【第11話】変わらない二人。
夜が明けるまで、私たちは語り尽くした。
特別な話ばかりじゃない。
どうでもいい話もたくさんして、
笑って、少し黙って、
また話して——
それを繰り返した。
お互いの声のトーンを、表情を、頷き方を、
確かめ合うような、この時間が心地よくてたまらない。
カーテンの隙間から、
薄い朝の光が差し込む頃、
私たちはようやく仮眠を取った。
ほんの少し目を閉じただけなのに、
身体は驚くほど重い。
それでも、
不思議と満たされた朝だった。
三人で軽く朝食を取って、私は部活へ、
大地と京介はそれぞれの家へ帰っていく。
眠気でぼんやりする頭の中に、
昨日の会話の断片がキラキラと浮かぶ。
グラウンドに立つと、
いつもの音が耳に入る。
掛け声。
ボールがミットに収まる音。
土の匂い。
——ちゃんと、日常だ。
楽しかった余韻に背中を押されるように、
私は目の前のメニューを懸命にサポートする。
「会う」という大きな出来事を越えても、
世界は変わらずに回っている。
練習が終わり、家に帰ると、
ゴンゾーが回し車で遊ぶ音だけが、
部屋に響いている。
今朝まで人の気配と熱量で満たされていた部屋が、
やけに広く、静かで、少しだけ寂しく感じた。
その日の夜も京介から、
いつも通りのメールが届いた。
——————————————————
木村京介
件名:なし
帆波部活終わったかー?✨
俺は実家に帰ってすぐ
地元の友達と遊びきた(^^) ✌🏻★
今日は本当ありがとな★😍
俺のゴンゾーにも会えたし😚
ご飯も全部美味かった✌🏻
あと帆波はやっぱり初めて会った感じ
がせんかったな🤭★笑
——————————————————
画面の向こうの、いつも通りの距離。
会った後も「変わらない」そのスタンスが、
今の私にはどうしようもなく嬉しかった。
これまでと同じようにやり取りを続けながら。
けれど、昨日までとは違う、肌に触れた体温のような余韻だけが、静かに胸の奥に残っている。
——そして、
「次の休み、また会おう?」
どちらからともなく、
ごく自然にその約束が交わされた。
胸が、少しだけ強く、そして速く鳴る。
何かが始まったわけじゃない。
始まってほしいわけでもない。
何かが決定的に変わったとも、まだ言えない。
私たちは、
まだ「変わらない二人」のまま。
——どうか、このまま。
変わらないで。
心地よい共鳴に身を委ねながら、
私は、夜の静寂の中でそっと願った。
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