第2話 非常ベルと脳内裁判
私の彼は、だいたいいつも忙しい。
何が忙しいのかというと、
自分の気持ちを守ることで忙しい。
少しでも不安になると、
「俺は悪くない」
「誤解や」
「考えすぎやって」
という神器をフル装備する。
そして私が一言、
「それってどういう意味?」
と聞いただけで、彼の中の非常ベルが鳴る。
ピンポーン。
「危険!感情を向けられました!」
すると彼は、
・論点をずらす
・急に疲れたと言い出す
・最終的に“俺が悪いんやろ”で締める
という、完璧な逃走ルートに入る。
――いや、誰も裁判してへんねんけど。
私はただ、
「どう思ってたん?」
「なんでそうなったん?」
って聞いてるだけやのに。
それがなぜか彼の中では、
「人格否定フルコース」
に変換されるらしい。
すごい変換機能である。
そして極めつけはこれ。
私「気持ちが分からんから聞いてるだけやで」
一樹「……もうええわ。俺ばっかり悪いんか!おまえも悪いやろ!」
いや、
“悪い”って言葉、誰も出してへん。
なのに彼は、
自分で裁判を開いて、
自分で被告になって、
自分で有罪判決を出して、
勝手に落ち込む。
私はその様子を横で見ながら思う。
——ああ、今日もこの人は、
“自分の心とレスバして負けてるな”と。
それでも不思議なもので、
この人、ほんまに憎めない。
だって、
本気で不器用で、
本気で怖がりで、
本気で愛し方が分からへんだけ。
だから今日も私は、
ため息をひとつついてから言う。
「ほら、また始まったで。一樹劇場。」
すると彼は、
少し照れたように黙り込む。
……で、結局また続く。
この、めんどくさくて、愛おしい、
“終わらない会話”。
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