第4話 魔王の名前? 知らん

名前も知らない村を出発し、俺は目的地の丘に向かう。



モンスターがいたら倒すのか? スキルは使うのか? そもそも倒せるのか?


 ――知らん。


だが、モンスターは1匹も出てこなかった。

そして、あっさりと目的の石らしきものが見つかった。


石は青く光っていた。
俺はそれを手に取った瞬間、ステータス画面がひとりでに更新された。


 ――【次の目的:青い石を村へ運べ】
 

――【理由:知らん】


俺はため息をついた。
この世界、説明してくれる気、全くないらしい


丘の青い石を村に持ち帰る。その瞬間、村人たちは突然騒ぎ出した。


「さすがじゃ! 青い石を持ってくるとは!」

「いや、めっちゃ簡単でしたよ。モンスターもいないし」

これで魔王討伐ルートが開けるぞい!」

「は? なんで? 魔王ってなに?」


「よくは知らん」


そして、突如青い石が光輝き出した。


「まぶしっ! なにが起こってるんですか!?」

「知らんわい」


石が輝くと同時、ズシンズシンという巨大な足音が聞こえてきた。

森の奥からやたら強そうな気配がただよってくる。


「モンスターか!?」


「知らん」


気配はどんどん濃くなり、やがて巨大な影が姿を現す。
翼がある。角がある。首が多い。
……たぶん魔王だ。名前?知らん。


「知らんけど、とにかく行け」

と言わんばかりに、村人たちは俺を押し出す。
ステータス画面が自動で開き、何か呟いた。


――【次の目的:魔王討伐】


――【理由:知らん】


「ちょ、ちょっと待て!」
俺は必死に止めようとしたが、足は勝手に前に進む。


森の中、モンスター(魔王?)が翼を広げ、咆哮した。

俺は武器も魔法も持っていない。
スキル欄ももちろんこうだ。


剣術:知らん


魔法:知らん


戦闘経験:知らん


「知らんけど、どうにかなるだろ……」
と、心の中でつぶやいた瞬間、モンスターが勝手に自滅した。
岩にぶつかり、木に引っかかり、最後は自分の尻尾に巻き込まれて爆発した。


「……え?」


「知らんけど、倒れたな」


ステータス画面がひとりでに更新された。


――【魔王討伐:完了(理由:知らん)】


村へ帰ると、村人たちが大歓声で迎えてくれた。
女の子もにっこり笑う。


「本当に、どうして勝てたんですか?」


「知らん」


俺は空を見上げ、深呼吸した。



「……この世界、説明してくれる気、全くないな」


だが一つだけ分かった。
「知らん」でも、世界は勝手に回っているということだ。


――そして俺は、知らんうちに最強になっていた。

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