ゐびすシール探訪⑷

ログ:コミュニティアプリDeathcord>暇人たちの寄り合い所>チャンネル名【#ぐつぐつオババについての考察】


フー太郎:

社畜さん、レポートがパタッと止まっちゃったね。やっぱり出張中の仕事が長引いてるのかな。それともまた何かハプニングでもあった?


キヨシ:

持ってるからなああの人w


kanariablue:

何の仕事をしてるんですかね。名古屋のディープなエリアをあちこち回りながら、これだけマメに現場リポートを上げるバイタリティ……普通のサラリーマンとは思えない。


あきら:

で、どうする?さっき見つかった「下二桁が逆転してる番号」。誰が電話するの?


フー太郎:

そりゃあ、かけるのは確定だろ。ここまで材料が揃ってて「怖そうだからやめとこうぜ」なんてオカルト考察班の名が廃る。


キヨシ:

いつからオカルト考察班になったんだよ


Kanariablue:

確定なのはわかってるけど、じゃあ具体的に「誰が」するのよ。


耳耳耳:

順当にいけば、現場にいる社畜さんが一番妥当じゃないかな。


管理人:

でしょうね。もし電話が繋がって、向こうが「直接会って話がしたい」とか言い出したとしても、今名古屋の現地にいるのは社畜さんだけですから。


じゃがまる@ぶらり下車の旅:

犯人が名古屋周辺にいるのは疑いようがないものな。

俺らみたいに遠くから画面見てるだけの奴がかけても遠くていけませんてなったら話が広がらないもんね。


にょもる:

でも、そもそも本当に相手が出たとして、私たちは何を訊くつもりなんですか?「もしもし、シール貼ってるのあなたですか?」なんて、そんな直球なこと訊いても、まともに答えてもらえるとは思えません。


キヨシ:

「なんでこんな不気味なシールを街中にバラ撒いてるの?」とか。「ぐつぐつオババについて何か知ってるんですか?」とかさ。訊きたいことは山ほどあるだろ。


耳耳耳:

そもそも、そんな簡単に繋がるとは限らないのでは?さっきの「末尾56」の番号みたいに、最初から「使われておりません」っていうアナウンスが流れるだけのハズレ番号かもしれない。


あきら:

繋がった先がAIで「ゐびすシール・アンケートにご協力ください。お答えいただいた方にはおやつを差し上げます」的なアナウンスが流れるだけ、って可能性もあるよねw


フー太郎:

そしたら俺、「バナナはおやつに入りますか?」って質問するわw


あきら:

つまんねー。まあ、能書き垂れてるより試してみれば一発で分かるっしょ。


管理人:

皆さん、仮にこの番号が「本物」で、かつ生身の人間が出るものだとしても、おそらく何度もチャンスがあるわけではないと思うんです。

だから、かける前によく話し合って、いろいろと決めておいたほうがいいですよ。


にょもる:

管理人さん、どういうことですか?「何度もかけられない」って。


管理人:

電話がつながって人が出た場合を想像してみてください。向こうからしてみれば、苦労して隠した「本物の番号」にかけてきた相手が、ただの野次馬や冷やかしのネット民だったらどう思うでしょうか?


にょもる:

……私だったら、すごく嫌かも。すぐ切りたくなる。


管理人:

ですよね。面倒な相手、あるいは「資格のない相手」だと思われた瞬間に着信拒否されるかもしれないし、知らないふりをして二度と出なくなるかもしれない。チャンスを無駄にするわけにはいきません。


耳耳耳:

まあ、管理人の言いたいことは分かりますね。「なんでシール作ってるんですかー?SNSで話題なんで教えて下さいよー」なんて軽いノリで言っても、相手にされるはずがない。


あきら:

そんなの、まだ繋がってもいないのに管理人の憶測じゃない?もっとフランクな奴が適当に貼ってるだけかもしれないじゃん。


管理人:

憶測は大事ですよ、あきらさん。相手の考えを推しはかることは、意思疎通において不可欠なステップです。

もう一度よく考えてみてください。このシールを制作し、かつ特定の番号だけ数字を入れ替えて隠した相手の「目的」は何でしょうか?


あきら:

……世間のリアクションが知りたいとか?あるいは「ゐびす様」を有名にしたいっていう承認欲求……とか?


