一生姉には敵わないと思う

 ソルの絶叫など気にも止めずシアは竜を窓に待機させたまま中に入ってきた。


「ありがとう、ニア。…さて、ソル?ここで何してるのかしら?」

「い、いや…。あ、明日の試験の話を…」


 ラーシャの腕を掴んだまま、ソルは冷や汗をダラダラと流しながらシアの質問に答える。


「そう、明日の試験の話ね。その大切な試験のために今日の夕飯はあんたの好きなエビフライにするって話は覚えてるわよね?」

「は、はい」

「下準備があるから手伝ってって言ったわよね?…うちは何人いると思ってるの?二百匹のエビの腸抜きどれくらい時間かかると思ってるのかしら?」

「ひぇ…」


 笑顔で捲し立ててくるシアにソルは遂にガクガクブルブル震え出す。そんなソルにシアが目をカッと見開く。


「さっさと帰ってエビフライの腸抜きするわよ!こんな所で油売ってんじゃないわよ!!母さんと三人で終わらせなきゃいけないんだから、わかってる!!!おら!ラーシャにしがみつくな!」


 シアに襟首を掴まれ、無理矢理ラーシャから引き離されたソルはそのままズルズルと窓へと引きずられていく。


「二人とも邪魔したわね」


 窓枠に足を引っ掛けて、シアは震えている二人に笑顔で手を振る。


「明日の試験、いい相棒に出会えるといいわね!…レティ!」


 シアに呼ばれて窓で待機していた緑竜のレティが鳴き声を上げた。その背中にソルを投げ、シアも飛び乗る。


「じゃ、また明日…」


 すっかり意気消沈したソルが弱々しく手を振って、家に連行されていった。


「うわ…めっちゃ怖い」

「今日の夕飯はエビフライなんですわね」


 シアの迫力にドン引きしながら二人は、ソルを乗せた竜が小さくなるまで手を振る。


「さて、私たちも帰りましょうか」

「そだね。うちの夕飯今日は何かなぁー」


 二人は鞄を背負うと教室から出る。

 学校の外を出たところで、一匹の茶竜が舞い降りてきた。


「お嬢様、お迎えにあがりました」


 竜から飛び降りてきた黒いスーツ姿の初老の男が恭しく頭を下げた。


「ケルディ、今日は歩いて帰ると伝えたはずです」


 ニアの家の執事であるケルディは表情変えることなく頷いた。


「旦那様がお帰りが遅いと心配しておられます」


 ニアはため息をつくとラーシャに頭を下げた。


「ごめんなさい、ラーシャ。一緒に帰ると約束していましたのに」

「ううん、大丈夫だよ。じゃあまた明日ね、ニア」

「ええ、また明日」


 竜に乗って飛び去っていくニアを見送った後、ラーシャは一人で家路につく。


「ゼン兄も迎えにきてくれればいいのに」


 まぁ、ゼンがそういう事をするタイプでは無いので期待するだけ無駄なのはわかってはいる。

 街から少し離れた崖近くにラーシャの家はある。

 学校から少し遠いのが少し不満だが、景色はいいし、静かだし竜と暮らすにはいい場所だと思う。そんな事を考えていると道の脇に人影が見えた。

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