決定的な出来事が起きた。
ある雨の日、俺は足を滑らせて崖から落ちた。身体中を岩肌にぶつけながら数十メートル以上を転落した俺は、当然全身がぐちゃぐちゃになって死んだ……はずだった。
なのに気がついたときには、俺は崖下の地面に無傷の状態で寝転がっていたのである。
そこで俺はようやく認識した。
認識した途端、全容を理解した。
俺にも権能が与えられていたのだ。
その権能とは──『
いやなにしてくれとんねん! と、女神に向かってブチ切れたことをいまでも覚えている。
不老不死イコール死ねないってことじゃん、それってつまり元の世界に帰れないってことじゃん。
同じ転移者の勇者達が世界を救った英雄と称えられるままにやりたい放題人生を謳歌するその陰で、僕は絶望に明け暮れた。
やがて勇者達がみな異世界での人生を終えて元の世界に帰ってからも、変わらず俺は十七歳の姿のままだった。
俺も元の世界に帰りたかった。
だからあらゆる手段を試した。自分で自分の心臓を貫き、首を切り落とし、猛毒を呑んだ。けれど、どれほど致死性の傷を負おうが毒を呑もうがたちまち治癒してしまうのだ。ならばと水底に沈もうが、火口に身を投げようが、それもまた無駄だった。
考えつく限りの死に方を網羅して、それでも死ねないとわかったとき、すでに勇者達が死んでから百年以上は経っていたと思う。
その頃、俺の生はついに意味を喪失した。もう二度と元の世界には戻れないのだと諦めた途端、なにもかもがどうでもよくなり、考えることをやめることにした。
進みゆく時代を、変わりゆく世界を無関心に眺めながら、俺は数百年も無意味な放浪を続けている。
そんなわけで、特にやることもないので無意味な俺は無意味に森の中に横たわって無意味に空を眺めているというわけである。
「あーどっかに死ぬ方法ないかなー」
ああまた無意味なことを呟いてしまった。
何百年も探して見つからなかったんだ。そんな方法なんてあるわけがないってのによ。
不意に声をかけられたのは、そんな無意味な反省をしていたときだった。
「あ、あのっ。大丈夫ですか……?」
大の字に寝転がったまま、俺はその可憐な声がした方に目だけを向ける。
視界に入ったのは、開きかけの
「……白」
その中に覗く純白のパンティだった。
「きゃああああっ!!」
「ぐべっ」
細くしなやかなおみ足で思いきり顔面を踏みつけられる。ごぼっと骨が砕けるような音がしたが、当然のごとく俺の命に別状はなかった。
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