35分の記念日

芒雲 紘真

プロローグ

プロローグ

太陽が頂上に向かう直前。海の水面はキラキラと輝いていた。

自然のスポットライトが跳ねるように、魚が跳ねる。


「水族館だ!」

少女は嬉しそうに魚を指さして言った。


【人は覚えるから記憶を更新していく】



「ぶっぶー。あれは海のお魚でーす。」

母親らしき人物が子供をからかった。


「水族館だよ!だってお母さんがそう言ってたもん!」


「そんなこと言ったかなー?」

母親はいたずらな笑みを浮かべている。


【人は忘れることを利用して嘘をつく】


「ごめーん、おまたせ~。クレープ!!」


「お父さん、ありがとう!」


「おぉ~。ありがとう覚えたのか。

 えらいぞ~。翠。」


父親はそう褒めながら微笑んだ。

母親とはまた違った笑みだった。


「そういえば翠。そこにちーちーが来てたよ。」


「ちーちー?」


「この間、一緒に見たじゃんか。

 ほら、ハムスターの!」


「ちーちー?分かんない!」


「ありゃ。」


【人は覚えているからそれを超えるものを求める】



「じゃあもう1回見たらいいんじゃない?

 お父さんと翠と3人で!」


「そうだね。3人で。」


「やった~。ちーちー楽しみ!」


「この間もそれ言ってたけどな~」


「まあいいじゃん。何回でも。」


「そうだね、何回でも。」


【人は忘れるからこそ新しい思い出を作ることができる】

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