第3話 爆乳おねぇさんとドキドキティータイム——
まひろさんに誘われた俺は、渋々彼女の部屋に足を運んでいた——
そして、部屋に一歩足を踏み入れた瞬間から、眼の前に広がったのはありえない光景。
ここは築年数も長いボロアパートのはず。
なのに、まひろさんに案内された204号室の扉をくぐった瞬間、景色がまるで別物になった。
まるでフルリフォームされたようなフローリングの部屋。低めのローテーブルに上質そうなラグとソファ。生活感はあるのに、散らかりが一切ない。目に映るもの全部が手入れされた美しさを持つ、そんな空間が俺を出迎えた。
そして俺は今、彼女に促されるまま二人掛けのソファへ座っている。
「お待たせしました♪こちら、粗茶ですが……どうぞ♪」
「あっ……すいません、お気遣いいただいて……」
まひろさんが軽い足取りでキッチンの方から戻ってきて、俺の前のローテーブルに2人分の紅茶と、白い器に盛られたクッキーをそっと置くと、こう付け加える。
「これ、わたくしの手作りのクッキーなんです♪お口に合えば召し上がってください♡」
「これ、まひろさんが?」
「ええ、お菓子作りが趣味なんです♪」
「すごっ、めちゃくちゃ美味しそう……」
夜勤明けで空腹だった俺は、つい素直な感想を漏らしてしまう。
「うふふっ♪まだまだ沢山あるので、いっぱい召し上がってください♡」
まひろさんは頬を染めて嬉しそうに笑ったあと、当たり前みたいに俺の隣へ座ってきた。その距離拳一つ分。
体温が空気越しに伝わり、彼女の主張の強い胸元の谷間が、横に並んだことでより鮮明に見えている事に気づき、俺はすぐに目を逸らした。
……えっ?近くない? 距離感おかしくない?
佐々木さんの甘い花のような香りがふっと届き、俺の意識を変に引っ張って鼓動が早まる。
そんな自分の気を紛らわせようと眼の前のカップに手を伸ばし、口元へ運ぼうとした。が——
……はっ!?待てよっ!?
カップが唇に触れる直前で、頭の中に違和感が走る。
……さっきから俺は何を当たり前みたいにここに馴染んでるんだ?まひろさんは俺を殺しに来たって言ってたんだぞ?
手に持ったカップをそっとテーブルに戻し、俺は視線だけでまひろさんの横顔を盗見みると、無邪気な笑顔がそこにある。しかし、その笑顔の下に何があるのか俺はまだ知らない。
そう思い直し、俺はある質問を口にする。
「あのっ……まひろさん……?」
「はい?どうかしましたか?」
「失礼な質問で申し訳ないんですが、この紅茶とクッキーって……毒とか入ってませんよね……?」
言った瞬間、自分でも馬鹿みたいだと思った。
疑ってるのがバレたくなくて丁寧に言ったのに、丁寧に言うほど余計に疑ってるみたいで最悪の気分だ。
「…………………………」
まひろさんは下を向いて黙り込み、急に沈黙が訪れる。
次いで聞こえてきたのは——
「ふふっ……ふふふっ……あはははっ♡悠真さんったら、冗談がお上手なんですねっ♪」
「へっ……?」
「毒なんて入れたら、食べれないじゃないですかぁ!もうっ、笑わせないでくださいっ♪ふふふっ、おかしい♪」
目の端に涙を溜めながらコロコロと笑うまひろさん。
その予想外の反応のせいで、俺の緊張が行き場を失って宙ぶらりんになる。
「でっ……でも、まひろさん俺のこと殺すって言ってたから……」
「ふふふっ♡そんなヤり方は意味ないのでやりませんよ♪でも不安なら……ほらっ……」
そう言うと、まひろさんは迷いなく二人分のカップのうち俺の前に置いた方を手に取り、ためらいもなく口をつけた。喉がコクリと動き、飲み込む音がやけに近い。
さらにクッキー手に取って軽くかじってみせる。
「ほら♪大丈夫でしょ?」
小気味よい音を立てながらクッキーを食べた後、口元を舌でなぞる仕草が妙に色っぽいまひろさんにドキッとしてしまっている自分がいる。
「あっ……そのっ、ごめんなさい、変に疑って……」
謝りながら、情けなさで胃がきゅっと縮んだのを感じた。
疑うなって方が無理だろ。と言い訳したいが、あまりにも無邪気な笑顔のまひろさんを見ると、俺が悪い気がしてくるのが不思議だ。
「いいんですよ悠真さん、わたくし気にしてませんから♪だから遠慮なく召し上がってください♡」
「ああっ、はい!ありがとうございます……ではお言葉に甘えて……」
俺は紅茶のカップを再度手に取ると、そっとを口をつけた。
「ふぅ……これ、美味しい」
香りがふくよかで口当たりが柔らかい。甘い余韻だけが舌の端に残り、夜勤明けの身体がじわっとほどけた気がした。
思わずもう一口紅茶を口に含み、クッキーを頬張る。
「はっ!?……」
あれ、これ……もしかして……。
「どうしたんですか悠真さん?驚いた顔して……」
「……いやっ……その、あまりにおっ、美味しくて……ははっ、はははっ……」
「本当ですか!嬉しいです♡」
咄嗟に笑いで誤魔化そうとして、笑い方が不自然になっている俺がいる。
でも止められない。止めたら顔が真っ赤なのがバレる。
そんな俺の顔色など気にせず、嬉しそうな笑みを浮かべるまひろさん。
ぶっちゃけめちゃくちゃ可愛い。素直にそう思ってしまう。
嬉しそうで、楽しそうで、俺の反応を宝物みたいに受け取ってくれているような……そんな表情。
でも言えない。
まさか俺が、さっき佐々木さんが口をつけたカップの同じ場所に口をつけて、間接キスをしたことに気づいて驚いたなんて。
そんなことを口にした瞬間、この距離がもっと危険なものになってしまうんだから——
**************************************
奥付
ぜひ「面白い」「続きが読みたい!」と思ってくださったら★★★とブックマーク、♡やコメントで応援を頂けると最高に執筆の励みになります!お時間があれば是非お願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます