鑑定士ライザ:逆転の頂点
塩塚 和人
第1話 追放と発覚
ライザは静かにギルドの広間を歩いていた。
冒険者の声と笑い声が入り混じる中、彼女の心は沈んでいた。
「鑑定士ライザ、ここに集まってもらった」
ギルド長の低く響く声が、広間の喧騒を切り裂く。
彼女は顔を上げ、静かに頷いた。
「スキル鑑定は、戦闘において価値がない」
その言葉と共に、胸の奥がきりりと締め付けられた。
「攻撃力も魔法もなし、これでは冒険者として不適格だ」
周囲の冒険者たちの視線が、痛いほど彼女を刺す。
ライザは小さく息を吸った。
「……はい、分かっています」
口には出したものの、心は揺れていた。
このスキルが、ただの能力に見えるのか――。
広間の隅で、仲間だった者たちの顔がちらりと映った。
誰もが同情もせず、ただ無表情で彼女を見ていた。
「追放」という言葉が、彼女の胸に重くのしかかる。
ライザの手が、そっとスキルリストに触れた。
小さな文字で書かれた能力名――「鑑定」。
表向きは相手のステータスを見るだけ。
だが、この力の真の威力を誰も知らない。
彼女は思い出す。
初めてこのスキルを手にした日のことを。
モンスターの力を確かめ、味方の成長を測るために使った、
小さな冒険の喜びを――。
「君はこれ以上、ギルドに所属できない」
ギルド長の宣告が、確定の鐘のように響く。
ライザはうなずき、淡い涙をこらえた。
悔しさよりも、静かな決意が胸に芽生えていた。
「私は……戦わなくても、強くなれる」
そう心に誓う。
攻撃力がないなら、方法を変えればいい。
このスキルには、誰も知らない可能性がある。
広間を出ると、冷たい風が顔を打った。
街のざわめきが、まるで自分を拒むように感じられる。
だがライザは歩みを止めなかった。
新しい道を、己の力で切り開くために。
ふと、声が聞こえた。
「……あんた、面白い力を持ってそうだね」
振り向くと、剣士の青年が立っていた。
鋭い目つきだが、どこか純粋な光がある。
「私は……ライザ。鑑定士です」
名乗ると、青年は微かに笑った。
「俺はファルマ。冒険者だ。ちょっと試してみないか?」
その言葉に、ライザの心が小さく跳ねた。
ここでなら、ただの鑑定士では終わらない。
自分の力を試せる場所がある――そう直感した。
追放されても、世界はまだ自分を拒んでいない。
ライザは小さく頷き、静かに答えた。
「……ええ、お願いします」
その瞬間、彼女の心に新たな火が灯った。
誰も知らない、本当の力を示すための炎だ。
街を抜け、ダンジョンへの道が見えた。
風がざわめき、冒険の匂いが混ざる。
「鑑定」――それは単なる観察のスキルではない。
ステータスも、スキルも、運命さえ入れ替えられる力。
ライザは目を閉じ、力の感触を確かめる。
小さな手のひらの中で、未来が揺れているようだった。
そして決意した。
「ランキング二十万位から……頂点まで、上がってみせる」
静かに笑みが零れた。
それは悔しさでも恐怖でもない、
希望と覚悟の混ざった笑みだった。
ブルーフォール――まだ名前も知らない仲間たちと
共に歩む、新しい冒険が始まろうとしていた。
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