男飼(おんかい)

放射朗

第1話 男飼 0


 東の空が随分明るくなってきた。

 ついこの間までは残暑が厳しかったというのに、今は気温も下がり、深まり行く秋を感じる。

 ひとつ身震いをした。


 寒さの所為ばかりでもなかった。これから私がしなければならない事の重大さに今更ながら怖気づいてしまう。


「少し寒くなってきたね。着る物は持ってきた?」

 私の右に立つ亜由美が沈んだ声で聞いてきた。


「持ってきたわよ。大丈夫、一人じゃないんだしね。ジロもついてるから」

 座って、緩やかに尻尾を揺らしている茶色の中型犬の頭を撫でてやる。

 尻尾の揺れる速さが少し速くなった。


 村境の小道は目の前で急に下っている。人ひとりが歩けるだけの幅の細い踏み分け道だ。

 薄暗かったその道が、昇り始めた朝陽の中に浮きあがり、道の脇に茂る雑草が金色の光を反射した。


 思えば二週間前の自分はごく普通の何処にでもいる女の子だった。

 それなのに、このたったの二週間で人生そのものがまったく違ったものになってしまうなんて。


 少し残念。ごく普通の女の子の楽しみが失われてしまった事には寂しさを感じる。

 でもどうしようもない。


 これが出来るのは自分だけなのだ。私はこれをするために生まれてきたのだ。

 唇をかんだ。そして、こうなる発端を思い起こした。


 14日間でいろいろな事が起こったけど、一番印象に残ってるのはやはりあれの事だった。


 男飼デビューを見せてやる、と的屋のおばさんに連れてこられた場所は、男飼の敷地の地下にあるコントロールルームだった。


 そこの奥の壁は一面がモニターになっていた。そんな事より母さんに会わせて、という私の願いはあっさり無視された。


 壁のモニターにはすでに全裸にされた春香さんが映し出されていた。

 顔は上気しておりたくさん汗をかいている。興奮が高まっているのが手に取るようにわかった。

 生々しいうめき声もリアルに聞こえていた。


「ほら、このオンの股にぶら下がった棒を口に含みなさい」

 モニターの中で、先輩の姉さんがオンの首輪を引いて立たせながら春香さんに命令する。


 目を背けたいが好奇心の方が強かった。

 春香さんは操られたようにゆっくりひざまずき、眼の前のオンの肉の棒を左手の平に受け止めた。


 ずっしりした量感がモニター上からでも見て取れる。先端にてらてらと光る赤黒い固まりがぴくぴく、それ自体が生き物みたいにうごめいていた。


 春香さんは大きく口を開けて、その紫色の先端を含んだ。


 大きく開けなければ口の中には到底入らないくらいの物だった。

 苦しそうにしている春香さんの声が響く。うーうーという声は棒を口に含んで動く春香さんの頭の動きに連動していた。


「かなり大きくなってきたわね。そろそろいい頃かな」

 先輩の姉さんが、モニター上には映っていない別の姉さんに話しかけた。

 オンはというと、恐怖の表情が薄れて弛緩した顔をしていた。


「いいわ、そこで思いきり噛み千切りなさい。春香、力一杯噛むのよ」

 え、どういう事、そんな事をしたらオンが死んでしまうじゃないの。


 私の気持ちとは関係なく、春香さんは言われるままに顎に力を入れたようだ。

 大きな悲鳴と噴き出す赤い液体。

 春香さんの顔は赤く塗りたくられ、口から赤い紐のような細長い管を何本も垂らしていた。


「いいわよ、次は玉も噛みきるのよ」

 見ていられない。ぎゃあぎゃあ喚くオンの恐怖の表情。

 それに、あんなに優しかった春香さんの血塗られた鬼のような顔が……。



 思い出してもぞっとする光景だった。

 でも、18歳になった姉さんたちは皆男飼デビューしなければならない決まりがあるのだ。


 近所の小春姉さんも、奈津子先輩も、そして母さんだって、同じ形相をしてオンのPを噛み切ったはずなのだ。


 この村の習慣というか掟なのだ。18歳になった人が男飼デビューする事は。



 二週間前に話を戻そう。


 15歳の、まだ何も知らない子供だった頃の私の話に


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