管理人:

承認欲求だけなら、今の状況で十分すぎるほど満たされているはずです。名古屋のあちこちに貼られ、まとめサイトでも話題になり、既に「人気者」ですから。

それでも、あえて容易には辿り着けない「正しい電話番号」を混ぜている。自分のことがバレるかもしれないリスクを抱えてなぜこんな回りくどいことをするのでしょうか。


耳耳耳:

だよね。ただ目立ちたいだけなら、全部のシールの番号を偽物にしておけばいい。


あきら:

目的って……他にあるっていうのかよ。


管理人:

シールには何と書いてありましたか?


管理人:

「教えてください」です。


にょもる:

ああ……なるほど。


管理人:

シールには最初から「目的」が書いてあるんです。つまり制作者は何か特定の情報を「知りたがっている」んですよ。


耳耳耳:

でも、その一方で、正しい電話番号には容易には辿り着けないような仕組みにした。


管理人:

そうです。ただの好奇心でシールを探している人は、せいぜい全バリエーションのデザインを見つけるくらいが関の山です。普通の人は、わざわざ同じデザインのシールの数字が一箇所だけ違うなんて確認もしません。

「簡単には本物に辿り着けない」ように、わざとスクリーニングをかけている。それくらい用心深く、かつ「相手を選んでいる」ということです。


あきら:

……そう言われると、急に相手がヤバい奴に思えてきた。


フー太郎:

まあ我々はというか、社畜さんは、偶然ペットボトルを落としたおかげで、その用心深い相手が仕掛けた「隠し番号」を見つけてしまったわけですけども。


あきら:

おい!気づいたのは俺とにょもるだろ!手柄を横取りしてんじゃねーよ!


フー太郎:

あーはいはい、ごめんごめん。きみさっきから本当に口が悪いな……。


あきら:

あ?


にょもる:

まあまあ。あきらちゃんちょっと落ちつこ?


管理人:

つまりこのシールの制作者は、「必死になって連絡をとろうとする人」や「この違和感に気づく観察力のある人」と、どうしても話さなきゃいけない「何か」があるのではないでしょうか。


耳耳耳:

だから、もし相手が電話に出たとしても、こっちが「会話するに値する人物であること」を証明しなきゃいけないわけか。


kanariablue:

でも、どうやって証明するんですか?私たちはただの暇人の集まりですよ。


フー太郎:

ノリで考察を始めた自分たちに、そんな大層なことができると思えないんだけど……。


管理人:

例えば「合言葉」を使うのはどうでしょうか。


キヨシ:

合言葉……?そんなの、どこにあるの?


管理人:

キヨシさん。そういえば以前、あなたはぐつぐつオババがお菓子をくれる時、一種の合言葉のようなものが必要だった、と言っていませんでしたか?


キヨシ:

まあ合言葉っていうか、あれは「ぐつぐつオババ」自身の口癖みたいなもんだよ。


耳耳耳:

口癖ですか?


キヨシ:

そう。ぐつぐつオババは公園のベンチとかに座ってて、近くに子供がいるとさ、ガサゴソとポケットから飴とかチョコを差し出しながら、必ず言うんだよ。「あまいです」「あまいですよ」って。


耳耳耳:

あまいです……。


キヨシ:

だから俺らガキどもは、放課後みんなで公園にいってさ、ぐつぐつオババに向かって「あまいです!あまいです!」って大合唱しながら寄っていったんだ。

そうするとオババはニコニコして、どんどんお菓子をくれる。

まあ今思うと、あれは奇妙な光景だったな。でも、懐かしいよ。


耳耳耳:

そう考えると、あのキヨシさんが持ってた「いたずら書き」……。ゐびす様らしき絵の横にあった、掠れて読めなかった吹き出しの言葉は……。


管理人:

「あまいです」……と読めなくもないですね。いえ、あの文字数と形状からして、ほぼ間違いなくそう書いてあったのでしょう。


フー太郎:

……じゃあ、それだ。その「あまいです」が、あの空白の吹き出しに埋まるべき「答え」なんだよ。


Kanariablue:

じゃあ電話が繋がって相手が本当に出たらまず最初に「あまいです」というんだね。……これだけで、相手に伝わるのかな。


キヨシ:

とりまやってみるしかないっしょ。社畜さんが戻ってきたらみんなでお願いしよーぜ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る