第4話 天才お嬢様とデート

「どした陸斗。そんな死にそうな顔して」


「いや、お前はこの状況を疑問に思わないのか?」


「思わない! むしろ、野郎と二人で昼飯を食うより断然いい!」


 昼休み、いつものように雄介と二人で食べていると天城と辻が混ざってきた。

 最初は断わろうかと思ったが、周囲の目もあるし何よりも雄介が美少女と昼飯が食えるなら喜んでって言ってこの状況になった。


「中村さんは面白い方なんですね」


「そんなことないっすよ。僕は普通だと思います」


「雄介……キャラが違くないか?」


 普段の雄介はもう少し落ち着いているのだが、今は完全に浮かれてしまっている。

 雄介の言う通り天城と辻という美少女二人と一緒に昼ご飯を食べられるんだから浮かれる気持ちも理解できるけど。

 朝の一件で俺はそれどころじゃなかった。


「陸斗様、なんだかげっそりしていませんか? もしかして体調不良でございますか?」


「あ、いや。そういうわけじゃないんだが」


 辻は俺の顔を見て心配そうに首をかしげていた。

 流石はメイドというだけあって周りが見えている。

 その気遣いはとてもありがたかったが、現状で俺の精神をがっつり削っているのは君のご主人様なんだ。


「確かに言われてみれば体調が優れなそうですね。しんどいようなら早退するのはいかがですか? 送って差し上げますよ?」


「大丈夫だ。というか、原因は少なからずお前にあると思うんだが?」


「あら? 何のことでしょうか。面白いことを言うんですね。宮野くんは」


 白々しく彼女は微笑んでいる。

 そんな俺たちの様子を雄介だけは事情を知らないためぽかんと見つめているのだった。


 ◇


「やっと終わった……」


 普段は授業に集中できているから時間が経つのはそれなりに早いはずなのに、今日はかなり長く感じた。

 それどころか授業の内容が全く頭に入ってこなかった。

 朝のキスの件で動揺しすぎだ。

 家に帰って心を落ち着けなければ。


「宮野くん、ちょっと付き合ってもらってもいいですか?」


「先に用件を聞いてもいいか?」


 帰ろうと鞄を担いで立ち上がると天城に話しかけられる。

 正直、今日はとっとと帰りたいんだけど周囲の目がある教室内で彼女を邪険に扱うことはできない。

 そんなことをしたら学校での立場が最悪なものになるだろう。


「恥ずかしいことを言わせないでください。デートのお誘いですよ」


「……は?」


「もう一度言わせるのですか? だから私は宮野くんを」


 天城はわざとらしく身体をくねくねさせ、顔を赤らめてから再び爆弾を投下しようとしている。

 完全にわざとだ。

 俺が困るのをわかっていてやっている。

 なんて卑劣な人間なんだ。


「わかったわかったからストップだ! それ以上先を言うな!?」


「ならよかったです。では参りましょうか。宮野くん」


 にこっと微笑んで天城は満足そうに教室を後にしていく。

 しぶしぶ俺もそのあとを続く。

 頼れる雄介はすでに部活に行って教室内にいないためもはや詰みであった。


「それで、何が目的だ?」


「目的だなんて。私はただあなたを惚れさせるために行動をおこしているだけですよ?」


「……で、俺をどこに連れていくつもりなんだよ」


 触れにくい話題が飛んできたため、すぐに話題を変える。

 惚れさせたら結婚するなんていわなければよかったな。

 完全に失敗した。


「カフェにでも行こうかと思いまして。二人でゆっくり話すにはいい場所ではないですか?」


「それはそうかもな。ちなみに、ここで俺が逃げたらどうする?」


「あはは。そんなことをされてしまったら私は明日、泣きながら教室で宮野くんの悪評を広めてしまうかもしれませんね」


「……なんて質が悪いんだ」


 的確に俺の嫌がることをしようとしてくる。

 この話を聞いて逃げるのは無しだとわかった。

 まあ、今日帰っても勉強に集中できなさそうだし、たまには誰かとカフェに行ってみるというのもありかもしれないな。


「普通ですよ。では、行きましょうか」


「わかったよ。行くよ」


 上機嫌な天城の隣を歩いて目的のカフェに向かう。

 俺は場所を知らないから案内してもらって向かっているのだが、なんだか雰囲気が怪しい。

 いや、怪しいというか周囲の建物がなんだか豪華絢爛になってる……


「つきました! ここです」


「……マジか」


 案内されたカフェはかなり高そうな場所だった。

 俺、お金足りるかな?

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