屍体の下には

知因子雨読(ちいんし・うどく)

屍体の下には

 櫻吹雪を探せども舞い散るはただ血飛沫ばかり。

 屍体の下に埋まっていると語る友人の幻視を手掛かりに発いて種子を見つけた。

 これを育てれば咲くのだろうが何年かかることやら。

 花見なる儀式がこんなに大変だとは思いもよらなかった。

 屍体を作るのは簡単だったというのに理不尽極まりない。


 仕方なく肴を並べた屍体盛りで花を添えつつ一人酒にて夜を明かした。

 これが意外に愉しめたゆえ来年も殺ろう。

 女体盛りでも男体盛りでもないのは性別が分からぬゆえ。

 そういえば魚介類の刺身も大半は性別が不明。

 魚卵があれば女性だろうが親子ともども喰らうのは悪趣味な所業に思える。

 そんな人類の罪深さからすれば殺人など些事でしかない。


 それにしても屍体の下に櫻が埋まっているのなら全てさかしまなのやもしれず。

 屍体盛りを喰らうのは私ではなく屍体が私盛りを愉しんでいるのだろう。

 つまりこの私は私だと思い込んでいる正体不明の屍体。

 ならば私の下にこそ櫻が埋まっていると考えて差し支えあるまい。

 それは足元の土のことだろうかそれとも別の場所なのか。

 私は動き回るから私の下がどこなのかは特定できない。

 しかし死んでいるのなら動き回ることも出来ないはず。

 そもそも私は本当に動き回っているのだろうか。


 そう考えてみて一連の流れを思い返すと不信な点に気付く。

 屍体の下に埋まっていると語ってくれた友人は誰だったのか。

 最初から私に友人などなく長らく孤独な存在だったはず。

 つまり私自身がその友人であり勝手に幻視していただけ。

 屍体の下にはただ私の血飛沫だけが浸み込んでいる。(了)

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屍体の下には 知因子雨読(ちいんし・うどく) @shinichikudoh

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