第3話 ちっさくね?

「うぅ……」


 俺は小さな檻の中で目を覚ました。頭がまだ動かなくて、今の自分の状況を理解できない。

 なんだ? ここはどこなんだ? と、必死で頭を動かそうとする。少しでも情報をと周りを見渡す。その時、自分の身体の異変に気付いた。


(え……ちっさくね……?)


 自分の手が目に入った。どうしてこの大きさなんだ? まるで俺がこの国に、連れて来られたばかりの頃みたいじゃないか。

 自分の手を見ながら考える。身体中、あちこち痛くて熱を持っている。片方の手は動かない。もしかして折れているのか? 足は? 手足も、身体を動かすこともできない。一体どうなっているんだ?

 そこでピロローンと思い出した。建国記念日の祝賀パーティーでお嬢が婚約破棄されて、それから……お嬢がキレてしまって魔力が暴走したんだ。

 俺がお嬢と呼んでいた、ネーネルヴァ・ホルハティ。ホルハティ公爵家のご令嬢だ。俺はその従者だった。

 お嬢は『蒼炎の乙女』なんて二つ名があるくらい、強大な炎を操れた。

 それが暴走して王城を吹き飛ばした。だから俺は自分の全魔力を使って、時を戻す魔法を発動したんだ。お嬢の暴走を抑えつつ時を巻き戻す。そんな芸当できんのか? とも思ったけど他に選択肢はなかった。

 あの場を取り敢えず収めたとしても、お嬢やホルハティ家に何が待っているのか分かったもんじゃない。

 いくら王子の愚行が原因だったとしても、責任は問われるだろう。

 いや、王城が吹っ飛んだんだ。もしかしたら国自体がヤバイかも知れない。なら一層のこと……と覚悟して、一か八かだったけど俺は決断した。

 俺の全魔力を使ったから、俺の頭には竜人の角が現れ背中には蝙蝠のような漆黒の翼、黒く光る鱗のある尻尾も出た。あそこまで魔力を使ったのは初めてだった。

 今俺がここにいるということは、成功したのだろう。

 だけど――やりすぎだ。お嬢もやりすぎだけど俺もだ。まさかここまで時が戻ると思わなかった。

 俺ってちびっ子じゃないか。骨が浮いて見えるくらいガリガリに痩せた小さな手を見つめながら思う。

 

(マジかよー、ミスったなぁ)

 

 これってあれだよな? 奴隷商の檻に入れられているんだよな? 鉄でできた檻が見える。それに、思い出したくもない重さを首に感じる。

 魔力を封じ魔法を使えなくして、逆らうことができなくなる隷属の魔道具だ。奴隷は皆これを首につけられる。その上、足も鎖で繋がれていた。

 身体を小さく丸くして横たわったまま、ゆっくりと目だけを動かして辺りを見る。

 王都の下町、人が忙しなく行きかう道に堂々と奴隷商が店を出している。違法だろうに、街の衛兵は何してるんだ? まさか金でも握らせているのか? それとも下町だからと衛兵も見て見ぬ振りなのか?

 奴隷が入れられた檻を並べ、その脇にいかにも胡散臭いおっさんが木箱を椅子にして座っている。

 無精ひげの目立つ顔でタバコをふかし、横柄に足を組んでいる。格好だけを見れば冒険者崩れにも見えなくもないが、胡散臭さが滲み出ている。

 並べられた檻の中には老人から子供まで、多種多様な奴隷が入れられていた。

 拙いぞ、どうすんだ? えっと、この後どうなるんだっけ?

 そんなことを回らない頭でボーッと考えていると、俺の檻の前に一人の男が立ち止まった。磨き上げられた黒い靴が目に入る。それでまたまたピロローンと思い出した。

 そうだ、親父じゃないか。俺は親父に買われてお嬢の家に行ったんだ。

 親父、早く俺をここから出してくれ。俺って今かなりヤバイと思うんだ。身体中が痛いし、目も開けていられなくなってきた。


「オヤジ、この奴隷を買おう」

「へへへ。旦那、お目が高い。こいつはこれでも珍しい竜人なんだ。魔道具で魔力を抑えているから人の格好をしているけどな。こいつは大きくなったら役に立つぜ」

「ああ。いくらだ?」

「今はチビでも竜人なんでね、少々値が張るぜ」

「ああ、言い値で買おう」

「ヘヘヘ、毎度あり!」


 何を言ってるんだ。瀕死の俺に高値を付けるなんて、ぼったくりも良いとこだ。

 親父が俺の入れられている檻の前にしゃがみ込み、声を掛けてきた。


「待たせたな、バカ息子」

(マジ、おせーよ)


 声を出す力も残っていなかった。親父のその言葉を最後に、俺は意識を失った。


 どうして俺が奴隷なんかになっているかだ。

 奴隷商のおっさんが言っていたように、俺は竜人だ。魔力さえ戻ればドラゴンになれる。まあ、まだとってもキュートなチビドラゴンなんだけど。

 俺は竜人族の里に住んでいた。この国からずっと北側の山岳地帯にある。ドラゴンは長命種だから人間の成長とは違う。

 まだチビドラゴンだったけど、それでも俺は人間でいうと20歳は過ぎていた。でも人化すると、やっぱちびっ子なんだ。そうだなぁ、3歳程度じゃないかな?

 チビドラゴンの俺は、大空を飛ぶことが大好きだった。自分の翼で何も遮るもののない大空を悠々と飛ぶ。

 それは気持ちが良くてその日も調子に乗って飛んでいたら、里を覆っている結界を出てしまったらしい。

 気持ち良く飛んでいると、突然身体に抵抗があったんだ。これってなんだ? て思いながら、無理矢理進もうとした俺が馬鹿だった。





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やっと主人公の登場です!

今回は竜人のちびっ子が主人公です。チビドラゴンになれます。

明日はロロちゃんと新作を投稿予定です。

しばらくロロちゃんや、ラウと一緒に投稿するかも知れません。

2月までに10万字いかないと!

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